【architecture】光の教会④|安藤忠雄
教会完成から10年後、教会の隣の敷地で新たな建築の話が持ち上がった
もちろん選ばれた建築家は安藤忠雄である
『日曜学校』と名付けられたこのホールは教会の増築という形でつくられた
教会がストイックな祈りの場であるのに対して、日曜学校は信者さんやそのお子さんが一緒に学んだりコミュニケーションを取る場である
コンクリートの打ち放しではあるが木が多用され明るく優しい空間である
ここで教会という場について考えてみたい
教会はキリスト教の施設ではあるが、地域の人々のコミュニティ施設である
子どもからすると学校以外の、大人からすると職場以外で属することのできるコミュニティの存在は大切である
ここに来れば誰かに会える、そんな安心感をもたらしてくれる場所が地域にあることは大切なように思う
地域コミュニティの基本を教会はしめしてくれているのではないだろうか…
最後にもうひとつ余談を
建築が完成しても、その建築がなくなるまで関わり続けるのが建築家安藤忠雄である
実は建築時から牧師さんにある提案をしていた
それは十字のスリットにあるガラスを無くした方が良いと言うのだ
ガラスから入る光よりガラスを通さない光の方が美しいと…
かつて安藤忠雄が世界中をバックパッカーで旅したときフランスで見た修道院の開口部から見た光が忘れられなかったのだ
しかもその開口部にはガラスがなかった
何度も事あるごとに話してみるが、さすがに…
ただでさえコンクリート打ち放しの建築は断熱材がないからとにかく寒い
冬場は教会に来たら風邪を引いてしまう
しかも雨や風や雪も中へ…
音も漏れてしまう…
施主がこれで良いと言っていてもおかまいなし
メディアでも『やっぱりあそこのガラスは無い方がいい』と散々語っている
暑苦しいほどの粘り強さであるが、これこそ安藤忠雄を世界のANDOたらしめた能力である
しかし未だに光の教会にはガラスが入っている
教会完成から28年後の2017年、国立新美術館で大規模な安藤忠雄の個展が開催された
国立新美術館の10周年記念ということもあり安藤忠雄の今までの作品が展示された大がかりな展覧会であった
多くの来場があり行かれた方もいるのではないだろうか
そこで、安藤忠雄は原寸大の建築を会場内の敷地に展示した
展示されたのは『光の教会』であった
もちろんその十字のスリットにはガラスが嵌められていなかったのは言うまでもない
(おわり)