安息のない宿泊地

 出張の宿泊先として2日目の漫画喫茶『快活クラブ』での宿泊である。前日はあまりにも夜眠れなかったことによりやはりちゃんとしたベッドのある宿に泊まるべきかと悩んだ。それなのに結局舞い戻ってしまった。やはりその料金の安さには惹かれてしまった。そして前のビジネスホテル『6号ホテル』があまりにも酷かったというトラウマも大きく影響してる。
 とはいえそこには結構究極の選択というものがある。『6号ホテル』はベッドの上で身体を伸ばして眠ることができる。ただ、壁が薄いのか、日中の気温が高いと冷房が効かない。そして水道の水が不味い。なんだか洗剤でも入ってるかのような味がするのだ。歯磨きでうがいをしただけでベッと吐き出してしまう。貯水タンクが汚れてるんだろうか、仕事場の水道水はおいしく、いつもペットボトルに入れて持ち帰ってたくらいだ。
 その点『快活クラブ』はフリードリンクなので飲み物に困ることはない。シャワーも30分300円で利用でき、その部屋が割と広いので日課である体幹トレーニングもすることはできる。ただ夜は眠れない。特に深夜になるに従って物音がやたらと気になるのだった。
 基本的に寝る場所として造られてないだけあって消灯というものがない。なので目の上にタオルを被せて横になるのだが俺の身体では縦が足りない。それだけで眠りにつくのが困難なのにガサゴソと物音が絶えない。深夜なのにスプーンが食器に触れる音がする。こんな時間に何喰ってんだ?そしてうろうろと歩き回る足音も聞こえる。まるでそれは夜になって活動を始めたゴキブリのようだった。
 そういえばネットもできて漫画も読み放題のこの環境、ニートが好むまさにそれだった。夜行性の彼らの生態系を体現したような空間、まるで不健全な淀んだとこなのだった。
 それでもいつの間にか眠りにはついていた。ただすぐに目は覚めたが。そしてその時にはやたらと尿意をもよおす。その癖喉はカラカラだ。トイレのついでにフリードリンクの前に立つがどれも飲みたくはない。単純に水が飲みたいのだが。これは自分でペットボトルに水を汲んで持ってこなければいけない。
 ということは結局どこに泊まっても飲み水がないのは一緒じゃないか。無料とはいえ糖分の多いフリードリンクは必要以上に飲みたくないし。何だか毎日毎日宿泊が身体を休めるというよりサバイバルをしてるようなのだった。

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