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三十三間堀川と三原橋

スローリー余話
川と橋と美味しいもの#13


埋立前の三原橋「写真提供:中央区立京橋図書館」

銀座一丁目から八丁目まで横断していた三十三間堀川。1948(昭和23)年に埋立られるまで京橋の高速道路下にかつてあった京橋川と新橋の高速道路下の汐留川を繋ぐ運河でした。徳川家康が江戸の街を造る際に海岸線だったこのあたりに護岸用の石を並べ、その後に海岸線を埋め残して開発された水路だったそうです。

かつての橋上あたりにある小公園。夏はミストシャワーで暑さ対策

現在、昭和通りと晴海通りの交差点に「三原橋」の名残はありますが実際にあったのは少し銀座寄りの三原橋交番のあるあたりです。地下の映画館など昭和の風情を残す場所でしたが今は整備され小公園となっています。三原橋が埋立てられた同じ頃に洋食店として開業した『レストラン みかわや』は池波正太郎さんなど多くの文人に愛されてきました。
(以下、2023年10月発売『東京Slowly² vol.2』より)

シンプルながら丁寧につくられた美味しさの『グラタン』

世代を超えて
愛される優しい美味しさ

銀座四丁目
レストランみかわや

『仔牛のカツレット』はお肉そのものの旨みをひきたてるデミグラスソースとの相性抜群

池波正太郎はじめ多くの文人に愛されてきた『レストランみかわや』の前身は、明治の中頃から銀座で食料品を扱う「三河屋食料品店」だったという。横浜のホテル・ニューグランドの料理長だったS・ワイル氏と一緒に働いていた初代が1948(昭和23)年に現在の場所で創業。今は銀座三越の新館と同じ建物ではあるが、この場所がレストランの創業地である。エントランスを入るとかつての洋館時代の趣きを残した格調ある空間。ゲストに心地よい緊張感を与えてくれる。

銀座の真ん中とは思えない静寂な空間

創業以来の味を引き継ぐ名物料理の『グラタン』は、ニューグランド時代にS・ワイル氏が体調の悪いお客さまから「喉ごしの良いものを」という要望に応えて提供したメニューにならったもの。ペンネを使用せず少量のバターライスに海老のクリーム煮を乗せグラタンソースにチーズをかけて焼き上げたシンプルながらもフランス料理の伝統を受け継いだ逸品である。さらに、特徴的なのは、お客様の事を考えて始まったという“お箸”と“お新香”の提供。「ルールに縛られずにお客様の居心地の良さを大事にしたい」と話す四代目・渡仲晋平さん。このホスピタリティこそが、美味しさとともに世代を超え愛されている理由であろう。お昼時メニューを見ながら「今日は何を食べようか」と楽しそうに相談している小学校高学年の男の子と祖母と思われる年配の女性。受け継がれた美味しさの証がここにある。

エントランスを入るとひろがる吹き抜けの階段

銀座 みかわや
〒104-0061 東京都中央区銀座4-7-12 三越新館1階
03-3561-2006
営業時間:11:00-21:00(L.O.20:00)
定休日:なし(年末年始除く)