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【2つのポルトガル語】:『漫画』って何ていうの?

なにかとブラジルの漫画を題材に
記事を書いている私ですが、

ポルトガル語では漫画のことを何というのか
という話はしたことがないような...

と思い、
伯葡語・欧州葡語それぞれの場合について
ご紹介します。

・ブラジルの場合


ブラジルのポルトガル語(伯葡語)

最もよく使われるのが

「história em quadrinhos」

【イスーリア・イン・クァドゥーニュス】

という表現で、

頭文字をとって、「HQ」
略されていることもあります。

「história」「物語」
「em quadrinhos」「小さな枠に入った ―」、
つまり
「升目に入った物語」

ということになりますから、

説明的ではあるものの、
分かり易い名称だと言えますね。

敢えて言うならば、
私が子供の頃は学校で、

「『história【イスーリア】『歴史』のこと、
『物語』、つまり『ストーリー(story)』の場合は
『estória【イスーリア】が正しい

と、散々うるさく言われたものなのですが、
気が付けば
「história em quadrinhosとその略称の「HQ」
根付いてしまっていました。

はたして「estória」
どこへ行ってしまったんでしょうね…?!

ちなみに「story」と「estória」が
全く同じ言葉だとわかる記事はこちら。↓

🤔


又、「漫画雑誌」(というか、むしろ冊子と言った方が
適切のように思える小さくて薄っぺらなものが主流
のことは、

「gibi」

【ジー】

といいます。

この「gibi」という単語、元々は
「いたずらっ子」といった意味があったのだそうですが、

1939年にブラジルで初めて
ポルトガル語版アメコミ誌が発売され、
その名前が「Gibi」だったことから、

              http://www.gibiosfera.com.br/blog/2010/02/gibi-origem-palavra/

やがて
「Gibi」が漫画雑誌の総称になったのだそうです。


更に、
私の記事でもよく扱っている
1~4コマものになると、

「tirinha」

【チリーニャ】

と呼ばれることがあります。

「tirinha」とは「小さい『tira』」または「『tira』ちゃん」で、
その「tira」とは「端切れ」や「紙切れ」といった意味です。

なので、
「tira」「tirinha」と聞くと、
ブラジル人の脳裏に浮かぶのは
「短冊形の何か」ということになります。

確かに「4コマ漫画」って
短冊形ですものね♪

🎋🎋🎋

・ブラジル以外のポルトガル語圏の場合


一方、
ポルトガルを初めとする
ブラジル以外のポルトガル語圏のポルトガル語、
つまり欧州葡語では、

漫画のことを

「banda desenhada」

ンダ・デゼニャーダ】

といいます。

先程の伯葡語の
「história em quadrinhos」とは
(よくあることですが)何も一致してませんね…。💦

ともあれ、

「desenhada」「描かれた」という意味なので、
「描かれた banda」という
表現だということが分かるのですが、

問題は、この「banda【バンダ】」という単語です…。

というのも、
ブラジル人が「banda【バンダ】」と聞いて思いつくのは
音楽の「バンド」
「ブロードバンド」などの「バンド」
くらいのものなので、

「『描かれたバンド』で『漫画』?
なんだ、そりゃぁ~?!」

となってしまいます...。

そこで辞書を調べてみても、
結果はこんな感じ…! ↓

     banda /ˈbɐ̃da/
     [女性名詞]

     ❶ 楽団バンド
       
banda militar|軍楽隊
       banda de rock|ロックバンド
       banda marcial|マーチングバンド
       banda de música|楽団;取り巻き.

     ❷ 側面
       
a outra banda do rio Tejo|テージョ川の向こう側
       a banda direita de um barco|船の右側面[右舷側]
       banda de fora|外側,外部.

     ❸ ⸨主に bandas⸩辺り
       
por estas bandas|この辺りでは.

     ❹ 一団,一味
       banda de ladrões|泥棒の一味

     ❺ テープ,リボン
       banda de papel|紙テープ
       banda desenhada|漫画
       banda magnética|磁気テープ
       banda sonora|サウンドトラック
       banda de pneu|タイヤのトレッド面.

     ❻ (周波数などの)帯域,幅
       banda de frequência|周波数帯
       banda larga|【情報】ブロードバンド.

