見出し画像

小児病棟の夜、母親たちの想い [父親目線の小児がん闘病記] 僕は君を守れるかⅠー7

抗がん剤の他にも種々の飲み薬を渡された。
四歳の娘にとっては、むしろこっちの方が大変。錠剤などは飲み込めるワケもなく、看護師さんや同室のお母さん方からのアドバイスで工夫して飲ませた。
中でもファンギゾンシロップと言うオレンジ色のシロップは強烈に不味いらしい。
気丈な娘ではあるけどやっぱり抗がん剤治療が始まると、次第に癇癪(かんしゃく)を起こす事も少なくなかった。これは付き添う親にとっても辛い。
4人部屋、同室の他の方々に申し訳無いと言うのもあるが、うまく子供をあやせない自分が嫌になる。
ある時シンクで食器を洗っていると、同室のお母さんが声をかけてくれた。
「そんな事いちいち気にしてたら、これから先やってけないよ! それにお互い様だし」
そうなのだ、この病棟、この病室には、娘よりももっと厳しい状況で闘っている子供とその親たちがいる。

娘が入院していたこの年、鬼塚ちひろさんの「月光」と言う曲がヒットしていた。直接妻と話したわけではないけれど、この曲の意味深い歌詞は、母親たちに重くのし掛かっていたのではないかと思う事がある。

大学病院の小児病棟は殆どが小児がんなどの重い病だ。つい先日まで目にしていた母子がある日を界にいなくなる事は日常だった。深夜、突然聞こえてくるアラーム。廊下を走る誰かのの足音。母親の嗚咽。

そうでなくても、長期の付き添い生活は精神的にも疲弊する。時には子供の病気の原因を、あり得ない事に求める自責の念があったと言う。


〜月光(作詞:鬼塚ちひろさん)からの引用〜
 am GOD'S CHILD・・・・こんなもののために生まれたんじゃない
理由をもっと喋り続けてあたしが眠れるまで・・・
効かない薬ばかり転がっているけど・・・
・・・時間は痛みを加速させて行く

僕は君を守れるか_序章_元疾患編(この章)のindexはこちら

僕は君を守れるか_破章_骨髄移植編(次章)のindexはこちら

僕は君を守れるか_急章_生体肺移植編(最終章)のindexはこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?