王国の魔法使い(memo)
昔々、遠くの昔。
東の森というところに一人の魔女がおりました。
お話と言えば例の如く、彼女はたくさんの手下を使い近隣住民に多大な迷惑をかけておりました。
ある日、一仕事を終えた手下Aは一人で泣いている女の子を発見します。
「ん、こんなところに生き残りが、何とも目障りな、始末せん。」
そう思い剣を振り上げたところ‥
そこに丁度居合わせた手下Bが何やら止めに入ります。
そしてこんなことを言うのです。
「男を殺すのも女子供を殺すのも構わない、しかし‥ひとりぼっちの子供を殺すのは見過ごせん」
A「何を抜かすかこの老いぼれが!」
B「何を言うかこのキノコ頭が!」
A「なにをぉ」
そんなこんなで仲間と大喧嘩してしまった手下B
後悔後先に立たず魔女やその仲間から追われる身になってしまいました。
そこにはじまるは
一人と一匹の逃亡劇。
王国はそこにあった。かつて隆盛を極めた都市や街。
西の帝国との確執。
老婆は語った。其の孫たちのために。
王国の魔法使い。
出で立ちは犬、其の剣士は人の形を為した犬だった。
ソフィーと名乗る少女を助けたのは其の異形のもの。
一人と一匹。彼らがノベスヤンの町に着いた頃には夜になっていた。
人外の獣である犬は少女にこう告げる。
「もうわたしに用はないだろう。元気でやるとよい。」
するとおもむろに少女は村人たちにこう叫んだ。
「この異形のものたちがわたしの街を滅ぼしました。
どうか、どうか、仇を討って下さい。」
村人からの石つぶてをもらい
たじろぎながらその場を離れようとする犬に対して
少女は叫ぶ。
「あなたにとって正義って何?」
犬はこう答える
「某の経験値、それに”間違えない”ということの方が大事だ。ソフィーと言ったな。何故かはわたしも知らない。正義についてもわからない。が、
そうするほかなかったのだ。」
少女は頷きもせず
「ならわたしもそう。そうするしか。それに、こうするしかなかったの。
それなのにあなたは何も考えないのね。」「あなたには責任を取ってもらう」
少女は小声で犬にささやく。
「連れて行って欲しいところがあるの」
「それとこれはあなたとわたしだけの秘密」
「わたしの本名はマリ。」
「でもソフィーって呼んで」
犬はふんぞり返って聞いた。
「どういった意味があるのだ。そんなことに。」
少女はからかい気味に笑うと
「何故かはわたしも知らない。が、
そうするほかなかった。でしょ。」
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甲冑を着た女性が二人を視界に認めると
「そこの女の子、隣にいるのは唾棄すべき異形のもの」
「誘拐か?そうならば我が刃のつゆとしてくれる」
と叫ぶ。
犬は当然のこと
「この子を守るためにそばについている」と語る。
ソフィはこう切り出す。
「それはわかりません。」
女は言う「誘拐か、私はクジャと言う。名乗れ犬!」
犬は驚いてソフィーに聞く
「違うのか?」
ソフィーはクスリと笑って呟く
「用心棒になるだけの腕はある?」
「我が輩はルイとなづけられしもの。」
「ソフィーを守る剣として貴殿に勝たねばならんようだ。」
クジャは言う。
「面白い、決闘の間で勝敗を付けようではないか。」
「我が城にくるがよい。」
キィイイン、キィイイン(剣がぶつかる音)
「クジャとやら、なかなかやるな」
犬はそう言うと付け足した。
「其の妙なドレスで膝の屈折を隠している」
「剣の軌道が延びてくるのはそのせいだろう」
「当たりか?」
クジャはそれを受けて答える。
「ご名答、異形のものよ。いやルイか。」
「お互い手は出し尽くした。引き分けでよい。」
「ソフィーと言う子は聡明な子だ。大切にせよ。」
その後、誰にも聞こえないような声で
「大奥様の語っていた通りだ‥‥」と呟いた。