〜白血病になった25歳〜 12. 初めての入院
母と別れたあと、看護師さんが車椅子を押してくれた。ほとんど記憶にないけど看護師さんからこんな声をかけてもらったのを記憶している。
「大変な治療になると思うけど、絶対元気になるから、頑張ろうね」
(大変な治療か... どんな治療だろう。抗がん剤もあるんだろうなぁ)
でも見方を変えたら、
(治る可能性があるってことだよな?)
良いことだと思うが、なんでも良い方に色々考えてしまう。
「着きましたよ〜 こちらのベッドですね」
人生で初めて目の当たりににする病院のベッド。
(ここで自分は苦しむのかぁ)
なんでも悪い方向に一度想像してしまう悪い癖だった。でも、その癖には良いこともあって、本当に悪い出来事が起きた時には全て想定内の範囲の事が多いため、いざという時でも冷静でいられるという利点もあった。
ベッドに着いた時は熱もあり、体のだるさもあった。多分意識は朦朧としていたと思う。
そんな中まず最初にやってきたものは点滴の針。
今までの針嫌いが嘘かのようにすんなり腕を差し出した。自分でも今思えばびっくりだけど、
(人間は追い詰められたら素直になるんだな)
って思った。
担当してくれたのはおそらく研修医の先生だったと思う。これからを怯える自分に優しく声をかけながら点滴の針を(装着?)してくれた。
そして生理食塩水の点滴が始まった。
ぼーっと眺めながら、
(どんな治療が待ち受けているのだろうか)
(自分はどうなってしまうのだろう)
外はもうすっかり夜だったがもちろんすんなり寝ることはできず、ただひたすらこれからの自分に喝を入れていた。