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銃器:やさしい銃器入門/№02【現代の小火器 TOP10/第2回】
(註:この記事は、2019年8月7日2102時に加筆修正されました)
(一部記載に誤りがありました。訂正キャプションを掲載しています)
【第1回より・再開】
ご無沙汰してます、自称note界の銃器クラスタ、slaughtercultです。
前回の投稿では、現代銃の基礎教養としてAR-15とAKをお送りしましたね。
基礎知識は前回で習得したので、今回からは更に掘り下げていきましょう。
【第3位・STEYR AUG】
銃種・アサルトライフル/発射方式・フルオート、セミオート
作動方式・ショートストロークピストン式ロータリーロックボルト
製造元・Steyr Arms*/原産国・オーストリア*
口径・5.56mm×45/装弾数・30、42+1発/連射速度・分間 650発
*元々この銃を購入し配備していた国の中には、この銃を国産化した上に、独自の改良を施した国もある。シンガポールやオーストラリアなど。
AR-15、AKと、『従来型』のアサルトライフルを2つ続けて解説しました。
『従来型』とは、遠く火縄銃の時代から発展してきた伝統的な構造の銃。
トリガーより前方に『マガジン』や『チャンバー』を持つ構造を指します。
ピストルの大部分とSMGの一部は、グリップにマガジンを内蔵しています。
チャンバー位置はやや後方寄りで、トリガーはシア*と直結していません。
ですがこれらの銃は、便宜上『従来型』の銃種に含まれているようです。
*シア……トリガーとハンマー(もしくはストライカー)を仲介する部品。
トリガー後方にチャンバーを持つ銃では、シアとトリガーが直結できない。
この場合トリガーバーという+αの部品が、トリガーとシアを繋いでいる。
トリガーがシアを動かすと、ハンマーが倒れ、弾薬の雷管に衝撃を与える。
トリガーがシアと直結するか否かは、トリガーの触感に強く影響を与える。
トリガーの触感が良いほど、銃として撃ち易く(≠扱い易く)なるわけだ。
これからご紹介する銃は、『従来型』とは異なる構造で作られています。
ピンと来た方も居るでしょうが、いわゆる『ブルパップ』構造の銃です。
ピストルとも異なり、チャンバー位置が完全にトリガーの後方なのです。
上・AUG A1。代表的なブルパップ銃。下・STM 556。AR-15クローン銃。
*上記2つの画像は https://www.steyr-arms.com/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
バレル長は同一で508mm(20in)。お分かりいただけましたでしょうか。
AR-15ではレシーバーとストックが、前後で独立した形状となっています。
AUGでは、2つの重要部品が合体し、前後の容積を大幅に圧縮しています。
ブルパップ構造の大きなメリットは、銃全体のコンパクト化にあります。
なおかつAUGでは、ご覧の通り銃の外装に強化ポリマーを多用しています。
レシーバー内部には軽合金の中骨がありますが、トリガーさえポリマー製。
ポリマーは鉄とは違い、軽く、錆びず、熱を通し難い性質があります。
特に暑さ寒さが厳しい、湿度が高い等の地域で、極めて効果が高いです。
が、ポリマーは鉄ほど強靭でなく、熱を蓄積するため万能ではありません。
上・AUG A3。AUGの改良型。下・AUG Z A3。上記の民間型(Z=Zivil)。
*上記2つの画像は https://www.steyr-arms.com/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
さて、銃が弾薬を装填するチャンバーは、マガジンの上部前方にあります。
AUGなどブルパップ銃の場合は、概ねグリップ付け根の上部後方ですね。
ボルトはマガジン直上で前後するので、レシーバーはストックの内部です。
銃の右側面、バレル突出部にある銀色の凹型部品と筒状部品が見えますか?
