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汐留川と新橋

スローリー余話
川と橋と美味しいもの#23

かつての新橋(写真提供:中央区立京橋図書館)

今、私たちが「新橋」と言われて想像するのは「駅」と「機関車前広場」「駅ビル」そして烏森神社周辺の「横丁」や「サラリーマン」ではないでしょうか。この地名は新橋という「橋」があったことに由来します。外堀と築地川をつなぐ水路だった汐留川の埋立にともない1964(昭和39)年に撤去されるまで銀座通りの中央区と港区の境にありました。現在の新橋駅は同じく汐留川に架橋されていた土橋に近いですが、1870(明治)年に日本ではじめて鉄道が新橋と横浜間に開業した当時は汐留川の新橋に近かった為と思われます。そしてこの明治の文明開化で盛り場として発展した新橋に隣接する銀座八丁目には100年街で愛されてきた洋食があります。
(以下、2023年10月発売『東京Slowly² vol.2』より)

常連客に人気の『ハヤシライス』

街に愛されてきた“八丁目の洋食”

銀座八丁目
レストラン YAMAGATA

1924(大正10)年創業、2024年で100年を迎える洋食レストラン。かつて銀座界隈には新聞社(読売や朝日など)や出版社(文藝春秋など)などがあり、現在よりも働く人が多い街であった。「平成元年にこのビルで営業を始めましたが、同じ場所にあった木造3階建ての時代には出前もやっておりました」と話す三代目のご主人・シェフの山形直之さん。昼は近隣のオフィス、夜は開店前のクラブからの注文電話が鳴り止まなかったという。人気のメニューは挽肉のジューシーな美味しさを愉しめる『メンチカツ』。ソースをかけずにいただいても肉の旨みだけで十分に美味しいと評価の高い一品だ。

肉の旨みだけで十分に美味しさを愉しめる『メンチカツ』

お店のあるビルが建つ場所には、かつては洋品店やお好み焼き屋、バーなどが立ち並び、昭和~平成のバブル期の工事だった為3年ほど営業できなかったという「その時、働いた厨房で和食や中華の料理人たちに出会い大変勉強になった」と語るご主人。理系の大学で学びエンジニアを目指したこともあるご主人の探求心によって祖父の代から受け継いだ“洋食”をアップデート出来た良い機会だったのかもしれない。そして令和の今、30年以上通う常連客も多いという。夜の繁華街として“日本一”と言われる銀座八丁目エリア。そこで働く人、通う人に供される良心的な価格の美味しい食事。『レストラン YAMAGATA』が100年愛された理由は「そんな特別な街での日常的な幸せ」であったのではないだろうか。そして今日も八丁目に関わる様々な人々に“幸せ”を提供している。

ご主人自慢の清水焼のコレクション

レストランYAMAGATA
〒104-0061 東京都中央区銀座8-5-1 G8ビル2階
03-3575-1553
営業時間:月-金11:30-14:30 17:30-21:30 土11:30-15:00
定休日:日・祝
※『東京Slowly² vol.2』(2023年10月発売号)の掲載情報から抜粋