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銀座八丁目 新橋近く

スローリー余話
街の”なりたち”#39

銀座八丁目中央通り。かつて汐留川に架かっていた「新橋」の橋柱は川が埋立てられた後も残されていますが、この「新橋」の北側は1947(昭和22)年までは「京橋区」(中央区)南側は「芝区」(港区)でした。江戸末期の古地図をみると現在の銀座八丁目の新橋寄りは「芝口金六町」や「芝口紺屋町」という町名だったようです。

汐留川にかかる新橋(写真提供:中央区立京橋図書館)

そして、このあたりが「南金六町」という町名だった1911(明治44)年に創業した喫茶店「カフェ―パウリスタ」(創業場所は「京橋区南鍋町」現在の銀座七丁目あたり)。関東大震災で一旦クローズしましたが1970(昭和45)年に銀座八丁目の現在地で再開し半世紀の時を超えてそのクラシックな美味しさに多くのひとで賑わっています。(2023年10月発売『東京Slowly² vol.2』より)

秋の銀座で濃厚な美味しさを

カフェ―パウリスタ
銀座本店

日本からブラジルに渡った移民達が生産したコーヒーを日本で普及させようと1911(明治44)年、銀座の今の交詢社ビル近くで創業したカフェ―パウリスタ。当時、銀座周辺には朝日や読売などの新聞社が多く、そこに出入りする多くの文化人達が活動の拠点として利用されていたという。特に文学界では菊池寛、徳田秋声、宇野浩二、芥川龍之介、久保田万太郎、佐藤春夫、獅子文六などが常連客で、彼らの残したいくつかの文章に『カフェ―パウリスタ」の名前が登場する。その後、関東大震災により一旦は営業が途絶えたが、1970(昭和45)年、銀座八丁目の現在の地で営業を再開した。1978(昭和53)年には帝国ホテルに滞在していたジョン・レノンとオノ・ヨーコ夫妻が3日3晩続けて通い、その際に署名してもらったコーヒーカップは会社の金庫に大切に保管されているという。

そんな『カフェーパウリスタ』はコーヒーと併せていただくホームメイドケーキが有名。今回は定番の『モンブラン』とウィーン発のチョコレートケーキ『ザッハ』をいただく。どちらも上品なクラッシックタイプのケーキ。特に『モンブラン』は、滑らかなマロンクリームにほのかなコーヒーの風味が効いた奥行きのある甘さを演出し、その頂きに置かれた国産の栗は本来の風味がしっかりと感じられコーヒーとの組み合わせによって一層濃厚な美味しさを愉しめる。重厚な昭和の喫茶店の名残を感じつつ、彩り重視の最近のケーキにはない伝統の美味しさを秋の銀座で味わう。そんな昼下がりがあってもいい。

カフェ―パウリスタ 銀座本店
〒104-0061 東京都中央区銀座8-9 長崎センタービル
Tel:03-3572-6160
営業時間:1階 月~土9:00~20:00(フードL.O.19:00、ドリンクL.O.19:30)
日・祝11:30~19:00(フードL.O.18:00、ドリンクL.O.18:30)
2階 月~土12:00~19:00(フードL.O.18:00、ドリンクL.O.18:30)
日・祝12:00~19:00(フードL.O.18:00、ドリンクL.O.18:30)
休:年末年始