陰気な陽気
2019(R1)1003Thu
朝起きてベランダで洗濯物を干していると、なんだか懐かしい匂いがした。高2くらいの時、お母さんと隣の県の本屋さんに来た時の匂い。いや、本当は匂いなんてしてない。でも何と言えばいいんだろう、そのままで言うのなら、雰囲気が香っている。車の音はするけど人の声はしない静けさも、台風明けの白と青と灰色に光が差した空も、あの時とは全然同じじゃない。それでも急速に私の記憶から引き出されたビデオに、私は幸せなんだなと感じる。だからこんなにも悲しくなるんだと。剥がれかけのポスターを貼り直す元気もでないや。朝のニュースは点けない方が朝を感じなくていいね。今日は部屋中に水が溜まってる日だ。
空きコマで一旦帰ってきて昼食。すると突如鳴り響いたのは、ルパンの荒々しい運転のような音。こんな片田舎で、まさか交通事故?と素麺が溢れないよう気をつけつつ慌てて外を覗いた。そこにいたのは、メルセデス・ベンツを操るルパンではなく、大量のショッピングカートを操る従業員だった。目を疑ったがこれは現実だ。多分地面の凸凹とかも関係してあんな凄まじい音が出ているのだろう。多分大学の教授陣もモンキー・パンチ先生も、ショッピングカートがメルセデス・ベンツになることなど知らないだろう。もしかしたら映画の効果音を作る職人さんは知ってるかもしれない。なんか、ジワジワと面白くなってきた。まさかここでエプロン姿のルパンに出会うなんて思いもしなかった。おかげで大分元気になってしまった。あの従業員は、部屋の中の水を抜いていったらしい。
1日過ごしてみたけれど、なんだか良い日だった。特に良いことかあったわけではないけど、悪いことは全くなくて、ゆるやかな平和を味わってる感じ。朝の寂しさは、付き纏うというか、寄り添ってくれていた。あ、もしかしてこれが秋か。