ここでハンマープライス!!
「ヤス、見たかさっきの男」
「あー何か最近TVに出てる漫画家ッスよね。連れてた女、可愛かったけどまだ小さいッスよ、やっぱ漫画家ってロリコンなんスかね」
そんな話してるんじゃねぇよ、そう言い詰所のドアを開く。
「見廻り終わりま…って灰崎さん!お疲れ様です!」
「タカ、何も異常は無かったな?」
灰崎龍吾は壮年の偉丈夫で、今回のオークション会場の警備を任された敖竜会の実質的トップ、つまり俺のボスだ。現役の武闘派でもある。
「ハイ、流石にこの競売で悪さする奴はいないでしょうし、ただ気になった事が」
「あの漫画家ッスか?偶々居合わせた強盗をカンフーで返り討ちにしたとか言う…武将みたいな名前の」
「白瀬、直虎か?」
初めて寡黙な灰崎は動揺する姿を見るのは初めてだった。
「龍の瞳に警備を回せ、アイツは何をするか分からん」
◆
「せんせぇせんせぇ!すっっごい豪華なパーティですね!」
「そうだろうそうだろう尾白編集!」
ラウンジにて凡そ場違いな男女が1組。女は落ち着きなく小さな体を跳ねさせ(その胸は豊満だった)、男の方はウエイターの持つ酒を奪うように呑んでいる。
「俺がコネを使い尽くして手に入れた会員権だ!呑まねば損だぞ!」
「兄ちゃん達うるせぇぞ!」
騒がしい二人に耐えかねた巨漢が怒気を帯び近寄る。
「オイオイ、こう言う場所では喧嘩とかご法度じゃないのかよ」
「ハッ、それはお前みたいな行儀の悪い奴には適応されねぇんだよ。警備も止めにこねぇだろうが」
なるほど実際スタッフは騒ぎを止めようともせず目を逸らしている。
「そういうことね…」
「だからお前に黙ってもらっても構わねぇんだよ!イヤーッ!!」
「ハイヤーッ!」
「グワーッ!?」
殴りかかる男の巨体は優に100kgを超えている、対して直虎の体重はせいぜい60kg!しかし殴り弾かれたのは巨漢の方だ!カンフーの妙技!
「さぁてセンセイの遺産を競売なんかに出しやがった不義理の兄弟子はどこにいるのかね…」
(続く)