これはガスチューブ。火薬の燃焼ガスで動作するピストンが入っています。
ガスがピストンを動かし、ピストンがボルトを動かし、銃が連発します。
銃の左側面、バレル突出部にはコッキングハンドル。この位置が重要です。
AUGの構造だと、銃の手元でボルトが操作できないようになっています。
マガジン上部の排莢口は、通常は右ですが、左側に開くことも可能です。
*上記の画像は www.lithgowarms.com/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
F90。オーストラリア製の独自改良型ですが、基本構造はほぼ同様。
トリガー後方に突き出た四角形は、押しボタン式の安全装置です。
マガジン後部に僅かに飛び出た三角形が、マガジンキャッチです。
見ていただいて分かる通り、操作部品があちこちに散らばっていますね。
これを見ると、上掲のAR-15はいかに部品を集約しているかが分かります。
省スペース性を重視し、人間の使い勝手を妥協している部分がありますね。
ちなみに、AUGにはセミ/フルオートを切り替えるセレクターが無いです。
トリガーを浅く引けばセミオート、深く引けばフルオートなのですが……。
使い易いのか疑問ですね。正直、この型の評判が良くない点の一つです。
*上記の画像は https://www.stengg.com/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
SAR-21。こちらはシンガポール製で、もう一つの独自改良型AUG。
コッキングハンドル(とガスピストン構造)が上部に移設されています。
ご覧の通り、AUGのプラットフォームを大きく逸脱するものではないです。
ブルパップ構造の利点の一つは、構造上ほぼ強制的に直銃床となること。
直銃床では反動を真後ろに受け止めるので、銃の動きを制御しやすいです。
【またこのタイプの銃は、ストック後端の蓋を外して部品を取り出します*】
*完全に誤った情報です! 正確には、前後2分割されたレシーバー構造。
レシーバー中央の固定ピン(かんぬき、クロスボルト)で結合しています。
動画紹介を交えた、訂正記事をUPしています⇒【第3回・訂正とお詫び】
*上記の画像は https://www.fnherstal.com/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
P90。ストレートブローバックのSMGですが、内部構造はAUGの流用です。
バレル上にマガジン、ストック下部が排莢口という珍しいレイアウト。
ボルトハンドルがバレル同軸にあるのは、ピストン構造が存在しないから。
上・F2000 Standard。下・F2000 Tactical TR。AUG構造の最終進化系?
*上記2つの画像は new.fnherstal.com/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
F2000。P90を経て、AUGのプラットフォームが最終的に辿り着いたもの。
バレル上部にガスピストン構造を持っているのは、SAR-21と同じです。
グリップを兼用する穴あきストックは、サムホールストックと呼びます。
銃の右側面、バレル突出部の根本の、開いた蓋のような部品が見えますか?
実はこれが、この銃の排莢口。銃の前方に空薬莢を飛ばす構造なんですね。
右利き、左利きのどちらでも、安心して銃が撃てる構造になっています。
さて色々と見てきましたが、皆様はAR-15やAKと比べてどう思いますか?
一番重要なのは、マガジンの位置(明らかに扱い辛そうなんですよね)。
スムーズなマガジン交換は望み薄ですが、集団戦闘では関係ないのかな?
Funker Tactical。AUG A3の実写映像ですね。普通の銃とは違う使い心地!
排莢口にケースデフレクターが付けられているのは、いい改良点ですね。
銃が短く、重心が後ろにあるので、構え・発砲がスムーズにできています。
実はこの銃、前方グリップを横に回すと、バレルを前に抜くことが可能。
短銃身でカービンに、長銃身で軽機関銃や狙撃銃にすることもできます。
変化形の銃は、使える画像を用意することができなかったのが残念……。
ブルパップは他にも、フランスのFA-MAS、イギリスのL85などが存在。
ですが……正直な話、どの機種もアクが強く、成功作には至っていません。
辛うじて需要があるのは、このAUGと、後発のTAVOL-21くらいですかね。
【第4位・H&K MP5】
