睡沢週報 #48
48という数字は美しい。2の2乗と3乗が連続する極めて偶数的な見た目をしている。
こういうことを考えるのが好きなので、学生時代に教師から数学関係の学部、というか理系への転向を強くすすめられた。今思えば「文学部なんて行っても仕事がないだろう」のほうが本音だったのだろうなあ。
数学は好きだった。ただ、それを生業とするための訓練を積むほどの熱意はなくて、日常の思索に数が存在すれば満足だった。歴史もそうだし、語学もそうだし、ともすれば法もそうだった。
私のゆりかごは『ヌメロ・ゼロ』で主人公が身につけてしまったような「敗者が持つとてつもない教養」で編まれている。
カクヨムコン
始まるなあ、今年も。
普段はこの手のコンテストをスルーしている。公募メインで活動しているし、いわゆるウェブ小説のアトモスフィアを際限できるほどウェブ小説に親しんでいない。だからアンテナもあまり張っていなかった。
ただ、今回は友人の作品を下読みさせてもらって、少しだけ校正校閲の真似事までさせてもらっている。それで情報が入ってきた。
ちょうど温めていたネタの公開場所を探していたこともあるし、たまにはネットで小説を書いてみようか。今のところ、私はプロフィールに小説家って書いてあるだけの人に見えるだろうし。
数字を取れるようなパンチのある題材ではないから、どこまでターゲット層にリーチできるかが勝負になってきそう。カクヨム的SEO対策ってタグとキーワード? マーケティングも泥縄式でやるしかないかあ。
もちろん大事なのは中身だ。プロットはできあがったから、あとは経験と腕かな。腕はないかもしれないけど、経験はそこそこ積んできた。ふぁいとじゃよ、私。
おもれえ本がいっぺえでオラ破産しそうだぞ!
本で破産する悟空さは見たくないな……あの家庭って家計どうなってるんだろう、牛魔王の娘チチが頑張ってるんだろうか。初めての家事、初めてのあかぎれ、初めての腰痛。泣けてくる。
諸々の出費が重なるので12月まで新しい本を買わないと決めたはずなのに、Amazonで本のまとめ買いキャンペーンが始まってしまった。
『歴史の鑑定人:ナポレオンの死亡報告書からエディソンの試作品まで』(ネイサン・ラーブら、2021年、草思社)はかなり面白い。歴史文書の鑑定家であるネイサン・ラーブの自伝だ。
歴史記述の根拠となるような文書がどのように流通し、そしてどのように鑑定されるのか。鑑定家としてのネイサン・ラーブはどのような教育を受けたのか。そういったことが実例とともに紹介されていく。
内容自体は正直疑わしいと思って読んでいる。「世界で最も知識と経験のある史料文書の専門家の一人」という肩書きがもう面白い。Nathan Raabで調べてみるとわかるが、彼はこの本から受ける印象ほど老練な人物ではないように思える。
ただ、読み物としてはとても面白い。ナポレオンの死亡報告書を競り落とす下りが中々よかった。島津法樹の『魔境アジアお宝探索記』に似た躍動感がある。
探検家の自伝を読むくらいの気分でワクワクしながら読むのがちょうどいい作品だろう。
今話題のホームズパスティーシュ、舞台は香港。清朝が張り子の虎だったと明らかになる19世紀で中国版ホームズとワトソンが史実と絡んだ陰謀を暴いていく。
植民地時代の香港を舞台にした歴史小説は少ない。日本語で読めるものはほぼないかもしれない。近代史は現代につながる部分が多くて書くのが難しいのもある。翻訳も難しい。
近代アジアの歴史小説であり、ホームズパスティーシュのミステリ小説でもあり。とんでもないものがやってきたなって感じだ。こういうのがほしかった。こういうの書きたい。
これは少し古い本。単行本で1960年代に出ていた本の文庫化で、どれくらい加筆や修正が入ったのかは知らない。
著者の長澤和俊は早稲田で文学の博士号を取った東洋史学者で、シルクロード史を中心とした東西交渉史を専門としている。
シルクロード関連の書籍を精力的に書いてきた方だから、もしかすると見覚えがあるかもしれない。私の本棚には『海のシルクロード史 四千年の東西交易』があった。
この本では人類の「探検の歴史」がまとめられている。民族移動からアレクサンドロス大王の東征、植民地時代、深海や宇宙への挑戦。発見と革新の足取りがまとめられていて、読んで楽しい本だ。
でも買いすぎたな、本……来月はもう絶対買わない……!