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疑問をぶつけた/フル移植とミニ移植

僕が抱いた疑問
つまり、骨髄移植において
もし、本当にGVL効果が作用しているのなら、
患者の身体を苦しめる強い抗がん剤とか、放射線の全身照射などの移植前処置は必要無いんじゃないかと。

実際、当時すでにその様な移植方法を取る医療機関もわずかにだけど在ったんだ。
ただ、それはあくまでも
高齢者や、内臓疾患などのある、強力な前処置に耐えられない患者に対して、やむを得ず行うもので、
小児においては、フル移植ありきが本流だった。
H先生の治療方針も同じだった。

僕にはそれが歯痒く、
生存率ありきの、医療のエゴイズムの様に思えた。

そして、
骨髄移植のインフォームドコンセントが行われた日に、
僕は、思い切ってそれらの疑問をH先生にぶつけたんだ。

H先生は真摯に向き合ってくれた。

「確かにそう言った研究報告も、そう言った流れがあるのも承知している」
しかし、
「GVLとGVHDは双刃の剣。GVL効果を発揮させるには、酷いGVHDにも耐えなければならない。
 結局のところ、
 強い前処置をとるか、
 酷いGVHDをとるか、
 どちらが患者に取って有益か、それを判断するには、未だ症例が少ない」
と応えてくれた。

そして、最後に
「どうしてもミニ移植を希望するなら、転院してもらうしか無い」
と、付け加えられたんだ。

〜フル移植とミニ移植〜
強力な移植前処置を行う移植を
骨髄破壊的移植、またはフル移植と呼び
逆に骨髄非破壊的移植をミニ移植と呼ぶ。
当時すでに
医療費が自己負担となるアメリカでは、費用のかかるフル移植からミニ移植に移行しつつあった。
強い前処置、特に放射線の全身照射は患者の身体に決定的なダメージを与える。
特に小児の場合は、成長障害、内臓障害、不妊、などの晩期障害として、原疾患の完治と引き換えに、大きな代償を払わなければならない。
将来のある小児だからこそ、是非ともこの問題に対して取り組んでほしいと思うのは僕だけだろうか?

↓2022年現在、ミニ移植に取り組む大阪母子医療センターのページ


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