「幸せとは何か?」という問いに対する答えの収集と分類

「幸せとは何か?」という人類史上究極に哲学的な問いに対して、もう答え方は大体、出揃っているので、パターン分けすれば誰でもそれなりにしっくりする答えが見つかるんじゃないだろうか、という雑な思考実験というか、お遊び。

実はもう既に十分幸せなんだよ派

もう既に十分幸せだということに気づいたほうがいい。ないものを期待するから、不幸であるかのように感じてしまうだけなんだよ、という意見。

今この瞬間にあなたが無常の喜びを感じていないとしたら、理由は一つしかない。
自分が持っていないもののことを考えているからだ。
喜びを感じられるものは、全てあなたの手の中にあるというのに。

アントニー・デ・メロ

なんだ、あれが僕たちの探している青い鳥なんだ。
僕達はずいぶん遠くまで探しに行ったけど、本当はいつもここにいたんだ。

メーテルリンク

人の一番の幸せは内面か、手の届く範囲にある。賢者はどんな状況であろうと自身の現状に満足し、持たないものを願うことはない。

セネカ

幸せとは欲しいものを得たり、なりたいものになったり、したいことをしたりするところから来るものではなく、 今得ているもの、今していることを、あなたが好きになるところから生まれる。

トリーチェ

なぜいつも遠くへばかりいこうとするのか? 見よ、よきものは身近にあるのを。ただ幸福のつかみかたを学べばよいのだ。 幸福はいつも目の前にあるのだ。

ゲーテ

目の見える人間は、見えるという幸福を知らずにいる。

ジッド

いいかい? 幸せの秘訣はさらに多くを求めるのではなく、より少なきを楽しめる能力を磨くことにあるのだよ。

ソクラテス

いろんな物語とか映画の結末でよく見る気がする。
普遍的で共感が得られやすい一般解の顔をしているが、実際この境地に辿りついている人はどれぐらいいるんだろうか。

個人的には、この意見は真理のように見えて、実感とは乖離がある印象。しっくりこない。人生経験の豊富さというか、ある程度人生を満喫した人の考え方なのではないだろうか。

幸せ=愛 派

人を愛すること、愛されることが幸せだという意見。

愛することと愛されること。それより大きな幸福なんて、私は望みもしないし知りもしませんわ。

モラティン

だれかが、何百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪のはながすきだったら、その人は、そのたくさんの星を眺めるだけで、幸せになれるんだ

サン=テグジュペリ
星の王子さま

愛されることが幸せなことだと
誰もが思っている。
しかし実のところ
他人を愛することこそが幸せなのです。

ヘルマン・ヘッセ

人生最大の幸福は、愛されているという確信である。自分のために愛されている、否、もっと正確には、こんな自分なのに愛されているという確信である。

ヴィクトル・ユーゴー

ロマンチックで温かい。恋愛映画か、家族愛をテーマにした物語で言われそうなセリフ。

家族・恋人といった人との関係性を、人生において一番重視する人にとっては、これが幸せの真理なのかもしれない。

幸福=現実÷期待 派

期待しすぎるから不幸になる。期待しすぎなければ、幸せなんだよという意見。

幸福の数式とは、現実÷期待だ。幸せになるには2つの方法があり、現実を高めるか期待を下げるかである。

ジョディ・ピコー

幸福の最も大きな障害は、過大な幸福を期待する事である。

フォントネル

冷静で現実的。情緒派の人には受け入れられなさそうだが、ロジカルに考える人にはこれがハマるんじゃないだろうか。

論理的な人の中でも、理想を追い求めるタイプには、合わない考え方かもしれない。「人生に対して期待を下げる」考え方は大人だと思うが、自分の理想を持っている人には受け入れ難いのではないだろうか。

「幸せとは何か?」なんて考えると逆に不幸になる派

余計なこと考えずに生きたほうが幸せ、という意見。

人は幸福を探し始めると、たちまち幸福を見つけられない運命に陥る。
しかしこれには不思議はない。幸福とは、あのショーウィンドウの中の品物のように、好きなものを選んで金を払えば持って帰れるというものではない。

アラン

幸せが何かって考え出したら、生きてくのが苦しくなるだけよ

マツコ・デラックス

抽象的な話とか哲学的な話には興味がなくて、日常を生きることに幸せを感じられる人には合うと思う。

幸せかどうかは、自分次第!派

自分次第!

