時代は移ろえど、 変わらないあの場所。
♪「この街には不似合な
時代おくれのこの酒場に
今夜もやって来るのは
ちょっと疲れた男たち
風の寒さをしのばせた
背広姿の男たち」♫
「時代おくれの酒場」高倉健
加藤登紀子さんが作ったこの唄を
初めて聴いたのは1983年の、
健さん主演「居酒屋兆治」だった。
居酒屋は大人たちの、
疲れや憂鬱、
センチメンタルの癒やし処。
どれほどの男女、サラリーマンを
慰め、支えてきたのだろう。
かくなる僕も
酒場でお世話になり30余年。
居酒屋で友と語り合った思い出、
仲間を祝い、憩いを紡いだ日々、
好きな人と過ごした場面。
かけがえのない記憶が
あのカウンター、あのテーブルに
確かに刻まれている場所。
一人静かに飲みたい夜も。
♪「酔いがまわればそれぞれに
唄の一つも飛び出して
唄を唄えば血がさわぐ
せつなさに酔いどれて
気がつけば窓のすきまに
朝の気配がしのびこむ」♫
「時代おくれの酒場」高倉健
不器用な自分を蔑み、
ふと、くぐってみた暖簾。
そこで肌で感じた、
大将や店全体の明るさ、優しさ。
かけつけ一杯のビールには
枝豆が最高の御馳走
納豆入りの油揚げ焼き一品で
日本酒をぐいとやれば至福。
ほろ酔い気分でここまでくれば、
不器用な男の詩心をもう一曲。
♪「一日二杯の 酒を飲み
さかなは特に こだわらず
マイクが来たなら 微笑んで
十八番を一つ歌うだけ
妻には涙を 見せないで
子供に愚痴を きかせずに
男の嘆きは ほろ酔いで
酒場の隅に置いて行く
目立たぬように はしゃがぬように
似合わぬことは無理をせず
人の心を見つめつづける
時代おくれの男になりたい」♫
河島英五「時代おくれ」
阿久悠さんの、
我が意を得たりのこの詩が、
森田公一さんの、
穏やかなメロディーに乗り、
染み入る程に花開く。
以下のフレーズがいい。
♪「昔の友には やさしくて
変わらぬ友と 信じ込み
あれこれ仕事も あるくせに
自分のことは後にする
ねたまぬように あせらぬように
飾った世界に流されず
好きな誰かを思いつづける
時代おくれの男になりたい
目立たぬように はしゃがぬように
似合わぬことは無理をせず
人の心を見つめつづける
時代おくれの男になりたい」♫
「時代おくれ」河島英五
いつかまた、戻れるはず。
きっとまた、集れるはず。
人生の喜怒哀楽、想いの貯金箱、
あの大人のオアシスに。