祈りと希望、この曲を携えて
東日本大震災から11年、
あの未曾有の大災害と原発事故。
故郷未だ遠く、安らかな心を
取り戻せない方々がいる。
あの日、東京にいた僕ですら、
昨日のことのように思い出す。
未だ寒い日、午後2時46分だった。
とうとう始まってしまった。
ロシアによるウクライナへの攻撃。
爆撃を受け負傷した子どもの、
病院で息を引き取るニュースが
TVニュースで流れている。
両国の国民は、哀しみと憤りに震え、
ウクライナの国民は国を追われている。
北京では
パラリンピックが開催されている。
オリンピックもパラリンピックも
スポーツによる平和の祭典。
僕は今、8年前のソチ五輪での、
浅田真央さんの演技を
思い出している。
前日のショートプログラムで、
トリプルアクセルで転倒し、
16位という順位。
銀盤の女王にとっての絶望。
そして迎えた、この日のフリーの演技。
曲はロシアの大作曲家、
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。
この曲が始まり、真央さん渾身の、
覚悟のスケーティングが始まった。
このピアノ協奏曲は
華麗であり重層、甘美でありビター。
厳寒の地の最果て感、哀感に満ち、
それでいて、躍動感がほとばしっている。
この名曲にしっかりと抱かれて、
真央さんは次々とステップ、
ジャンプを成功させてる。
神がかる程の軌跡が刻まれてゆく。
そして最後のポーズ。
演技を終えた彼女は、天を仰ぐ。
観客席から見守る佐藤信夫コーチ。
あれ以来、である。
僕が、毎年、年明けから3月にかけて
ラフマニノフのピアノ2番を
何度も繰り返し聴くようになったのは。
佐渡裕さん指揮、辻井伸行さんのピアノ版。
僕はきっと、東日本の復興という言葉に、
真央さんの復活を重ねているのだ。
だから、心が呼ぶこの祈り楽曲を
目をつぶって、気を集める聴く。
何も出来ない自分を省みつつ
かの地と平和を祈りながら。
そして、今年は、祈りの先が増えた。
一日でも早い終戦と、無事をと。