銀座五丁目 旧尾張町界隈
スローリー余話
街の”なりたち”#41
海外からの観光客でいつも賑わっている銀座通りの五丁目から六丁目の界隈は1930(昭和5)年の町名変更まで『尾張町』と呼ばれていました。旧尾張藩の下屋敷があったことに由来します。このあたりは明治の初めの大火後に
煉瓦造りの建物が並び西洋文化をとりいれた文明開化の商業の街として発展しました。
現在の「GINZA SIX」は、関東大震災後間もない1924(大正13)年に当時『尾張町』と呼ばれていた場所に銀座初の百貨店「松坂屋銀座店」として誕生しました。『尾張町』から『銀座』になって間もなく1936(昭和11)年に
銀座五丁目・あずま通りに開店した『トリコロール本店』には手づくりの甘い誘惑が待っています。(2023年10月発売『東京Slowly² vol.2』より)
寛いでいただく“至福のおやつ”
銀座トリコロール 本店
1936(昭和11)年、コーヒーの普及を目的に初代店主・柴田文次氏が銀座あずま通りの現在地で創業。螺旋階段を上った2階には大理石のテーブルが並び、入口にはフランスっぽい「いたずら書き」があるなど洒落た喫茶店として若い芸術家や学生に人気があったという。
戦災を経て1947(昭和22)年に2代目店舗で営業を再開。周囲が高い建物になかで趣のある2階建ての現在の店舗に改築したのが1982(昭和57)年。銀座のビル化が進むなか贅沢な2階建ての店舗には自然光が差し込む天窓が施され半世紀ちかく多くの顧客に寛ぎの空間を提供している。さらに特徴的なのは入口の回転扉と店頭のガス灯。今も夕暮れ時に灯されるガス灯は、古の銀座の情緒ある風景を想起させてくれる。
お店オリジナルの『アンティークブレンドコーヒー』は、原料豆の希少性のみならず焙煎方法にもこだわり、さらには実技経験豊富なスタッフによる丹念な抽出で生まれる香り高い一杯。そのコーヒーとの相性を考えて提供される『アップルパイ』や「エクレア」などのホームメイドケーキも“銀座のスイーツ”として長年多くの顧客に愛されてきた。その特徴は奇をてらわない王道の美味しさ。コーヒーの酸味とのバランスが微妙なところで保たれた逸品である。天井が高く、自然光が差し込む2階のお席でいただくと、周囲の雑踏を一時忘れさせてくれる“至福のおやつ”である。初冬の夕暮れ時、少し小腹がすいたなら銀座の小径に入ってみよう。
銀座トリコロール 本店
〒104-0061 東京都中央区銀座5-9-17
Tel:03-3571-1811
営業時間:1階8:00~18:00(L.O.17:30)2階11:30~18:00(L.O.17:30)
休:店休日は公式インスタグラムで確認
https://www.instagram.com/tricolore_honten