TAKE OVER開店
葉山町上山口の古材・古道具・古建具の店「桜花園」で20年働いていた北川さんが自身のギャラリー&アンティークショップを開きました。名前は「TAKE OVER」。引き継ぐという意味があり、建物の取り壊しで解体される現場、廃屋、空き家から救い出した良い建材や建具、遺された昭和の古道具などを再生すべく販売及び提案を行なっています。
我が家を建てる際、玄関引戸と納戸は桜花園で古建具を購入、活用したのですが、玄関に吊ったヒノキ材の重厚な建具は葉山町堀内にあった築100年の家が壊される際、北川さんが取り外したものだそう。そんな彼が新たな展開を先月から借り始めた畑のそばでスタートすると知ったとき、これも縁だなぁと感じ入りました。
背後に緑豊かな低山が迫る地域。ぼくの畑に通じる細い路地脇に建つかなりシブい立地。北川さんは縁あって古い空家のフラットハウスに10年前に出会えて購入。じっくり時間をかけてリノベーションしてきたのですが、基礎は沈下し、建具や構造材は湿気で傷み、なんとか活かして建物の痕跡を少しでも残せたらという希望は断念。大工さんや家具職人の仲間と一緒にほぼゼロから古材、新たな建材を交えて改築。
室内に入って眼に入ったのはさまざまな古材、古建具を合わせてモザイクアートのごとく継ぎはぎで構築された景色。いろいろな場所から集まって古家のパーツが新たな躯体になったカオスの風景がなんとも眼に心地よく、初めて訪れたのに、すぐに心安まる感覚に浸れました。北川さんは古材、古建具の活用法をこうしてショールーム的に示しつつも、相談に応じて施工に適した人も紹介してくれるのです。自宅の改築や新築で古材、古建具の導入を検討している人には心強い存在ではないでしょうか。
庭を望む大きな開口部からは涼やかな風が吹き抜け、濃緑の眺望ともども眼と身体が深くリラックス。再生された古材、古建具が良いオーラを放ち、喜んでいるようにも体感しました。
手頃な値段の昭和レトロな古道具を買えるのもここでの楽しみ。それぞれ入手に至る物語があるのですが、北川さんが朗らかに語ってくれるのがとってもいい感じなんです。
ぼくは古いタッパーウェアの温和で懐かしい色味に強く惹かれて買い求めました。家に飾るのではなく、生ゴミを庭のコンポストに移すまでの一時的にストックする密閉容器にしたり、造園仕事の蚊取り線香収納ケースなど実用品として活用するつもりです。
「TAKE OVER」は不定期営業で、今回は関係者へのお披露目的な意味での開放。当面は月に3、4日だけのオープンで、本格始動するのは来年からかなぁと北川さん。いずれにしても、開かれる機会には畑に通うついでに覗いていきたいな。野菜と古物、ワクワクしかありません。