美味しいものと”あきない噺”#2
スローリー余話
いつ食べても”飽きない(あきない)美味しいもの”には長く続く”商い(あきない)の心得”があります。弊誌で取材したご主人や女将さんから伺った”あきない噺”を紹介します。
神田須田町。奇跡的にも東京大空襲の災禍を逃れた街の名物『いせ源のあんこう鍋』。1830(天保元)年創業の当代ご主人は七代目の立川博之さん。以前は築地から仕入れていた鮟鱇を生産者から直接仕入れることにより”いせ源ブランド”を生産者の皆さんが共有してくれるのが「大変嬉しい」といいます。そして現在は、コロナ禍で営業が制限されるなか生産地へ行く機会が増えて交流が深まり誕生した新商品『鮟(あん)まん』が新たなお土産として人気です。専門店ならではの生産者との良好な関係性を築いているからこそ”お互いのブランド価値を共有できる強み”を活かした取り組みの成果ではないでしょうか。190年以上の歴史ある暖簾を受け継ぐ七代目のご主人はこれからも生産者と寄り添って新たな挑戦を続けたいと語ります。東京都の歴史的建造物にも指定されている趣ある佇まい、今や海外からのお客様にも人気の『あんこう鍋』。七代目ご主人の”あきない噺”でした。
(以下、2023年7月発売『東京Slowly² vol.1』より』
https://x.gd/zu3UX
生産者と寄り添って誕生した
『鮟鱇』の新たな美味しさ
神田須田町
あんこう鍋 いせ源
『いせ源』は天保元年創業の鮟鱇鍋専門店。昭和5年建築の、歴史ある建物の玄関には下足番が立ち、しっとりとした和室には整然と並んだ食卓と由緒ある絵画が飾られている。そんな老舗らしい品格に満ちた空間で愉しめるのは、北海道や青森の生産者から仕入れる極上品の鮟鱇。水揚げから大切に扱われてきた鮟鱇を吊るし切りにして、臭み抜きや骨抜きなどの下ごしらえを丹念に行う。七代目のご主人に就任されて10年。かつては築地から仕入れていた鮟鱇は、今は直接生産者から仕入れているという。
「うちの初代はどじょう屋ですから」という七代目に、ご用意いただいたお料理は、夏におすすめしたいお昼の定食『鮟鱇の柳川鍋』。ゼラチン質のぶりぶり(顎肉)、蛋白な味わいの白身、優しい風味の皮など、鮟鱇の魅力をしっかりと伝えながら、卵と特製の割り下が夏でも食欲を刺激する逸品である。そして、もう一品はコロナ禍から発売をはじめた『鮟まん(あんまん)』。通常はお土産品として提供されているものを特別にいただいた。玉葱と鮟鱇を中華餡に仕立てられている新商品。コロナ禍で生産地へ行く機会が増え、生産者との交流から誕生したという。「直接仕入れることによって生産者にも『いせ源の鮟鱇』という意識が芽生えたことが嬉しい。関係性をこれまで以上に深めて新しい挑戦もしたい」という七代目。鮟鱇専門店としての美味しさへの追求は決して止まらない。
あんこう鍋 いせ源
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1-11-1
tel: 03-3251-1229
営業時間: 火~金11:30~14:00(L.O.13:30) 17:00~22:00(L.O.21:00)
土・日・祝11:30~22:00(L.O.21:00)
定休日:月曜
※8月は営業時間が変更。事前に要電話