                      出典 プログレッシブ ポルトガル語辞典(ポルトガル語・日本語の部)プログレッシブ ポルトガル語辞典(ポルトガル語・日本語の部)について 情報 | 凡例
https://kotobank.jp/ptjaword/banda

といった塩梅で、
つかみどころがなさ過ぎて
謎は深まるばかり…。

😟😟😟

そこで少し調べてみると、
こんなことが分かりました。

各言語における漫画の呼び名
英語でコマ割り漫画を意味する comics (コミック)は、ギリシャ語で「喜劇」を意味するΚωμικός(コーミコス)から派生した、「滑稽な」を意味する形容詞 comic に由来する言葉である(現代のギリシャ語でも、同じ語源を持ち、おそらくは英語の影響をも受けた用語Κόμικς(コーミクス)が、漫画の意味で使われている)。初期の漫画の多くはほぼ同じサイズのコマを一列に並べた物であり、また、ほとんどは滑稽な内容を扱っていたために、これらのジャンルには comic stripコミック・ストリップ、滑稽な端切れ)という呼び名が与えられた。それらを一冊の冊子にまとめた物は、 comic bookコミック・ブック、滑稽な本)と呼ばれ、それが短縮されて comic となった。しかしながら、漫画が深刻なテーマを取り扱うようになると、それらに冠された comic という名は混乱をもたらし、 これを嫌ったアメリカ合衆国の漫画家ウィル・アイズナーsequential art (シーケンシャル・アート、「連続された絵画」の意味)という呼び名を導入した。なお、英語の comic はアイズナーが代替語として sequential art という用語を提案した事からも分かる通り、原則的には複数のコマで構成される漫画のみを指す用語である。英語では一コマ漫画は cartoonカートゥーン)あるいは panel (パネル)と呼ばれる。現代の英語の cartoon という用語が、専ら animated cartoon (アニメーション作品)を指す言葉として使われるようになったため、印刷媒体の上での一コマ漫画である事を強調したい時は、printed cartoon と表記される。

https://www.wikiwand.com/ja/%E6%BC%AB%E7%94%BB

これで何となく理解できました。

どうやらここ ↑ に出てくる
sequential art」
(シーケンシャル・アート、「連続された絵画」)

という表現が根源にあるようです。

つまり、

「連続するもの」

「長いもの」

「帯状のもの」

「 テープ、リボン」

 という発想かと思われます。

そういえば、更に上の辞書からの引用を見返しても、
「漫画」「 ❺ テープ,リボン」の項目に組み込まれていますね。


そう納得した上で思い起こしてみると、

ブラジルで「4コマ漫画」的なものを
「tirinha【チーニャ】(=「短冊ちゃん」笑)
と呼ぶのも、

この「banda desenhada【バンダ・デゼニャーダ】」
(=「描かれた(長い)リボン」⇒ 「漫画」)
を切り取った「端切れ」なのかなぁ~…

とも思えます。

あれっ?!繋がったじゃん!!

さすがは同じポルトガル語ね🎵


な~んて喜べるほど
似ていたりはしないんですけどね…。w

🎀🎋🎀🎋🎀🎋

・だったら、アニメはどうよ?!


「アニメ」のことは
両葡語仲良く

「desenho animado」

【デーニュ・アニードゥ】

といいます。

※  「アニメ」という語をグーグル翻訳などに掛けると、「animação」
  出てきてしまいますが、「animação」「アニメーション」、つまり
     静止画を動画化するプロセスのことである上、具体的な動画化に関する 
       文脈内以外はパーティーやイベントなどの「盛り上がり」という意味に
     なってしまいますのでご注意下さい。

🎞🎞🎞

・「Mangá」と「Animê/Animé」について


両葡語圏において
「mangá【マン―】

「animê【アニ―】(伯葡語)/
「animé【アニ―】(欧州葡語)

※  カタカナでは違いが表せませんが、伯葡語は閉口音、欧州葡語は開口音
      なので、聞き分けることができる人にとっては、相当な違和感を覚える
      レベルの違いがあります。

という単語が浸透しつつありますが、
これらの意味は

あくまでも

「日本の漫画」「日本のアニメ」という意味、

つまり、
「『シャンソン』は『フランスの歌』」
「『カンツォーネ』は『イタリアの歌』」

というのと同様の現象なので、
総称のつもりで用いないよう
ご注意下さいね♪

😉


ということで、

ポルトガル語を使って生活している
漫画好きの人以外には

恐らく何の役にも立たない雑学にて
失礼致しました!

本日もお読み頂き、誠にありがとうございました!

※ 「長々と失礼致しました!」、否、
「落語 猫」はこたつぶとんさんの作品です。


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