治癒力[父親目線の小児白血病闘病記] 僕は君を守れるか Vol Ⅱ-10
奇跡が起きた。
家族旅行後、初めてのフォロー外来での検査の結果、美月(娘)の血液はドナー(兄)由来の完全キメラに移行していたのだ。
美月(娘)の体に宿した正弘(息子)の血は力強く根付いた。
そして、白血病細胞(癌)を駆逐してくれたのだ。
さて、
この文章は、当時の記録や記憶をもとに、15年後の僕が書いているんだけれど、
これを読んだ妻が、クレームをつけてきた。
「なんかお父さん、良い感じに”俺の手柄”みたいに書いてるけど、美月は退院前に、お兄ちゃんのドナーリンパ球輸注(後書き参照)をしてるからね!」
「そうでしょう、そうでしょう、そんな日光浴なんかで癌が消えた!なんて、非化学的な話は馬鹿げてる」
そんな医師の声が聞こえて来そうだね。(笑)
でも、
ドナーリンパ球輸注で癌が消えた事はエビデンスになっても、
日光浴で癌が消えた事はエビデンスにならないの?
本当にそこに、科学的根拠は無いと言えるの?
人は皆、
自分にとって、心地の良い情報だけを抜き取り、不都合な情報は遮断する傾向にある。
見たいものだけを見て、信じたい事だけを信じる。
ニュースは届く以前に選別されているんだ。
僕が、ドナーリンパ球輸注の事を、すっかり忘れていた様にね!
でも、それで良いじゃないか
そうなんだ、
僕は今でも、あの時の日光浴で美月の癌は消えたと、本気で信じてる。
何て言ったって、代々、我が家に伝わる秘伝の治療法だからね。(笑)
妻は妻で
あの時の娘と交わした「治ったら楽しいこといっぱいしようーね」と言う約束が
癌を封じる力になっていると信じてる。
泣いて、笑って、怒って、愛しんで、
そんな感情の起伏が、きっと、癌をやっつけるんだ。
ね、良いだろう? そう言う事で。。。
2章_完
ところで、大切な事を書き忘れたよ。
美月(娘)は再発していない。
もう15年が経過しているから、白血病については完治と言って良いだろうね。
ただ、元疾患と引き換えに、大きな代償を背負っていたんだ・・・・
・・・3章に続く
〜ドナーリンパ球輸注〜
ドナーリンパ球輸注(DLI) とは
造血幹細胞移植後の生着不全、感染症対策、さらにはGVL効果を期待して行われる治療法。
移植ドナーに再登場していただき、成分献血の要領でリンパ球を採取し、 レシピエント(患者)に輸血する。
いわば、造血幹細胞移植の追加処置とも言えるが、病態によってはDLIよりも
移植ソース(ドナー)を変えて、再移植する方が良い場合もある。
DLI後は、当然、GVHDが発症するおそれがあるので、その管理(免疫抑制)が重要となる。
詰まるところ、造血幹細胞移植の成否は、単にGVL効果と言うより
GVHD,GVLの相互作用も含めた免疫抑制(管理)の
絶妙なバランスの上で成り立っているとも言えるのではないだろうか。
もちろんそこには、単に生存率の問題以外にも
慢性GVHDやそれによる晩期生涯なども視野に入れなければならないわけで、
白血病の克服は、本当に難しい治療なのだとあらためて思うのだ。
この闘病記、
僕は君を守れるか_序章_元疾患編 indexはこちら
僕は君を守れるか_破章_骨髄移植編 indexはこちら
僕は君を守れるか_急章_生体肺移植編 indexはこちら
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