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【architect】建築家とは…中村拓志に学ぶ

建築家中村拓志氏の著書『微視的設計論』をはじめて拝読したのは10年前だった

そのときも私にとっては驚きの連続だったが、改めて建築実務を経験して読んでみると、中村氏の建築家としての真っ直ぐなマニフェストを感じることができる

中村氏の説く『微視的設計論』とは、人のふるまいや挙動、自然のふるまいを、かつてない精度で観察し建築化することで、建築を皮膚や服地の少し先にあるもとして捉えている

それにより、建築を使うほどに身体に馴染みようになることを期待している

そして、その建築における身体性の共感が社会性を生むことこそが建築家の役割ではないかと説いている

例えばゴシック教会のように、神への祈りという上昇運動と教示という下降運動の反復を、目線の上下運動によって皆に身体性の共感を生んでいる
これは建築でしかできないことである

写真はオープン当初に訪れた東急プラザ表参道原宿である

都会の森が浮いているような建築で、大都会にありながらオアシスといった感覚が楽しめる
六角形の椅子のような階段のようなものが連続していてそこで人々の様々な交流がかわされる

またすり鉢状の中心には大きなテーブルが配置されそこでパソコンをしたり読書をしたり、天空の公園のようになっている

中村氏の微視は徹底的で高精度の技術を用いて人や自然、光の動きを図面化している
どれだけの予算がかかっているのか計り知れないがそれだけのことを施主とともに実行する行動力と論理はまさしく建築家と言える挑戦心からなるものなのだろう

建築家には自分の理想を具現化するための粘り強さと強烈な行動力、人を巻き込む力が求められるのだろう

中村氏は今最も勢いのある建築家である隈研吾氏の事務所出身の建築家である

中村氏の建築は隈氏の設計に比べ、ひとつひとつの精度が異常に高く密度濃く作られているように感じる
またぶれない建築化としてマニフェストがひとつひとつの建築を通して真っ直ぐ伝わってくる

しっかりと揺るぎないマニフェストは明確な文章に無駄なく表現されているように『微視的設計論』から感じた

近年は中村氏の著書が出版されていないので、近作をまとめた作品集や著書が出版されるのを楽しみにしている

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