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2021年 これは良かった! 映画3選

さて、2021年ももうすぐ終わりですね。
となれば、今年も2021年に私が観た映画の中でこれは良かった!と思ったものを備忘録がてら挙げていかなきゃ終われない、終われないとも。
例のごとく自身のエモーションに完全服従したチョイス3選なので石は投げないでほしい。


リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様

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まず紹介したいのがこの大人気テニス漫画『テニスの王子様』の完全新作3DCGアニメ。
テニスの王子様って何ぞや?という方に簡単に説明すると、天才テニスプレイヤーの主人公越前リョーマが青春学園中等部のテニス部に入部し同じテニス部の部員たちと切磋琢磨しながら全国制覇を目指してライバルたちと戦っていくというスポーツ漫画だ。
いわゆる初代『テニスの王子様』が週刊少年ジャンプにて約9年間連載され、現在は『新テニスの王子様』とタイトルも新たにジャンプSQにて連載中の人気作である。
じゃあ本作はテニスをするアニメ映画なんだと思うだろう。
もちろんそれも間違いではないのだが、どういうわけか本作にはそこにミュージカルが一つまみ……いや四つまみくらい入ってくるのが特徴だ。

はじまりは原作漫画でいうところの初代のクライマックスから。
試合中に対戦相手に五感を奪われるというテニスの試合で経験することはまず無さそうな絶体絶命のピンチに陥ったリョーマが幼少期の父とのテニスの記憶に触れて大逆転を開始する名シーンだ。
この冒頭は原作を読んでいないとまるで意味が分からない。
リョーマが大舞台でなぜ試合をしているかわからないし、対戦相手が誰かもよくわからないし、観客も選手も急に踊りだすし、選手らしきダンサーの中には包帯ぐるぐる巻きのミイラ男もいるしでいきなりトップスピードでテニプリワールドが展開される。
その後もアメリカでテニスギャング(?)に襲われそれを撃退するも、テニスボールがぶつかる衝撃でタイムスリップが起きたり、タイムスリップ先の過去のアメリカで若き日の父に出会ったりと……テニスの試合よりも気になるファクターがとにかく多すぎて情報の咀嚼に時間がかかる。

もちろん本作の魅力が奇妙奇天烈な演出一辺倒というわけではなく、テニスを楽しむリョーマと若き日の現役プロテニスプレイヤーの父との交流という縦軸がしっかりしている点も申し分ない。
たとえば残された記録のみで父の実力を知った気になっていたリョーマは父である越前南次郎の実際のプレイを見て、父の実力を甘く見積もっていたことを痛感する。そのシーンでは、「知ってたつもりだった でも甘かった」とプレイする南次郎の背にまるでスタンドかの如く張り付きながら歌って表現する(ちなみに曲名は『越えたいその壁を』)。
そして、南次郎が引退に追い込まれるきっかけとなった運命の全米オープン戦で何とかして引退させまいと奮闘するリョーマの姿も南次郎への想いがたっぷりだ。
その結末についてはここでは伏せておくが本作は紛れもなく『テニスの王子様』であり『リョーマ!』であり、決して奇妙奇天烈な演出だけの映画じゃ……いや、それを差し引いても奇妙奇天烈な演出の圧は強いかもしれないけれども観た者の心に困惑と不思議な爽快感を残す映画だ。
あとこれは完全に余談だが、本作はGloryとDecideの2パターンが製作・公開されたという世にも珍しい映画でもある(ミュージカルパートで出てくるキャラクターが違う、本編後のMADみたいなプチシアターの内容が違う等の違いがある)。
ポケモン以外でこんな商法なかなか見ないよ。しかも映画で。


パーム・スプリングス

タイムループ物といえばループですり減る精神と戦いながらも少しずつ小さな光明へと向かう物……という古い考えに真っ向から対立する本作。
舞台はアメリカのカリフォルニア州パームスプリングス。
妹の結婚式で幸せいっぱいの雰囲気にどうにも馴染めない主人公サラは結婚式で即興のスピーチを成功させた青年ナイルズと知り合う。
ナイルズの不思議な雰囲気に惹かれて距離を詰めたサラはあっという間にワンナイトラブ直前まで到達。いざ本番というところでどこからかナイルズ目掛けて放たれたボウガンの矢が直撃。
何とか逃げるナイルズ、ナイルズを追う謎の老人、何が何だかわからずただただ困惑するサラ。
逃げるナイルズを追って光を放つ洞窟の中へと突き進んでいったと思ったら何と昨日へと戻っていた!?というあらすじのタイムループラブコメ。

