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そのひとにとっての純粋

僕の先輩に、タカハシヨウという男がいる。
学生時代、音楽を通じて出会った先輩で、もう何年もよくしてもらっている。というか、もう、ただの気の合う友達になってきている。

彼は、当時一世を風靡したボーカロイドを使い、メジャーデビューまで果たしたプロのミュージシャンである。最近は小説や脚本も書いてるらしい。なんか、少し分けて欲しい。

彼を一躍有名にした代表曲がこちら

発想が狂人のそれだ。この曲がニコニコ動画でスマッシュヒットし、この後も、トチ狂った言語感覚からエッジの効いた楽曲を量産。

この星の地殻には脱脂綿が詰まっていて、リアス式歯並びの人がどこかに住んでいるらしい。

そんな彼が、今年発表した下記2曲を聴いて欲しい。

名曲。さきほど久しぶりに聴いて普通に泣いた。そういや昨日の夜、戸田恵梨香のドラマの最終回を見て泣いた。おとといは、エウレカセブンの、じっちゃんからレントンへの手紙のくだりで泣いた。泣きすぎ。ギブミーティシューである。うるさい、僕の涙腺強度はいまどうでもいい。

テディ、それ恋、人間の感情のなかで1番と言えるほど複雑な部分を描いている。

友達だけど憎い。
好きだから手放す。離れる。

主人公は動物。人間ではないところがいい。
ペンギンもキリンもシマウマも、明らかに自分とは違う生き物だ。形が違う。南極とサバンナはうちから遠い。でも、彼らのなんとも言えない気持ちは僕にも覚えがある。

そして、目に見えて違う形をしていることが、登場人物のすれ違いを表現する演出装置にもなっている。特に”それ恋”がそう。彼らが人間ならば、バレずにやり過ごせたかもしれない、そんなすれ違い。

***

タカハシくんは”それを恋と呼べずに”を作った後、気分が落ち込み、まさかと思いつつ産後うつのチェック診断をしたそうだ。無事罹患していたらしい。男なのに。もう有名な人なのに。

創作をする人は誰だって、葛藤のデパートだ。あげたらきりがない、古今東西の苦悩に揉まれながら生きている。そうして、転げまわりながら、気づかぬうちに、そのひとなりの純粋へ勝手に向かっていくのだ。

逆説的な言葉使い、整った起承転結、ドラマティックなコード進行。王道Jポップ的な転調。この2曲はきっと、緻密な計算を重ねて作られているが、そこに悪意がない。

どうしたら人の心を動かせるか、という計算は尊い創作の一部であり、これこそがタカハシくんの純粋だと思う。

とにかくだ。テディとそれ恋は、いつもみたいな笑いがないからって、

“朝青龍がサッカーしてる、ウケる”

程度に見られて埋もれていくにはもったいないなと、僕は言いたいのである。ぜひとも聴いて欲しい。あと、本人がどう思ってるかは知らない!すんません!

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夏目一眞
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