お酒、衒示的消費ではなく原始的消費を⑤

前回は転売されているウイスキーを中心に、注目されることに依存している人たちの衒示的消費について書きました

今回は五回に渡って書かせてもらった、
「お酒、衒示的消費ではなく原始的消費を」のまとめとして、原始的消費について書いていきたいと思います

現代における衒示的消費の一つである「注目されるための消費」は時として不特定多数の人々を傷つけ、心を搾取することもあります

前回の記事で書かせてもらった現状を見てプレミアムウイスキーなんて無くなってしまった方が良い、価値なんてないのでは?という風に思う人も少なくないようですが、実際にはそんなことはありません

瓶の中のお酒は素晴らしいものなのですから

プレミアムウイスキーの他にも「クラフト」と名のつく商品も同じような扱いをされています。クラフトウイスキー、クラフトジン、クラフトビールなどなど……クラフトとは厳密な定義はないようですが、小規模生産というのが共通事項のようです。ただし大手企業が商品のPRの際にクラフト◯◯と表記したりすることがあります。そのようなPRには眉を顰めざるを得ませんね

さて、それら少量生産のものやプレミアムウイスキーを始めとした、お酒の消費についてですが、結論から言いましょう

消費するのは何の問題もない。ただお酒を飲む行為は賞賛を集める行為としてではなく、唯々「嗜む」べきである

プレミアムウイスキーを飲むという貴重な「経験」をしたあなた
その商品よりも「安価」なものを見下していませんか?
プレミアムウイスキーを美味しいと感じ発信するのは問題ありません
ですが他のバジェットウイスキーやデイリーウイスキーと呼ばれることもある、比較的安価な商品を「まずい」「飲む価値がない」と考えていませんか?
ウイスキーに関して言えばシングルモルトを至上のものとし、ブレンデッドウイスキーを「下等」なものとする、非常に愚かな考えを持つ人もいるようです

350mlで1,000円近くするクラフトビールを飲んだあなた
大手メーカーのビールを見下していませんか?
自分は「本物の味」を知っていると勘違いしていませんか?

希少な商品よりも安く誰もが手に入れる事ができる商品を消費している「人」を、心のどこかで見下していませんか?

どんなに希少なものを手にいれ、消費したとしても決して尊敬や賞賛は集められません

全てが等しく只の消費者なのです

ならば衒示的消費はやめませんか?

もっとシンプルに「原始的」な消費をしてみませんか?

簡単な事です。ウイスキーで考えてみましょう

国産シングルモルト12年
美味しいと聞いた
飲んでみたい
でも全然お店で売ってない
フリマアプリで倍以上の値段がついてる
買っちゃおうかな……

そこで考えを切り替えてみてください

このウイスキーの特徴って何だろう?
バーボン樽使ってるんだ、シェリー樽使ってるんだ
ピートの香りはこれくらいの強さなんだ
これに似てるウイスキーってないのかな?
あ、このスコッチなら特徴が似てるかも

……

このように中身の方に思考を巡らせるのです

ウイスキーを飲むという消費行為はどのように行うのでしょう

瓶やラベルは食べられません、飲めません
そう、中の液体を「飲む」事こそが「原始的消費」だと私は思うのです

もちろんもっと大きな視点での消費は購入するところから始まると言えるかもしれません。ラベルや瓶の形が素敵だから買ってみようというジャケ買いと呼ばれる買い方もありますね。

衒示的消費によって負の連鎖が続いているお酒の界隈を健全な状態へと変えていく為には、消費者側の意識が変わっていく以外にありません

お酒を作る人、会社、企業は創るお酒にどれだけ愛情や愛着を持っていても、「儲け」が出せなければ未来がありません。その為には消費者の衒示的消費をしたい心理も利用するでしょう

それを悪とは言えません。資本主義の世界で生きている以上は

だから変わるのは私を含む消費者なのです

全てのお酒は、等しく価値があるべきなのです

皆さんはどんな時にお酒を飲みますか?

仕事終わりの「いつものお酒」で一杯、お祝いの時に「希少で特別なお酒」で一杯、嫌な事があった時の「いつも飲まないようなお酒」で一杯

様々な場面でお酒は飲まれます

その一杯は誰にとっても特別で大切な物なのです
安いお酒でも高いお酒でも、その一杯は幸福をもたらす物でしょう

だからこそ、これからは衒示的ではなく原始的にお酒を飲んでみませんか?

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