見出し画像

スペイン人彼氏K②~私が彼を信頼してみようと思ったきっかけ~

先日、現在私がお付き合いしているスペイン人彼氏Kさんとの出会いについて綴った。

ところが、付き合って一週間たたないうちにコロナが深刻化。彼が経営している事業も一部店舗ビジネスを保有しているため大変な打撃を受けることになったのだ。

他にも様々なビジネスを手掛けているため、すぐに家賃が払えなくて倒産してしまうという危機はないものの、店舗のスタッフ、特にアルバイトで雇っている人達の生活が危ぶまれる一大事。出来る限りクビにはしたくないし、彼ら彼女らが路頭に迷うことになる状態は避けたいとの思いで、彼はとにかく仕事に没頭する毎日に一変。彼自身もぼやいていたが、それまではビジネスも非常に安定していたので一日に2~3時間働けば後は勝手にお金と人が動く仕組みになっていたのに、付き合った途端にこんな状態になるなんて誰が想像できただろう。

ただ、彼はあまり自分の仕事の悩みを一から十までぺらぺらしゃべるタイプではなく、私には事態の深刻さがいまいちわかりづらい。

彼との出会いについての記事でも少し書いたが、私はもともと外国人に目にとめてもらったりデートに行ったりするのは得意なのだが、そもそも男性を信用するのに非常に時間がかかる性格なのだ。なぜこんなことになったかというと、男性が非常に多い環境に長らく身を置いていたことが原因だ。

私は中高とも女子高で、そのころは男性に対して夢見がちなピュアな少女だった。しかし大学に行ってサークルに入り、何十人という男友達が出来て、ようやく男性というものがどんな生き物なのか分かってきた。さらに社会人になり、男性に対する印象が悪化の一途をたどった。入社して配属された部署は女性は私一人だけ、あとは150名ほど全員男性。しかもその男性のほとんどがギラギラしたスーパー営業マンたちだった。そんな環境で長らく彼らと一緒に仕事をし、時には国内外問わず出張に行くと、既婚者でもすごい勢いで女遊びをするのを身近で見てきた。そしてみんな総じて嘘がうまいのだ。そんな環境に約10年身を置いたせいか、私は男性が女性と寝るためなら平気で嘘をつき、平気で裏切る場面を見過ぎて少々男性不信な面があったのだ。相変わらず男友達は多いが、付き合うとなると途端に憶病になるのはそこに原因がある。一時期は自分の父親や二人の兄も実は裏ではそんな感じなんだろうかと思い悩んだことがある。

そんな背景があり、彼が普段どういう風に仕事をしているかもあまり分からない状態で「コロナのせいで忙しくて会えない」と言われても、どうしても疑心暗鬼になってしまっていたのだ。確かにコロナでどこもかしこも大変なのは分かる。私が業務委託している仕事の一部もコロナで全部ぶっとんだし、現在継続しているカウンセラー業も非常に不安定な状態だ。でも、心のどこかで「本当にコロナが原因なのか?もしやコロナを言い訳に嘘をついているのでは?」と思っていた。

そこで私は彼のことばかり考えていても仕方がないので、とにかく今自分がしなければいけない仕事や、家での時間を充実させることに重点を置いて気をもみ過ぎないように過ごすことにした。そんな私だが、時々彼に会うと疑う心はさっぱりと晴れ、恋する乙女のエネルギーを充電することができた。そして、そこから三日も会わない日が続けば疑心暗鬼になるというプロセスを繰り返した。つまり、会ってない時だけが不安だったのだ。

そんな過ごしかたをしていたある朝、目が覚めたら青ざめる出来事があった。あり得ないぐらいに喉が痛かったのだ。もう季節は春。外の気温はこんなに暖かくなっていて、インフルの季節はほぼ終わった。それに最近の私は非常に健康体で、ここ1年くらい風邪すら引いたことがなかった。なのに今、喉が痛くなるということは間違いない、、私もコロナにかかってしまったのだ。午前中に熱を測ると36.7度で微熱程度だったのに、2時間後には37.2度まで上がった。

テレビでコロナにかかった人の話を見たことがあるが、大体の人は喉の違和感からスタートし、その後は微熱だったり急に熱が上がったりを繰り返しながら症状が悪化していく。

間違いない、私もついにコロナにかかった。

そう確信した私はKさんにすぐLINEを送った。なかなか会えてはいなかったが、連絡は一日に一回は取っていたからだ。

" I think I got Corona. I have very bad sore throat and have fever a bit since this morning.(コロナかかっちゃったかも。今朝から喉が痛いし熱がある)"

すると他に症状はあるか?とか近くに行きつけの病院はあるのか?とかいろいろ連絡がきた。残念ながらあまりにも健康体で過ごしていた私は昨年6月にこの土地に引っ越してきてから一度も病院にかかっていないため、どこの病院がいいのか分からない。すぐに近所のバー友達に連絡し、おすすめの病院を数か所紹介してもらった。迷った末、口コミの良い耳鼻科に行くことにし、WEBで予約して1時間後に来院することになった。
病院までの道中、このまま入院することになったら飼い猫はどこに預けようか、入院に必要なものはあれとこれと、、そして自分はコロナ感染者だからもうこれから誰とも接触してはいけない、完治するまで寂しい日々が続くな、などあれこれ考えながら歩いて病院に到着した。