幸せかどうかは、自分次第だ

アリストテレス

しあわせは いつも
じぶんの こころが きめる

相田みつを

幸せは、財産、地位、職業などで決まるものではない。その人が何を幸福と考え、不幸として考えるかで決まるのだ。

トーマス・エジソン

幸福とは心の状態をいう。物事をどう見るかだ。幸福とは満足することだと思っているが、これは金持ちであることを意味してはいない。

ウォルト・ディズニー

世の中には幸福も不幸もない。ただ、考え方でどうにでもなるのだ。

シェイクスピア

幸福人とは過去の自分の生涯から満足だけを記憶している人々であり、
不幸人とはそれの反対を記憶している人々である

萩原朔太郎

不幸のどん底にいる人に同じことが言えるだろうか。例えば、友人、家族、恋人を失ったばかりの人に「幸せなんて、気の持ちようだよ」なんて言葉をかけることは実際ありえないだろう。

「幸せってなんだっけ?」と、ふと疑問に思った人には通用するが、不幸のどん底にいる人には刺さらなそう。

幸せになる必要なんてないのよ派

読んで字の通り、幸せになる必要なんてない、という意見。

一番幸せなのは、幸福なんて特別必要でないと悟ることです。

ウィリアム・サローヤン

幸福になる必要なんかありはしないと、自分を説き伏せることに成功したあの日から、 幸福がぼくのなかに棲みはじめた。

アンドレ・ジイド
新しき糧

個人的には真理だと思う。この言葉を聞いたとき、肩の荷が下りたというか、僕はすごく楽になった。

ただ、これは「自分に対しては」という条件付きだ。幸せになりたいと願う人はいるはずで、その人とどう関わるかが課題だ。仕事でも恋愛でも、家庭でも、この価値観が一致しないとどこかで衝突かすれ違いが起きるだろう。

世捨人っぽい考え方でもある。幸せを目指すことを止めたとき、何をモチベーションに生きるのだろうか。

むしろ不幸こそ必要派

人は幸運の時は偉大に見えるかもしれないが、真に向上するのは不運の時である。

シラー

幸せも不幸せも両方あるのが当たり前 派

禍福は糾える縄の如し

淮南子

少しの悲しみもない純粋な幸福なんて、めったにあるものではない。

ハイネ

そもそも幸せになることが目的じゃない派

自分が生きる目的は、自分が幸せになることっていうのは、どうも納得できない。

宮崎駿

幸せ=貢献・奉仕 派

最大の貢献をしているとき、あなたは最高の幸せ者だ。

ロバート・ケネディ

本当に幸福になれる者は、人に奉仕する道を探し求め、ついにそれを見出した者である。これが私の確信である。

アルベルト・シュバイツァー

社会における最も弱い立場の人々を助けようとすること以上に幸せをもたらすものは無い。

ダイアナ妃

幸せ=仕事の充実、達成感派

一分間さえ休む暇のないときほど、私にとって幸せなことはない。働くこと、これだけが私の生き甲斐である。

ジャン・アンリ・ファーブル
昆虫記

自分の仕事を愛し、その日の仕事を完全に成し遂げて満足した。
――こんな軽い気持ちで晩餐の卓に帰れる人が、世の中で最も幸福な人である。

ワナメーカー

仕事の中に喜びはある。何かを達成したという実感なしに、幸せはありえない。

ヘンリー・フォード

幸せ=何かに夢中になること派

人間は集中して夢中になっているときが、一番幸せで楽しいもんだよ。子どもが遊
んでいるときの無心な顔は素敵だ。声をかけても聞こえないほど、自意識がない状態。あれが、幸せというもんだね。

黒澤明

マーティン・セリグマンという心理学者は幸せの5つの要素として
・達成
・快楽
・没頭
・良好な人間関係
・意味合い(貢献、意義)
を上げている。このモデルに当てはめれば、黒澤監督は特に「没頭」の比重が大きいといえる。

まとめ

僕は、幸せは「目指さなければいけないもの」ではないと思っている。「幸せなんて特別必要ない」という考え方を知ったときに肩の荷が下りた感覚がした。

それがなぜなのかを考えると「幸せになりなさい」「幸せを願っている」「幸せになるべき」という言葉には、「一般的な幸せとはこういうものである」という定義の押しつけが隠されていることがあるからだと思う。

とはいえ、本当に不幸な目に合っている人はこんなことを考える余裕はないはずで、やはり「幸せとは何か?」なんていう問いを考えることができる時点で、そこそこの時間的・精神的ゆとりがあるということの証明で、暇人なんだなとも思った。

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