銃種・サブマシンガン/発射方式・フルオート、2or3バースト、セミオート
作動方式・ローラーディレードブローバック(*ロッキングではない)
製造元・Heckler & Koch/原産国・ドイツ*
口径・9mm×19/装弾数・15、30+1発/連射速度・分間 700~800発
*ヨーロッパ、パキスタンなど様々な国でライセンス生産されているほか、中国は内需および輸出向けに、コピー銃を生産している。
ここまで、AR-15、AK、AUGとアサルトライフルをお伝えしてきました。
これらの軍用銃は、現代の小火器を理解する上で核となる重要な要素です。
第1回で解説した通り、ライフルは非常に殺傷力が高く、戦闘に有効。
しかしライフルの高い威力は、戦場以外で発砲する場合に弊害を生みます。
街中……それも敵地でない、自国の都市。周囲は傷つけたくない物だらけ。
ライフルを撃てば、弾は壁や車を貫通し、通行人を容易く殺傷せしめます。
それでも近頃の警察特殊部隊は、ライフルを普通に使ってますけどね(汗)
ともかく、一般論として(特に自国内の)都市戦闘向けと言われる小火器。
それがサブマシンガン。拳銃弾を用いる、ライフルより威力の低い銃です。
*上記の画像は https://www.aalan.hr/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
UZI(クロアチア製 ERO)。近代的なオープンボルト*式SMGの定番です。
小型化に注意を払って設計されたAUGよりも、明らかに一回り以上小さい。
火力の顕著な低下と引き換えに、圧倒的な小型化・機動性が得られます。
しかしSMGという銃種は元来、精度を犠牲にして弾を撒き散らすための銃。
上記のUZIも、その『軍用SMG』的な概念の延長線上で設計された銃です。
ですが自国の街中で、戦場みたいに見境なく撃ちまくることはできません。
近代型のアサルトライフルが勃興を始めた、冷戦初期の1950~60年代。
世界各地でイデオロギー闘争が過熱し、治安機関もまた重武装化した時代。
ライフルは駄目だけど、SMGもちょっと……その問いに一石を投じた銃。
*上記の画像は https://www.eas.gr/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
コード名HK54、改称してMP5。225mmバレル(8.9in)を持つSMGの傑作。
この銃は、より強力なアサルトライフルの構造を母体に設計されました。
これ以降、ライフルを原型にSMGを設計する流れが業界で定着します。
MP5の原型はコード名HK31、いわゆるG3。7.62mm×51弾のライフルです。
ライフル流の設計は、SMGの性能向上に多大な貢献をもたらしました。
最も重要なのは、クローズドボルト*式となり、命中精度が向上したこと。
*オープンボルトは、ボルトが開いた状態から射撃を始める機関銃の様式。
トリガーを引くと、ボルトが前進して弾を装填し、撃発する。
対してクローズドボルトは、閉じた状態から射撃を始めるライフルの様式。
予めボルトが弾を装填しておき、トリガーを引くと、弾を撃発するだけ。
オープンボルトは、弾の撃発までの時間差が大きく、精度が悪化しやすい。
対してクローズドボルトは、撃発の時間差が僅かで、精度が安定しやすい。
拳銃より射程と威力が大きく、安価な軍用SMGより命中精度が優れる。
このライフルのように撃てるSMGに、治安関係の市場は高評価を下します。
軍の戦車隊や後方部隊など、小型軽量な火器が必要な分野も重宝しました。
その一方で、MP5は黎明期より、GSG-9を初め特殊部隊でも使われます。
彼らは一般兵とは違い、少人数での遊撃・夜襲・奇襲等を好んで行います。
その時に重要になるのが、居場所を悟られない……銃声を減衰させること。
*上記の画像は https://www.mkek.gov.tr/ から転載されています。
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MTS-A2。トルコ製のMP5 SDで、半透明マガジンを使うのが特徴です。
146mm(5.7in)バレルが、大型ハンドガードと消音機で覆われています。
SDのインテグラルサイレンサーは、銃声を念入りに減衰させる特殊な構造。
*上記の画像は https://www.heckler-koch.com/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
本家ドイツ製のMP5 SD6。トルコ製と、グリップの違いが分かりますか?