タイムループ物の導入としては比較的オーソドックスな作りだと思う。その後に開示される「眠る(死亡も含む)とループが発生して結婚式の朝に巻き戻る」というシンプル故にループから抜け出すのが難しい設定もタイムループ物としてはそう珍しいものでもない。が、その後のループを存分に楽しむ様はかなりエッジが利いていて楽しい。
タイムループの絶望を感じさせず明るく立ち向かう映画といえば『ハッピー・デス・デイ』を連想する方も多いだろうが、正にその系譜の映画だ。
『ハッピー・デス・デイ』と本作のタイムループへの味付けの違いを挙げるのならば閉塞感だろう。
『ハッピー・デス・デイ』では殺人鬼に殺されることをトリガーにループが発生する。それを逆手にとって主人公が怪しいと思う人物を監視して殺されないように立ち回る、というのがループ脱出の詰め方でありゴール自体はわかりやすい。
対して本作ではループの抜け出し方は明示されない。
既に何度もループを繰り返しているいわばループの先輩であるナイルズは主人公のサラが色々と思いつく手段は一通り試しており、ループから抜け出すことを諦観しきっている。それでもサラは思いついたアイディアを実行に移してループを抜け出そうとするが、どれも失敗に終わる。具体的には不眠不休で車を運転してパーム・スプリングスを離れるだとかトラックに突っ込んで自殺してみるだとか。しかしどの方法でもループからは抜け出せずヒントらしい物もわからないのでサラも次第にループから抜け出すことを諦めはじめて、どうせ眠れば元に戻るのだからとナイルズと一緒に好き勝手楽しむ姿はポップでありながらどこか狂気的だ。これはパームスプリングスという砂漠のど真ん中のリゾート地のロケーションが監獄としての役割を果たしており、隔離された空間で壊れる人々を描いているように見えるからだろう。
また、彼ら2人とは別にもう1人ループに巻き込まれたのがロイという老人。冒頭でナイルズを狙撃した老人でもある彼はある時にナイルズの気まぐれでループに巻き込まれた被害者であり、ナイルズを恨んでループを活かしてナイルズを何度でも殺しに来る。
全体的に出演者の平均年齢が低めの本作でループを負の方向に活かして若者をぶち殺しに来る老人という絵面も更に狂気を加速させる。
タイムループを通じてサラとナイルズが抱えた性のコンプレックスと向き合い、解消するまでを描いた一風変わった本作の狂気はまるで夏休みの最後の一日を何度も繰り返しているかのような奇妙な焦燥感にヤキモキさせられた。
もちろん最後には彼らはループからの脱出法を見つけ出して、先延ばしにし続けた明日へと向かわんとするのだが……その方法も頭が悪いんだか良いんだかわからなくて必見だ。


マリグナント 狂暴な悪夢

皆さんはジェームズ・ワンの代表作といえば何を思い浮かべるだろうか。
やはり原点にして頂点のサスペンス映画『ソウ』だろうか。それともよりスケールアップしたホラー映画の『死霊館』だろうか。いやいや、ホラー映画だけじゃなく『アクアマン』『ワイルドスピード SKY MISSION』みたいなアクション映画も評価されているぞ。色々な意見があるだろうが断言しよう。
ジェームズ・ワンの代表作は『マリグナント 狂暴な悪夢』だ。

本来ならここで本作の簡単なあらすじを書いて導線を引いておくのが正しいのだろうが、それはできない。
強いてギリギリまで書くのなら「謎の殺人鬼が実際に起こした殺人を夢を通じて覗き見ることのできる主人公がその能力を手掛かりに殺人鬼の正体に迫っていくサスペンススリラー」というところまでだろうか。
これ以上語ろうものなら絶妙なバランスで積み上げられている本作のギミックを崩すことになってしまうので、それは本意ではない。
本作のすごいところは現在では大作映画ばかりを扱っている監督がここまで刺々しい純なホラー映画を再び引っ提げてきたというところだ。ホラーからアクションまで様々な映画を撮ってきたジェームズ・ワンのファンの方々の中には「ホラーの方が好きだからまたホラーを撮ってほしい」と思う方もいれば、その逆に「アクション映画のセンスが良いからこういう方向で突き進んでほしい」と思う方もいるだろう。じゃあ、今作は前者のファンにすり寄った映画なんじゃないの?と思われるだろうがそんなことはない。
本作はいわばジェームズ・ワンの良いところを全部乗せてみましたみたいなベストアルバム的映画なのだ。『ソウ』や『死霊館』や『インシディアス』でお馴染みのじんわりと染み込んでいく恐怖と、クライマックスの『アクアマン』や『ワイルドスピード』で培ったスピード感やアグレッシブさに溢れたアクションが見事に調和をとっている。
正直に白状すれば、私は本作の序盤が退屈で仕方なかった。ホラーの導入としてはありふれすぎた展開に、何となくギミックの正体が読めるような演出の数々。実際、ギミックの正体に関しては90%当たっていたんだがその火力が桁違いに大きかった。私は本作のクライマックスを観て、コメダ珈琲店にはじめて行った時のことを思い出した。あの時なんでシロノワールも余裕だろうと無謀な考えに至ってしまったんだろうな……。
この繋がりの薄そうな「アクション」と「ホラー」という2つの歯車がかちりと嵌り、とんでもない熱量で繰り広げられるクライマックスの気持ちよさは病みつきになること間違いなしだ。
とにかくこればかりは観て体験してほしい。


総括

以上が、今年私が観た映画の中で特に良かったもの3選だ。
今年は何だかアニメ映画ばかり観ていて『映画大好きポンポさん』や『シン・エヴァンゲリオン』や『呪術廻戦 0』なんかもかなり面白かったんだけど、それでも1つアニメ映画(それらとは違って正確には3DCGアニメだけど)を選ぶなら『リョーマ!』かなと思った。
全体的に言えるのは3つとも色んな意味で馬鹿な映画なので、もしかしたら疲れているのかもしれないなと書きあがったラインナップを眺めて感じた。
来年はもうちょっと真面目な映画でも観ようかな……でも、結局こういうのばっかり観てる気もするな……。


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