木造建築の未来 (CLT)
こんにちは。フィンランドで森の研究・仕事をしています、Ryo(@Slowland)です。
CLT (Cross Laminated Timber) をご存知ですか?
2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、建築分野はその経済規模の大きさからも1つのチャレンジになるでしょう。
その新たな局面でおそらく時代のヒーローとなるのがCLT(直行集成材)。僕は以前勤めていた建築関係の会社でCLTと出会いました。
日本国内では2015年頃に新国立競技場の屋根への使用が検討された頃から業界では認知され始めたようです。
しかし、2021年の今も世間で認識されるほどにはなっていないと思います。
CLTとは
CLTはCross Laminated Timberの略。
「交差して貼り合わせた木材 (集成材) 」です。
建築用の木製パネルのことで、従来の集成材では繊維方向が一定だったのに対して、
CLTでは繊維方向が複数の層で交差している為、強度が非常に高いです。
1990年代初期にオーストリアの会社で初めて製造され、
徐々にその優れた特性が実験で明らかにされ、
2010年以降ヨーロッパを中心にその利用が広がりを見せました。
CLTは強度が非常に強いため、
木造建築といっても民家などへの利用ではなく、
2階建て以上の高層建築への利用ができます。
ヨーロッパではすでにいくつもCLTの高層建築が建ってきています。
今おそらく最も高いのは、2019年3月に完成したノルウェーのBrumunddalにあるMjøstårnetという建物。
木造でなんと85.4mの高さを誇ります。
未来のコンクリート(長所)
CLTの建築用材としての基本機能は
コンクリートの水準に十分達しています。
その強度、断熱性、防音性、耐火性、また、地震への耐久性などは、
実験により十分であることが示されています。
CLTが "未来のコンクリート" ともてはやされる理由(長所)
は以下の3つです。
CLTの長所1: CO2排出を抑える
1つめの長所は木材であることに起因します。
木材の利用は(1)カーボンサイクルを促進して(2)炭素を貯蔵します。
(1). 木が光合成するときに、CO2を吸ってO2を吐くのはご存知の通り。
ただし、木が歳とって成長が止まると、
そんなにCO2を吸ってくれなくなります。
だから、古い木は定期的に切って新しい木を植えると、
森がCO2を吸う全体量は増える。
これが「カーボンサイクルを促進する」ということです。
(2). また「炭素を貯蔵する」というのはシンプルに、
炭素を木の形でこの世に残すこと。
木は空気中のCO2を栄養として食べてくれて、
炭素 (C) を体につけて大きくなり、O2は要らないから出す。
炭素(C)に注目すると、空気中にCO2としてあった状態から、
木(C)として貯蔵されたことがわかります。
コンクリートはその製造過程で大量にCO2を排出しますが、
CLTならむしろライフサイクルを通してCO2を吸収できる。
これが、CLTがコンクリートと比べて圧倒的にエコな理由です。
CLTの長所2:工事が簡単
CLTの工事はプラモデルのようにパネルを組んでいくので、
コンクリートに比べて、工事が簡単と言われています。
また、プレハブ施工といって
「あらかじめ別の場所で一部屋分組んでおいて現場に吊り下げる」
といったことが可能なので、
かなりスピーディーに工事が進んでいきます。
コンクリートよりも全然軽いので、
施工中の事故の可能性を抑えられますし、粉塵によるじん肺の危険も緩和できます。
CLTの長所3:林業振興&地方活性化
最後に、今後日本で普及する大きなメリットとして、
国内に大量に眠るスギやヒノキなどの人工林の有効利用が挙げられます。
日本は世界有数の森林国(国土の2/3が森林)ですが、
輸入に頼ってきてしまった為、木材自給率はとても低いです。
自給率は、02年の18.8%を底として、現在40%近くまで回復していますが、これからもまだまだ伸びしろがあります。
木材を供給する地方では、原木の生産からCLTパネル加工まで、多くの雇用に繋がるため、地方活性化においてもCLTは期待されています。
数年前に住友林業が大型のCLT建築 の計画(完成予定2041年)を発表するなど、日本でも徐々に市場成長の兆しが見えてきました。
今後ますます大きな広がりを見せることを期待しています!
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