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港区 芝神明商店街界隈

スローリー余話
街の”なりたち”#29

東京都の「港区」は「旧芝区」「旧麻布区」「旧赤坂区」が1947(昭和22)年に合併し誕生しました。その際には「愛宕区」や「青山区」「青葉区」「飯倉区」「三田区」などの候補があったようです。「旧芝区」エリアは今も汐留エリアや埋立られたお台場など「海の港」のイメージがありますが坂の多い「旧麻布区」「旧赤坂区」エリアでは「”港”ってどうよ?」という議論もあったように推測されます。

「芝大神宮」の参道

その「港区」の区役所にほど近い『芝神明商店街』は「関東のお伊勢様」と呼ばれる『芝大神宮』の参道と交差しています。現在その商店街の会長を務める『芝神明 榮太樓』のご主人・内田吉彦さんは「昔は竹下通りほどの賑わいだったそうです」と語ります。(以下、2023年7月発売『東京Slowly² vol.1』より)

1902(明治35)年に誕生した『江の嶋最中』

門前町の実直な美味しさ

芝神明 榮太樓

初代・内田長吉氏が日本橋の「榮太樓總本鋪」で修行後、暖簾わけを許され、1885(明治18)年に創業した『芝神明 榮太樓』。看板商品は明治時代の人気小説「金色夜叉」の作家・尾崎紅葉が命名した『江の嶋最中』である。同氏の日記によると「神明前栄太楼の菓子包装の題を求む、『江の嶋』の三字を書し与えふ」とあり愛好していた最中に自ら命名したという。貝殻をかたどった5つの最中種それぞれに、鮑型はつぶ餡、牡蠣型は白餡、赤貝型は胡麻餡、帆立型はこし餡、蛤型は柚子餡とバリエーション豊かな美味しさが愉しめる逸品である。初代から伝わる製法に加えて素材に拘って生まれる美味しさは形状の可愛さも相まって最近では若い女性のお客さまが増えているという。

新たな街の名物『芝神明もち』

「戦後10年は原材料が十分に揃わなかったという理由で休業しておりました」と語る、四代目のご主人・内田吉彦さん。実直な先代のご主人は小豆や粉、砂糖などが正規に入手できるまで和菓子をつくることはなかったという。このこだわりは当代にも引き継がれ、さらに新たな銘菓つくりに取り組まれている。当日いただいた京都産の若竹に流した『水羊羹』は、同じ京都の「丹波大納言」を使った涼を呼ぶ季節限定の銘菓。丁寧な素材選びと技術が活きた美味しさである。実直な伝統を守りながらも日々の美味しさを追究した商品が並ぶ店頭は今日も芝神明の地で賑わっている。

取材時に拝見したかつての商店街の写真

芝神明 榮太樓
〒105-0012 東京都港区芝大門1-4-14
tel:03-3431-2211
営業時間:月~金 9:00〜19:00土 9:00~14:00
休:日・祝(8月は土・日・祝)

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