仮想敵
アイスを二つ買うのなら
スプーンも二つ取らないと
わたしは慰めたかったはずで
せめて海底の砂を浮かそうと
すくい上げたのは粉末寒天
ここは固くて足が動かぬ
シーガラスの赤子が見る前景は滲んでいる
気道のかたまりで吐いたバニラ
あの人のくれたネックレスが床に遺棄されている
「綺麗なままでいたい」と泣いた
そういやわたしは綺麗じゃなかった
頭の中では愉快〃〃
ケラケラケラケラ 小石をけって
気道の先ではお葬式
それではごうごう唸ってみるか
調律はずれのハイトーン
誰かを恨んで恨まれて
そうでなければ生きてはいけぬと
氷菓子をくちうつし
トイレでなくしたハンカチをありがとう
おじさんもきっと怖かった