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エスキールラを再び

昨年末、メキシコの養蜂家が蜜蜂を巣箱に呼ぶための道具『エスキールラ』の張子化にトライし、かろうじて形にすることができました。しかし、出来上がりは完璧な失敗作。実物からかけ離れたズングリと愚鈍な造形に。

半紙と新聞紙を積層した外皮を型から外すことには成功したものの、完成を急いだ直後の工程でミスを犯し、外皮が崩壊。慌てて水溶きした紙粘土で厚くコーティングして体をなしたのでした。力技での強引な取り繕い。正確には張子とは言い難い初作をいい加減なぼくは良しとしましたが、日を追うごとに再挑戦したい気持ちが沸々と湧いてきたのです。

セカンド・エディションの目標はまずオリジナルのエスキールラに型を少しでも近づけること。そのためにはどうしたらいいかよく考えて着手しました。

向かったのは家の近所、横須賀市の関根海岸。ここは流木の宝庫で、型を固定し、半紙と新聞紙を貼り重ねて張子外皮を成形しやすくする台を製作しようと思案し、材料を探したのです。

連日、仕事帰りに寄って、どんな材料が打ち上がっているかチェックし、目星をつけていた物がありました。それは極太の孟宗竹。いったいどれだけ海を漂っていたのでしょうか。白く風化した佇まいに惹かれました。竹の節には薄い障壁がありますが、この壁に小さな穴を開けて棒状の真竹を差し込み、その棒を細い孟宗竹で囲ったら、簡素な台ができるではないか。

居間では床に座って作業するので、その高さに合わせて台を製作。なかなか良い感じに出来上がり、直観的アイデアが結実できて自画自賛。

家に台を持ち帰り、早速エスキールラの張子改良版に着手。新聞紙を十字架状に組み、紙粘土で覆いながら型を作ります。4つのラッパ状先端部が中央からなるべく離れるようにすること。それぞれの軸は細めに成形すること。この2点の改善点は次工程で新聞紙や半紙をスムーズに貼り重ねていくのに大事だと、初作の失敗で気づけたのでした。中央部に型の時点で穴を開けておくのも改善点。

その穴に台から立つ竹棒を差して型を固定し、乾かします。宙に浮かせることで全体のフォルムを崩さずに自然乾燥できました。

さて、いよいよ張子化へと移行です。ここからは焦りは禁物。紙粘土で作った型は一週間かけて天日で充分に乾かしました。その型にサランラップで包み、マスキングテープをぐるぐるきつく巻いてラップを型にぴったりと密着させます。あとできれいに型抜きするためにこのパートは重要になってくるので入念に。

補強用の新聞紙(1枚くらい)と、10層ほど重ね貼りできるくらいの半紙を手で細かめにちぎって用意します。

まずは新聞紙貼りからスタート。ヤマト糊を水で溶いて塗りながら貼り重ねていきます。

全工程で最も単調で妥協の誘惑に何度も何度も負けそうになる半紙貼り。根気要しますが、ここをひたすら黙々と頑張り抜けるかが張子化成功の肝となります。今回は1日半ほどかけて新聞紙と半紙を厚く貼り重ね、天日干しへ。

そして緊張の型抜き。外皮の紙層を粘土の型から外します。真ん中にカッターで切れ目を入れて真っ二つに。あとは左右にぐいぐい引っ張ります。慎重に、なおかつ適度な力を入れて。分割する中央部はとりわけ入念に紙を貼り重ね、剥離時にも裂けない充分な強度を持たせることがポイントとなります。ちなみに今回、型抜きは無事成功しましたが、粘土の型はぼろぼろと崩れてしまいました。くびれている箇所が多いエスキールラのフォルムが何気に複雑であることの証左でしょう。

さぁ、ここまで来たらゴールは目前です。中央を和紙で貼り合わせて一体化。表面に水溶きした粘土をうっすらと塗りコーティングします。

一週間後、カチカチに硬化した張子外皮。表層の半紙を墨汁で炭色にペインティング。アクリル絵の具の黒色よりも灰色感が混じるマットなブラックは濃淡があってとても好み。イメージ以上の仕上がりに嬉しさがこみあげてきます。

4つの開口部に小さなステンレス鈴を埋めこみ、それぞれナイロン紐を結んで固定します。そのナイロン紐は中央部の穴から長めに出しておきました。

内蔵するボールベアリングの働きにより回転するガジェット「ハンド・スピナー」をこのナイロン紐に結び留めれば、張子エスキールラもブンブン🐝と高速回転できるのでは? そう思いついたときは我ながら素晴らしいアイデアだと唸りました。しかし、実際繋げてみると、紐がブレーキとなって全然回らず、撃沈です。

がっかりしながら、倉敷ガラス、小谷真三さんの吹きガラス玉を底部に、ビーチで拾った陶器製おもりを上部に当てがいつつ、アウトドア用細引で吊るして完成としました。

ver.1より大幅にスリムに、ほぼ想定通りに仕上がったんだから良しとしたいのですが、ハンド・スピナー中央部に指を触れるだけでクルクル回る愉快なギミックを眺めてみたかったなぁと未練がましく思います。回転に伴い宝来鈴の涼やかな音も楽しめるだろうしと。しかし、試しに天井から吊り下げた細引を捻って強引な回転を試みてみたんですが、横方向の動きでは鈴はまったく鳴り響きません。うーむ、メキシコの養蜂家たちはエスキールラを手で握って上下に激しく揺らして鳴らしているんだろうか? その動きを再現するにはさらなる工夫が要るなぁとver.3を着手するかどうか悩んでます。

そこそこの横揺れで鳴らない宝来鈴。これに問題があるのでは?と、「out of museum」で入手した、大音量が鳴る重厚な真鍮製カウベルを付け足してみました。

ほんの少し鳴ってくれましたが、上下運動時のあの大音量は鳴りを潜めてます。ならば、わずかな揺れに敏感に、過剰に反応して鳴るインドの小型軽量なカウベルはどうだろうか? ハンドメイド品で個体差が非常に大きい物ゆえ、実際に手に取って具合を確かめてみるしかありません。また、鉛や真鍮の釣り用オモリを重厚カウベル内部に付け足して垂らしたら多少は鳴りやすくなるかもしれない。ビーチに落ちているオモリをリサイクルしてみようか。

ちなみに黄銅素材の5円玉を束ねて重厚カウベル内にぶら下げてみましたが、軽すぎてバランスが悪いのかスンともウンとも鳴りません。音響の向上実験、なかなか奥が深そうです。

というわけで、過敏に鳴り過ぎるカウベル探求の日々がしばらく続きそう。上手く解決出来なかったために新たな熱中テーマに出会えたのを幸いとします。

続く(笑)。

#張子DIY
#養蜂ツール
#オアハカ
#エスキールラ

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