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オリンピック延期?による憂鬱な春
相変わらず新型コロナウイルスの感染拡大に伴う騒動が続いています。
今週、大きかったのは「いよいよ東京オリンピックが予定通りにできなくなるのでは」と思わせる動きでした。
新型コロナウイルスの流行が分かった時から懸念されていたことではありますが、今月12日にアメリカのトランプ大統領がこの件で発言したことが波紋を広げました。トランプ氏は東京オリンピックについて「無観客など想像できない。1年間延期したほうがよいかもしれない」と述べ、開催の延期もやむを得ないという考えを示したのです。
軽率な発言が多い人とはいえ、アメリカ大統領の発言は重い。きょう(14日)安倍首相が記者会見し、前日のトランプ大統領との電話会談では「開催に向けて努力していることを説明」し、「延長や中止については首脳会談では一切話題になっていない」とわざわざ強調したのも、不安の裏返しと思えてしまいます。
確かに、この時期では迂闊に「中止」などと言えないことは確かです。ギリシャでは12日、東京オリンピックに向けて聖火の採火式が行わました。今月末には(予定通りであれば)日本に聖火がやってくるのです。決断をするなら急がねばなりませんが、全ての準備が無駄になる「中止」は選択としてあり得ないでしょう。
では、「延期」はどうでしょう?これは「中止」よりはハードルが低いようですが、影響は大きすぎると思います。コンディションを整えてきたアスリートに与えるショックが大きいでしょうし、大会に伴う経済効果を見越している動きにも冷や水を浴びせてしまいます。
私が思い浮かべたのは一度、車で通りががったことがある東京・晴海の巨大開発です。そこでは東京オリンピック・パラリンピックの選手村の建設が進んでいました。湾岸沿いに巨大な建物が並ぶ姿は圧巻でした。
この建物、大会中は選手が宿泊し、大会後に改修されてマンションとして販売されます。5600戸が分譲されるとされており、1万2000人が住む街が2024年度に完成することになっていますが、大会自体が延期されればこのプランにも影響するでしょう。入居が延期される人たちにとっては我慢できるものではありません。
私は正直、今回のオリンピックについては様々な問題点があると思っています。しかし、相次ぐ困難に見舞われている関係者のことを想像すると同情を禁じ得ません。本来であれば桜の咲く季節に日本での聖火リレーがスタートすると共に、各競技で日本代表選手が次々に決まり、これまでのゴタゴタを越えてオリンピックの熱狂がやってくる・・・。多くの関係者がそう期待していたでしょうが、現実は厳しいものとなっています。
どうして確信できないんだろう、春を信じることを・・・
今回はそんな歌詞がある曲を収録しているアルバムを聴いてみましょうか。トニー・ベネット(vo)とビル・エヴァンス(p)の2人が作り上げた「トゥゲザー・アゲイン」です。
タイトルからもお分かりの通り、2人のデュオによる作品はこれが初めてではありません。前年の1975年には「ザ・トニー・ベネット/ビル・エヴァンス・アルバム」というアルバムが制作されており、素晴らしい仕上がりになっています。
ソフトでありながら甘さに流されないベネットの声と、澄んだ輝きを持ちながら陰影を感じさせるエヴァンスのピアノは非常に相性がいい。前作の成功を受けて行われたこのセッションも完成度の高いものになっています。
アルバムのラストに収録されているのが前述の歌詞がある「ユー・マスト・ビリーブ・イン・スプリング」。雪に覆われた冬から生命力のあふれた春へとめぐるのは自然なこと。そのように愛を信じることができたら・・・といった思いが込められています。
1976年9月27~30日、サンフランシスコのコロンビア・スタジオで録音。
Tony Bennett(vo) Bill Evans(p)
⑥The Two Lonely People
ビル・エヴァンスによる作曲。バラッドで、愛が終わったことを描いた悲しい歌詞があります。繊細なピアノのイントロに導かれたベネットのヴォーカルは悲しみをことさら強調することはなく、むしろ伸びのある力強い声で状況を描いていきます。これが非常に説得力のある表現となっており、ストレートに心に響いてきます。ベネットのバックでは必要最小限の音で伴奏に徹しているエヴァンスですが、ソロに入るとメロディを引用しつつ、陰のある世界を淡々と描いてきます。リリカルなピアノ・ソロが終わってふっと息をつきそうな瞬間にヴォーカルが入ってエンディングに向かっていく展開が見事です。
⑩You Must Believe In Spring
ミシェル・ルグランによる作曲。スロー・テンポの中でベネットの抑えた表現が光ります。
「深い雪の中には バラの花の秘密が隠されている それは春を信じているということ・・・」
この歌詞を切々と歌うことで「忍耐の季節に新しい希望をつなごうとする人々」の思いが美しく描き出されます。これを受けたピアノのソロは当初ゆっくりとしているのですが、やがて少しテンポを上げてきらめくばかりのフレーズを繰り出します。そこにエヴァンスなりの「希望」が込められている気がしますが、この希望はあくまでも憂いを含んだもので、そこに演奏の深みがあります。
オリンピック開催を確信できない春。こんな事態が起こることは誰も想像できなかったでしょう。ウイルス感染はいつか鎮静化するでしょうが、新しいものだけに収束の時期を断言できる人はいません。しかも、日本国内だけで抑え込めばいいというものではなく、世界情勢にも影響されるだけに勝手なことは言えないのです。
ことしの春はとんでもなく憂鬱なものになってしまいそうです
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