野村恭彦(Slow Innovation代表 / KIT虎ノ門大学院教授)

「渋谷をつなげる30人」「京都をつなげる30人」などを数年間続けてきて、イノベーションは「スローフード」のように、プロセスを大切にし、人と人との関係性をつくり、小さな変化がさざ波のように社会を進化させていく「スローイノベーション」に向かっていくのだと実感しています

野村恭彦(Slow Innovation代表 / KIT虎ノ門大学院教授)

「渋谷をつなげる30人」「京都をつなげる30人」などを数年間続けてきて、イノベーションは「スローフード」のように、プロセスを大切にし、人と人との関係性をつくり、小さな変化がさざ波のように社会を進化させていく「スローイノベーション」に向かっていくのだと実感しています

マガジン

  • 日経COMEMO

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    日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

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最近の記事

人生をスローに!!〜ぼーっとする時間を持つことの意味

スローを標榜し始めてから5年以上が経った。Slow Innovation株式会社を立ち上げ、今年の10月から第6期が始まったので、それは確かである。しかしいまだに、すぐにファストな気持ちに駆り立てられることが多い。 スローになるとは、ただゆったり過ごすことではない。人とのつながりを大切にし、物事の本質に焦点を当て、イマココに集中して過ごすことである。未来を心配するのでもなく、過去を悔やむのではなく、目の前のことに集中することが、スローということである。 どうしたら、スロー

    • スローなまちづくり〜人口減少下の日本での「賑わい」神話を手放す

      日本全国ほとんどの自治体が、人口減少に対峙している。いきおい、移住者の取り合いのような「人気取り」の政策がもてはやされることになる。そんななか、流山市は成功例として語られることが多い。人口減少のなか、日本の各自治体はどのような「豊かさ」をめざしていけばいいのか。流山市の事例を通して考えてみる。 流山の軌跡〜おおたかの森の成功一年前の次の記事では、流山市の成功が報じられている。市長が「共働きの子育て世帯へのマーケティングを強化しつつ実際に認可保育園を多く新設したり、駅前で子ど

      • アップサイクル:循環経済の切り札か、あるいはマーケティングにすぎないのか

        noteのアーティストさんのイラストで、おもしろい絵を見つけました。パイナップルの葉で帽子を作ってアップサイクル!というものです。アップサイクルとは、本来であれば捨てられるはずの廃棄物に、デザインやアイデアを加えて新しい製品に生まれ変わらせることです。この定義に従えば、パイナップルの葉っぱを帽子にすることは、立派なアップサイクルになるかもしれません。しかし、ここで立ち止まって考えてみましょう。リサイクルやアップサイクルは、廃棄物を減らすことで、地球環境をより良く保つことが期待

        • 100年後の京都:Slow Mobilityのまちづくり

          Mobilityと言えば、もう10年くらい前でしょうか、トヨタ自動車の部長さんが、「われわれはMobilityの会社、つまり人がどう移動するかを解決する会社なので、解決策は自動車に限らないんです」と鼻息荒く話されていたことを思い出します。今日は、「Slow Mobilityのまちづくり」というコンセプトを提案したいと思いますが、まさにこのトヨタの部長さんがおっしゃっていたとおり、Slow Mobilityは「ゆっくり動くモビリティ」という狭義のクルマではなく、「人がゆったりと

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          人間関係から、人AI関係(じんあいかんけい)の時代に〜ストレスゼロ社会の到来

          心理学者のアドラーは、「人間が抱える問題は、すべて対人関係上の問題である」と考えたという。つまり、人の悩みはすべて人間関係だということである。現代の私たちは、自然との対峙のなかで悩むことよりも、組織のなかでの対立や競争、評価や承認を求めて悩みを抱えることが多い。この人間関係にAI(人工知能)が割って入ってくるわけだが、今後、人間関係や「人とAIの関係」はどうなっていくのだろうか。妄想を膨らましてみた。 生成AIによる傾聴次の記事は、丸亀製麺の店舗で行われた、人事面談のAI化