***

先生「急性扁桃炎ですね~、抗生物質、痛み止め、解熱剤、うがい薬だしときますね。」

口を開けて2秒でそう診断された。

私「・・・え、コロナじゃないんですか?」

先生「喉に膿がたまっていて耳の下に痛みがあるということなので、ほぼ間違いなく急性扁桃炎です。コロナじゃないですよ。」

ということでコロナではなかった。

ホっとした私は、病院を出てすぐにLINEで彼にコロナではなかったことを報告した。

" Ok that's a good news. Please take a good rest. Just call me if anything happens.(良かった。しっかり休んで、何かあったら電話して。)"

と返事がきた。普段だったらこの程度のやり取りで終わるのだが、体調が悪いのをいいことにもう少しだけ甘えてみた。

" I feel lonely when I'm sick for some reason..(体調悪い時ってなぜか寂しく感じちゃうんだよね)"

すると彼はこう言った。

" I'm here with you baby. Don't feel lonely. Just take rest now, that's it.(ここにいるから大丈夫だよ。寂しいとか言わないで、今はしっかり休む。それだけ。)"

実は今から3年ほど前に結婚の話までしていたインド人の彼氏がいたのだが、当時私が急性虫垂炎(いわゆる盲腸)で病院に入院した時すら彼は一度も病院に駆けつけてくれなかった。その時、彼はドイツ赴任の話が会社から出ていて、結婚してドイツについてきてほしいと言い、しかも「あっちでの生活は自分が全部責任持つから!」と熱烈プロポーズしてきた数週間後の出来事だった。この一件が意外にも非常にショックな出来事で、私は彼への信用を無くし、結局別れてしまった過去がある。

今回はその時ほどの重症さは全くないが、体調が悪い時に駆けつけてくれるかどうかというのが、私の中で彼を信用できるかどうかの重要な基準の一つとなっていた。

" I'm here with you baby. Don't feel lonely. Just take rest now, that's it.(ここにいるから大丈夫だよ。寂しいとか言わないで、今はしっかり休む。それだけ。)"

という答えは、お分かりの通り別に駆けつけてくれるわけではない。がっかりするかと思いきや、自分の中ではなんだか安心できる答えだったのだ。「ここにいるから大丈夫」という言葉が、「何かあったらすぐ駆けつけるから大丈夫だよ」と言ってくれている感じがしたのだ。

***

そして、翌日・翌々日は薬を飲んでしっかり休養することに専念した。すると、いつもは私から連絡しないと連絡をくれない彼だが、コロナ発症疑惑日からこの三日間はずっと数時間おきに連絡をしてきた。「体調は大丈夫か?」「熱はまだある?」「食欲は?」など、普段では考えられないほどこまめに連絡をくれたのだ。

そこで私は、もしかして普段あまり連絡がないのは私のことを信用してくれているからではないだろうかと思い始めた。よくよく思い出してみると、私はいつもの悪いクセで、付き合う前の彼に興味がなかった時期は、自分から彼にほとんど連絡をしていなかった。しかも、当時会う約束をしていた日に彼が急な仕事でドタキャンとなり猛烈に謝罪された時も「別にいいよ、一人で時間過ごすの得意だし。気にしないで。」とすんなり受け入れていたのだ。興味がまだ向き切っていない時は、これが本当の私で、心の底から思って言っている言葉なのだ。ところが、付き合う前や興味がなかった時はこういったいい女な態度が取れる私だが、付き合った途端に180度逆転して面倒な女に成り下がってしまうクセがあった。それはようやく彼を好きになっている証拠なのと同時に、彼のことをやはり信頼出来ていなからこその不安感から来るものだった。

そんな自分を客観視して今回の出来事を考えてみると、彼は最初の頃の(私が彼に興味がなかったころの)さっぱりした性格の私に惚れて付き合いたいと思ったという前提があるからこそ、今こうして自分がやるべき仕事に没頭しているし、少々会わなくても、少々連絡しなくてもこの人なら大丈夫、と思ってくれているのではないか?という考えに至った。

そう思った途端、「私も彼のことをもっと信頼してもいいのかもしれない」という気持ちが湧いてきた。

もちろんこの出来事だけではなく、今までの彼の言動もすべて総合して考えてみると、彼はそれに値する男性だという場面が多々あったからこそなのは言うまでもない。彼の今までの言動を総合して見てみると、言うこと成すことに非常に一貫性がある男なのだ。

こうしておうち時間を少しだけ割いて自分と彼の関係性を客観視してみると、なんだか精神的に安定した答えにたどり着いて、私も大人になったなと感じた。

***

今、きっとこのコロナの状況で会いたくても会えない環境の人は私以外にもたくさんいるだろう。一日も早くこの事態が改善され、世界中の人たちがまた自由に外を出歩けるようになることを心から願います。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?