「The long and winding road 」の先へ〜手帳の佇まい(12)
高浜虚子のこの句は、
日めくりカレンダーを捲り、
年が改まったからといって
自分の志や信念が変わるものではなく、
引き続き、前へと歩みを重ねていく、
という意味で僕は捉えている。
この姿勢は手帳にも通じる。
特に年替わりで新調する綴じ手帳ではなく
ずっと何年も使い続けるシステム手帳に。
昨年12月の手帳の中身を、
多少のリフィル(ページ)は
入れ替えたとしても今年も使い続ける姿勢。
そうやって手帳は年輪を重ね、
熟していく。人と同じだ。
僕の大好きな曲にTheBeatlesの
「The long and winding road 」がある。
僕らは誰もがオン・ザ・ウェイ、
生涯の途上にいて、未完成。
きっと誰もが、声に出さないだけで
知っているのだ。
自分の弱さや欠点を。
直そうと努力しても
なかなか直せない思い癖や行動を。
頭では判っていても、
思うようにはいかない。急に直ることはない。
ままならぬのが人生。
だから、ひたすらに、ひたむきに、
ひとえに、長く曲がりくねった道を
歩き続ける。
ときにふるえ、ときにたじろぎ、
ときにひるみ、
裏切られても、侮られても、
それでも、いちるの希望を手放さないで。
自分の弱さを認め受け入れて
傷んだ足を癒やし
自分を愛おしみながら
少しずつ補正して年輪を重ね
轍を跡にする。
その道連れが手帳。
日々少しずつ手帳の本革も中身も
熟していく。
さりとてさほど気張る必要はない。
焦って走っても無駄、
そんなに早く変われないことを
決して諦観ではなく、
過ぎた日々が教えてくれる。
せめてこの相棒の熟すテンポに
追い越されまいと、ときには身構え、
今年も自分を信じ、ゆく。
「去年(こぞ)今年背を押す風や道の上」弥七
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?