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【architecture】光の教会①|安藤忠雄
ところで、建築家の選択として、あなたがベストだと思うけれど、条件として、われわれにはお金がなない。したがって、これもあなたに頼むのが適当だという理由である
時は1987年。
はじめて建築家安藤忠雄の元に教会建設の依頼に訪れた施主は、建築家にこのように話した
かつて、織田裕二と財前直見が出演したドラマ『お金がない』はトレンディドラマ全盛期にヒットした
建築家の選定に『お金がない』からという理由もおかしなものだが、こんなやり取りから伝説的な建築づくりがはじまった
トレンディドラマのような派手さはないが、この建築が出来上がるまでの物語は劇的だった
『光の教会』
正式名称は茨木春日丘教会という
大阪茨木市。JR京都線茨木駅からバスで確か30分くらいのところにある小さな教会である
近くには太陽の塔のある万博記念公園がある
安藤忠雄氏は教会をいくつか手がけておりその中でも三大教会である
・光の教会(大阪)
・水の教会(北海道)
・風の教会(兵庫)
のうちのひとつである
その他にも、
垂水の教会(兵庫)
海の教会(兵庫淡路島)
広尾のチャペル(東京)
といくつかの教会建築を残しているが、光の教会は他の教会が、結婚式を挙げるときなどに利用される”chapel”の意味合いが強いのに対し光の教会は純粋に祈りを捧げる”church”としての建築である
ちなみに安藤氏も私もキリシタンではないし、特定の信仰はない
安藤氏は以前私のnoteでも紹介したが、淡路島と愛媛に寺社建築もつくっている
ここで本題に入る前に大切なことをお伝えしておく
ここ茨木春日丘教会は前述のように信者さんが集まる祈りの場である
悩みを抱えた方もいれば、そのケアをする場である
ここは観光地ではない
今は一般公開はコロナの影響でされていないが、平時は内覧は可能だ
しかし、必ずホームページを確認したり問い合わせをして許可を得てから訪問するようにして欲しい
心を痛めた方が救いを求めて来ることもある
見学には対応してくれているがあくまで教会の方の善意で成り立っている
見学時のマナーは守ってもらいたい
さて話を建築に戻す
とにかく予算が少ない
しかし現状の古い木造の教会を修理するだけでは要望を満たせそうにない
しばらく案が出てこなかったが数ヶ月後にようやくひらめくのだ
それが単純な6m×18mのコンクリートの箱に十字の切り込みを入れたもの
そして箱に貫通したL字型の壁
最初教会の人が建築家からこの提案を受けたときほとんどの人が理解できなかったらしい
しかし安藤氏は
「茨木に世界一美しい教会があってもええでしょう」と確信していたとか…
実際に光の教会は世界中から建築ファンが訪れる場所となった
しかしこの単純な箱
一見簡単で安くできそうなのだが、そうはいかなかったのだ…
時は1988年。
バブルへ突入していたのだ。
(つづく)