          人間関係から、人AI関係(じんあいかんけい)の時代に〜ストレスゼロ社会の到来

          人口減少でまちを市民の手に取り戻せ〜スローガバメントの挑戦

          人口減少対策で、もっとも残念な取り組みが、地域間で移住者を取り合う競争だ。子育て支援のチキンレースを行い続けることで、結局、各自治体が疲弊してしまう。観光客の取り合いで、各自治体が観光プロモーションを競うのとも似ている。では、これからの時代、自治体間の人の取り合いを超えて、自治体はどのように人口減少に立ち向かえばいいのだろうか。 100年後の日本は?次の記事は、人口減少問題について、100年思考で捉える必要性を強く訴える。「100年後の人生を考える人はあまりいない。自分の寿

          人口減少でまちを市民の手に取り戻せ〜スローガバメントの挑戦

          私たちは人口減少の日本でどんなイノベーションを必要としているのだろうか〜スローイノベーション宣言

          仕事柄、最先端技術のビジネス性について議論することが多い。そのなかで、いつもモヤッとするのが顔認証技術である。そっくりの顔の人がいて、その人の分を課金されたりしないのだろうか。ミッションインポッシブルのように、完璧ななりすまし技術が出てくることはないのだろうか。ほんとうにこれは便利なのだろうか、と疑問が次々浮かんでくる。今回は、人口減少の日本で、どんなイノベーションがほんとうに必要なのだろうかを考えてみたい。 顔パスという便利さの追求次の2つの記事は、大阪・関西万博で顔認証

          私たちは人口減少の日本でどんなイノベーションを必要としているのだろうか〜スローイノベーション宣言

          多拠点居住という生き方〜個人にとって、地域にとって、イノベーションにとって

          多拠点居住には魅力がいっぱいである。先日、東京と北海道の東川町の二拠点居住を行なっている友人を訪ねて、東川町で5日間のワーケーションをした。私の理想とする「スローでクリエイティブ」な移住者と大勢出会い、たいへん大きな刺激を受けた。そういう私自身も、いまは京都市を本拠地にしながら、月に平均3回くらい仕事で東京に行き、月に1回は広島に行くので、多拠点居住の感覚は理解できる。政府が「二地域居住」促進制度を具体化するなか、多拠点居住の持つ意味を個人にとって、地域にとって、イノベーショ

          多拠点居住という生き方〜個人にとって、地域にとって、イノベーションにとって

          自分の理想のくらしとは?〜スローライフを実現するためのサブスクサービスを求めて

          今月から、「Yohana」という「プライベートコンシェルジュ」サービスのサブスクを始めてみました。自分の生活のあらゆる「TO-DO」を頼んでしまうことができると言います。仕事ではさまざまなプロと契約して、法律、経理、デザインなどの仕事を進めていますが、「生活をプロにサポートしてもらうってどんなことだろう?」という純粋興味で、「くらし素人」の私が「自分の理想のくらし」に向き合ってみました。 「自分の理想のくらし」が分からないパーソナルコンシェルジュのサービスでは、自分のくらし

          自分の理想のくらしとは?〜スローライフを実現するためのサブスクサービスを求めて

          ニュータウンからスロータウンへ〜人口減少の余白から生まれる創造性

          はじめて泉北ニュータウンを訪れました。泉北ラボの宝楽さんを訪ねるためです。泉北ラボは、少子高齢化の進む泉北ニュータウンで、奇跡のような共有空間とコミュニティを作ることに成功しています。一つひとつの取り組みに、驚くことばかりでした。 泉北ニュータウンの奇跡泉北ラボの象徴となるおしゃれなカフェでは、高齢の住民がネイルを塗ってもらっていました。そのカフェには共用冷蔵庫があり、余剰の食べ物を寄付する人と、それをもらうことで救われる人がゆるやかにつながっていました。この創造的な活動の

          ニュータウンからスロータウンへ〜人口減少の余白から生まれる創造性

          100年思考のまちづくり〜社会的共通資本の市民協創

          先日、京都大学の「社会的共通資本」に関する研究シンポジウムに参加した。「社会的共通資本」は宇沢弘文氏の提案した経済モデルです。きわめて多くの社会的共通資本の蓄積を持つ京都こそ、「文化で稼ぐ」を超えて、「より良い社会的共通資本を未来に遺す」という視点が必要であると感じました。ここでは、「社会的共通資本」という概念を手がかりに、これからの社会のあり方を「well-thinking(100年思考)」していくための方法について考えます。 社会共通資本の協創次の記事は、「まちライブラ

