鹿島戦~続く70分過ぎの失点

2024年9月14日 鹿島アントラーズ vs サンフレッチェ広島 鹿島サッカースタジアム


 9月も中旬なのに真夏のような酷暑は続き日が傾く中でもじっとりとした湿気は常にまとわりつく。連戦の中のターンオーバーもしないサンフレッチェとしては辛い環境が続く。ただ、その中でも今節はワントップにパシエンシアを初スタメンとして入れてきた。カップ戦での途中出場ではさしたるインパクトは与えることはできなかっただけにこの試合こそで真価が問われるだろう。

 急勾配のついた鹿島サッカースタジアムのスタンドに入る。立地的に厳しいものがあるのでここのアウェイゴール裏はいつも閑散としている。が、時間の経過と共に席が埋まだし、その内会場スタッフに席を詰めるような指示が飛ぶ。後ろを見ると立ち身の人が。ただ、選手が入場してくると前から総立ちになるので結局みんな立たないといけない状態になってしまった。今まで鹿島でここまで集まったことはないだけに驚きでしかなかった。

 鹿島のリズムに乗った応援に負けじとサンフレッチェも応援に声を上げる。お互いの声量がぶつかり合う中でのキックオフ。鹿島が前に蹴り出したボールを早くも奪い前線に繋げていく。ゴール前まで迫った。が、最後は決め切ることはできない。詰めが甘いとため息が漏れるものの出だしとしては悪くない。その勢いは途絶えることなく相手ゴールに向かっていく場面が多く見れるのだった。

 その攻撃を止められカウンターに繋がるも最後はクリアで対処する。ただCKを与えた。前回対戦ではこれでやられている。ここを気をつけないといけない。マークを外すな。そして蹴り出したボール、アウトスイングのボールが入る。鹿島の選手が飛ぶとガツンと叩き込まれ次の瞬間にはゴールに入っていたのだった。

 決められた。何やってるんだ。決めたのは知念。どうもこの知念という選手はサンフレッチェの時に異様に闘志を燃やしてくる。ほぼほぼフリーで打たせてた。前回と同じパターンでの失点。しかもこちらの方が攻めていた展開でリードを許してしまうとこにガクッと項垂れてしまうのだった。

 ところがここで怯むことがなかったのがアウェイゴール裏であった。選手を鼓舞する声援は一層厚みを増していく。まだ試合は始まったばかり。そんなメッセージが込められてるかのようだった。

 そんな熱量が後押しになったか、今度はサンフレッチェにCKが訪れる。キッカーの新井がセットする。だがサンフレッチェのCKは数の割に入らない。なのでそれ程期待してる訳でもないのだがチャントに合わせてタオルマフラーを回す。新井の蹴ったボール。ゴール真正面の密集地。そこに飛び込んだパシエンシア。次の瞬間、ボールはゴールネットに突き刺さっていたのだった。

 決めた、決めた、決めたー!パシエンシア。あれだけ人数の揃ってるエリアで相手に競り勝った。その打点の強さ、タイミングの良さは素晴らしい。PK戦で枠を大きく外すキックをしただけにハズレのイメージが付き纏ったが早速結果を出した。これにより早く試合を振り出しに戻したし、自信も焦る気持ちを持たなくて済む。そういう意味でも貴重なゴールとなるのだった。

 その後もパシエンシアのプレーは光る。前線で受けて巧みなテクニックでボールキープしたことで味方の上がりを促し、サイドに出れば浮き球によって相手を抜き去るプレーが出てきた。一人でボールを収めることができ一人で打開もできる。ワールドクラスのプレーを垣間見せる度にぼくらの胸は熱く燃えたぎるのだった。

 するともう一人の欧州での実績を残した川辺が前に出てくるプレーをしてくる。左サイドスペースに出たボール。3列目から猛ダッシュで追いつき縦へ抜ける。DFが追いつきコースを塞ぐも切り抜け中に入ってくるとゴール前へ横パス。ここに詰めた松本泰志。ゴール真正面にぶち込んで入ったのだった。

 逆転、逆転、逆転。やっと川辺のああいうプレーが見れた。復帰以来バランスを取るプレーばかりしてただけに印象が薄かっただけに物足りなさを感じていたが本来であればこういった攻撃の姿が見たい。この試合は前に出る意識が強い。監督もそこに期待を寄せてるというコメントを出していたがようやくそのイメージに重なるプレーを見せたのだった。

 前半の内に1-2のリード。このリードを保つ為にもハーフタイムでのメンバー変更はなし。このまま勢いを持続させて追加点を入れておきたかった。が、こういうところで決めきれないのがいつものサンフレッチェであった。相手ゴールに近づきはするものの最後の一手でGKに止められる、DFにクリアされる、枠に入らないである。そうこうしていると想定していたパシエンシアの出場時間のリミットを迎えヴィエイラと交代する。するとここから前線でまるでプレスが掛からなくなっていくのだった。

 相手ボールが後ろに下がってもヴィエイラは足が遅いのでプレスに間に合わない。それにより余裕でビルドアップが行われ前線に収められ展開される。段々と後追いのプレーが多くなる。そうやって振り回されてる内に右サイドに侵入されマークにつくも中に通されパスを出され中央に収まると佐々木がブロックに着くも反転されシュート。グラウンダーのシュートがゴール隅にきっちりと決まってしまったのだった。

 同点。守備に人数は揃っていた。それにも関わらず綺麗に崩された。あと10分我慢ができない。どうしてゴール前に人数がいても守りきれないのか不思議でしょうがないのだった。

 ガクッと肩を落とす。だがここで逆に火が着いたかのように再び前を向く。前線へ向け人数を掛ける。ヴィエイラがペナルティエリアで受ける。そこで変なこねくりをしたが為にクリア。ゴール前へクロスが入る。ヴィエイラのヘディング。これもGK早川のセーブ。ヴィエイラ、頑張れという声を上げてしまう。

 そして疲労感の見える加藤に代わって満田が入るとまたしてもヘンテコなパスで相手にカウンターの機会を与える。そこは防いだもののやはり満田は危ない。そう思ってたら今度はカウンターで満田がドリブルで持ち上がる。DF3人を対峙しながらもミドルシュート。枠にはいってたもののこれもGK早川セーブ。最後が割れない。最後、最後の一押し。それがしたいのだがゴール前絶好のチャンスで東がパスを出してクリアされる。ああ、もう何やってるんだ。

 そんな後少しの場面をつくりながらもタイムアップ。カウンターを受けてた場面もあったので負けなくてよかったとも言える。実際に相手が外してくれたことで救われた場面も多くあった。

 それでもやはり70分を超えた辺りから失点してしまう試合コントロールの拙さは感じざるを得ない。ワントップに入ったヴィエイラがかつてのようにボールを収めてくれないというのも大きい。それなら井上を出してがむしゃらに前線のプレスをかけまくる方がよかったという声も多く出た。結果論的に言えばそうであるのだろう。

 最低限の勝ち点1を手に入れた。果たしてこの意味はどうなるのかそれはシーズンを終わってみなければわからないだけにモヤモヤ感を抱えながら渋滞の帰路についていくのだった。

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