さよなら、ほんとにさよなら
小学生の頃だった。
人はいつか死ぬから、
大好きな父もいつの日か
死んでしまうことを考えると
辛くて苦しくて、
泣いて悶々とした日々が続いていた。
そんな夜、それを見かねた父が言った。
「つまんないこと考えないで
町内を全力でマラソンしてきなさい!」
僕は夜の公園を走った。
がむしゃらに。
それで救われた。
その十数年後、成人してから
僕は安全地帯の「ほほえみ」
という曲を知った。
もう二度と会えない、あの人への詩。
恋愛の歌ではあるが、
僕は成人してからは
大きな失恋をしていないので、
別れがどうしても辛い対象として
父を思う。
この曲を聴くといつも、
父がいつか死んでしまうと悩んだ、
あの遠い日々を思い出す。
父は17年前に亡くなった。
直腸がんや大腸がんの手術を受け
最後は腰が辛いといって
何日間も苦しんでいた。
そして、僕が41歳のとき、
父は75歳で長き闘病生活を終えた。
あの日、父が病院で息を引き取ったとき、
僕は
「お疲れさまでした。
父さん、やっと楽になれたね。
本当にお疲れさまでした」と、
声をかけた。
「父さん、死なないで、
お願いだから、死なないで」
ではなく、号泣もしなかった。
玉置さんが作ったこの曲は
親子愛の歌ではないけど
最後の歌詞も沁みわたる。
こんな歳になって恥ずかしながら、
父さんは空の上から
見ていてくれる、と思う。
父との惜別から17年を経ても今でも
この曲は、そう思わせてくれる。
安全地帯ソングスで我がベスト1。
こんなにも心にくる歌を他に僕は知らない。
聴くだけで会える。
心のなかでいつも。