          100年思考のまちづくり〜社会的共通資本の市民協創

          学校をスローな学びの場に〜プロジェクト型学習の先にある真に主体的な学びとは

          虎ノ門のビジネススクールで、日々、「学びのイノベーション」に関わろうと奮闘しています。そこには、「学校法人という枠組み」の持つ、「学術的アプローチ」ならではの強みと、「重くて古い枠組みならでは」のイノベーションを遠ざけてしまう弱みの両方があります。修士論文という型にも、カリキュラムや授業という型にも、先生と生徒という関係や成績という仕組みにも、それら両面の良し悪しがあると思います。学校という場のアカデミックな価値を活かした上で、どのように「学びの構造」を進化させていくことがで

          学校をスローな学びの場に〜プロジェクト型学習の先にある真に主体的な学びとは

          ヘンカク旅〜「THE TOKYO TOILET」ツアーのもつ意味は?

          先日、渋谷で開催された「THE TOKYO TOILET」ツアーに参加した。そのとき偶然にも日経MJの取材も入っていて、記者さんとカメラマンさんとも仲良くなった。記事には、私もずいぶんと写っており、特に2枚目の写真などは、トイレで手を洗う記念写真のようだ。このTOKYO TOILETツアーがもたらす、社会にとっての意味を考えたい。 「THE TOKYO TOILET」ツアー記事では、「公衆トイレが観光スポットになっている。東京・渋谷で3月、トイレだけを巡るツアーが始まった。

          ヘンカク旅〜「THE TOKYO TOILET」ツアーのもつ意味は?

          コミュニティナースのビジネスモデルから学ぶ社会変革の可能性

          コミュニティナースが注目されている。多角経営型、行政支援型、企業スポンサー型など、さまざまなビジネス形態で、「共助関係のハブ」として多くの地域において、なくてはならない存在になっている。 おむすびスタンドのコミュニティナース次の記事では、おにぎりブームの紹介に加え、「そのおにぎりを、地域住民の健康の見守りにつなげる看護師がいる」ことを伝えている。「おかえり」「今日はどう?」と、おむすびスタンドを訪れる客に声をかけるという小鹿千秋さんは元看護師だ。看護師時代に「病院を出ると独

          コミュニティナースのビジネスモデルから学ぶ社会変革の可能性

          トモダチ経済圏〜「終わっても仲間」がイノベーションを生む

          このところ、大企業のアルムナイ(同窓生)ネットワークが花盛りだ。終身雇用が終わりを告げ、雇用の流動性が高まったため、社員の持つ知識や経験をつなぎとめたい企業の思惑と、懐かしい仲間と繋がっていたい社員の気持ちが一致する。アルムナイのネットワーク化のその先に、どんなイノベーションの苗床が生まれるか考えたい。 ネットワーク1.0:同窓会次の記事は、パナソニックが中途退職者の交流ネットワーク「アルムナイ」を4月に立ち上げる、というものだ。「希望者が戻りやすい環境整備を急ぐ」と記され

          トモダチ経済圏〜「終わっても仲間」がイノベーションを生む

          スロー・イノベーション〜「スローと経済成長」の矛盾を超える視点

          「スロー」を掲げて仕事をしていると、忙しい毎日を送りながらも、実は整った生活をしたいと願っている人が、実に大勢いることがわかる。みんな、「スロー」にすることを感覚は求めているのだけど、頭は「ファスト」を手放すことを恐れているのだ。しかし語義矛盾的ではあるが、「スロー」にすればするほど儲かる(つまりイノベーションが起こせる)ならば、「ファスト」でいることに何のメリットもないのではないか。「スローで経済成長する」という矛盾を超えるための視点を考えたい。 経営をスローにはできない

          スロー・イノベーション〜「スローと経済成長」の矛盾を超える視点