トルコ製は旧型ベース、ドイツ製は新型。セレクターの表示も違います。
ピン止めされたグリップは『トリガーパック』と呼ばれ、交換可能な構造。
MP5シリーズは、G3から連なるシステムウェポンの思想で設計されました。
AR-15の構造とも類似していますが、部品の各所をピンで固定しています。
共通の部品の一部を共用し、用途に合わせて銃を組み替えられるのです。
*上記の画像は https://www.dakotatactical.com/ から転載されています。
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MP5K-PDW。148mm(5.8in)バレル。ここまで小型することも可能です。
ストックは折り畳み式で、ストックを閉じると30センチくらいになります。
もはやSMGというより、大きくなった拳銃。取り回しが楽チンですね。
*上記の画像は www.pof.gov.pk/ から転載されています。
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PK1。パキスタン製で、基本的には115mm(4.5in)バレルのMP5K。
MP5用のスライドストックが特徴的。短いマガジンは15連発仕様です。
傍らでは、専用クリップで2個のマガジンを1つに束ねてありますね。
バレルが短縮化されても、トリガーパックの大きさは不変なのに注意。
フルオート機構はトリガーパックに集約されているのが大きな特徴です。
この部品の交換で、セミオートだけにすることも、その逆も可能です。
Polenar Tactical。冒頭の広告ブランドZENITHは、トルコのMKEKです。
リロード時に、銃左前方のコッキングハンドルを操作していることに注目。
反動はライフルより遥かに軽いものの、使い勝手には癖のある銃ですね。
今まで散々、この銃を褒め称えてきましたが(笑) 大きな欠点もあります。
ボルトキャッチが無いんですね。AR-15系と比べ、G3系が劣る点の筆頭。
設計された時代はともかく、現代であれば、あった方がいい部品です。
G3系のローラーディレードブローバック構造特有の問題は、他にも。
ボルトを閉じた状態で、満タンのマガジンが挿入し辛いのは欠点です。
ボルトのローラーは摩耗するため、隙間ゲージでの確認も欠かせません。
近代連発銃の発展期に生まれたせいもあり、色々と問題もある銃なのです。
製造元であるH&Kですら、後の銃ではこの複雑な構造を止めています。
そんな現代であっても、このMP5は生き続けている時代の生き証人です。
――――――――――
ところで、MP5はライフルを母体に設計されたSMGと解説しましたね。
この銃以降、業界各社が同様の銃を設計するようになったとも言いました。
実は、AR-15やAK、AUGのSMG版もあります。順に見て行きましょう。
*上記の画像は https://www.colt.com/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
モデル名は9mm SMG。10.5in(267mm)バレルと32連マガジン。
ガスチューブは省かれ、ストレートブローバック構造で作動します。
それなりに大型ですが、AR-15譲りの優れた操作性は健在です。
*上記の画像は https://ak.kalashnikovgroup.ru/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
PP-19-01 «Vityaz»。237mm(9.3in)バレルと30連マガジン。
AKSU74ベースですが、こちらも作動方式はストレートブローバック。
銃右側の巨大なセレクターといい、AKのミニチュア版といったところ。
*上記の画像は https://www.steyr-arms.com/ から転載されています。
画像の転載は、転載元の転載規約に従って行ってください。
AUG A3 9mm。350mm(13.8in)バレルと25連マガジン。
ガスチューブが省かれ、ストレートブローバックに再設計されています。
ブルパップ銃なので、マガジン(アダプター付き)はグリップの後ろ。
とまあこんな感じで、アサルトライフル母体のSMGは他にも一杯あります!
専用設計のSMGと比較すると、どうしてもサイズが大きくなりがちですが。
しかし扱い易さを考えると、銃の大きさは必ずしも欠点とは限らないです。
【再び閑話休題】
おや、まだTOP10のうち4位までしか進んでいないようですが(笑)
まあまあ、余り詰め込んでも読み辛いので、少しずつ解説しましょう。
取り敢えず、最重要のショルダーウェポンを消化できたのでこれで良し。
次回からは、大きく視点を転換して拳銃をぼちぼち解説したいと思います。
やっと拳銃か! そんな声がどこかから聞こえてきそうですね(笑)
スイマセン。しかし、銃の基本はショルダーウェポン。それをお忘れなく。
個人的に、ロングガンの性能が軽視されるのはやはり違和感があるのです。
基本的に拳銃はライフルに勝てませんが、小型の携帯性は何よりの長所!
次回は、その辺も掘り下げていきたいですね。では今回はこれでおしまい!
【皆様、長文乱文をここまでお読みいただき、本当にお疲れ様でした】
【皆様の銃器に対する理解が深まり、創作の糧となることを期待して】
【やさしい銃器入門/№02 現代の小火器 TOP10/第2回 終わり】
From: slaughtercult
THANK YOU FOR YOUR READING!
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