Kashin Yamamoto(山本苛心)

Kashin Yamamoto(山本苛心)

最近の記事

しあわせのトマトジュース

いつもの新宿のSMバー。 サブミッシブを失ってからずいぶんと経っていた私は、中々出会いの機会を得られず、多少の焦りを感じながら通いつめていた。 ドミナントらしく、支配的な雰囲気を漂わせるスリーピースのスーツ。これが私の狩猟服だった。 しかし、ハンティングに焦りは禁物。獲物はこの檻から逃げることはない。じっくり待てば、いつかはやってくるはずだ。血の匂いに敏感でなければハンターはつとまらない。 そんな中に出会ったのが彼女だった。 「トマトジュースをください」 バーのスタ

    • たった一つのテラス席

      「おはようございます、ご主人さま」 寝ぼけ眼でキッチンに向かうと、リビングベッドの上から仰々しく三つ指で頭を下げる彼女がいた。 寝間着変わりのロングTシャツを着た彼女の首元には、不釣り合いな細めの黒い首輪。天突あたりでチェーンがループになっていて、ここにリードを付けて引けば首が閉まるという、見た目以上にサディスティックな機能を持つ 。彼女のお気に入りの首輪だった。 テレビには彼女が最近ハマっている食レポ系のYoutuberが、箸でなにかを口に入れようとする不自然なポーズ

      • ご主人さまのピーナッツ

        お盆をずいぶんと過ぎたこの季節でも、強い日差しが照りつけてアスファルトを焦がしている。 高井戸出口付近のいつもの渋滞で、のろのろとした速度でしか進まない中央道をやっとの思いで降りると、府中市郊外にある寺に向かう。 宗教法人というのは、よほど儲かるのか、やたらに広い駐車場のかろうじて木陰になっている位置に車を停める。 墓地の入り口に並べてあった、使い古しの桶と柄杓を一つずつとり、外蛇口で水を入れて中に進む。 何度来ても墓の位置がうろおぼえな事に、多少の罪悪感を覚えながら、自分

        • ハーブティーの拷問

          まだ「朝日」と呼べる柔らかな木漏れ日が、上品なテーブルクロスにまだらな模様を描き、そこに置かれた透明なガラス製のカップをキラキラと輝かせている。 代官山から少し外れたところにあるこのレストランは、朝の8時だというのに、近所に住むスノッブな雰囲気を漂わせている人々で、そこそこ混んでいた。 気持ちのいいやわらかな風が抜ける、奥まったテラス席に案内されたのは、タイミングがよかったとしか言いようがなかった。 ハーブティーが半分入ったガラス製のカップを、彼女はことさらゆっくりと持ち

        しあわせのトマトジュース

          ドミナントは趣味なのか?

          モチベーション 最近は朝夕晩と、まむし女王様のおっしゃるところの性癖考察班モードになることが多く、手元のメモにはたくさんの殴り書きが増えてきた。 自分なりのdom観の表明というのはsubを探す上でも、あるいは世界観の共有のためにも不可欠だと思い始めた昨今。しかし、Twitterでは考えをまとめて発信するのは難しく、ならばいっそnoteに書いてみようと思い立ってアカウントを作ってみた次第。 そんなわけでドミナントについて自分なりの解釈とか考察とかをツラツラと書き連ねて行き

          ドミナントは趣味なのか?