カヤFCイロイロ戦~偶発性のゴール

2024/11/28 AFCチャンピオンズリーグ グループステージMD5 カヤFCイロイロ vs サンフレッチェ広島 Rizal Memorial Sports Complex


 もはやグループステージでの勝ち抜けは決まった。それだけに出場機会のない選手主体のチームとなるのは予想できただけにそれはそれで楽しみでもあった。かくしてピッチに現れたのは細谷、松本大弥、越道、中島、井上愛簾、木吹という若手主体だった。そこにマルコス、満田が引っ張るというのが伺える。2人にしてもアピールの場だったが両サイドに位置する茶島、志知のベテランも結果が欲しい試合だった。

 とはいえアウェイのスタジアムは閑散としておりどことなくモチベーションの持っていき方が難しい。少ない観客によるチームを鼓舞するコールはあまりアウェイの圧力を感じない。それどころかその声援の中にはサンフレッチェのコールも聞こえる。それは日本から駆けつけたサポーターだった。なんと、フィリピンにまで行くサポーターがいた。その行動力には敬服する。むしろこういう人がいるだけに無駄にできない試合なのだった。

 ボールはサンフレッチェが支配する。カヤの選手は猛ダッシュでプレスをしてくる。寄せが速い。パスワークに余裕が生まれない。カヤの選手の動きが速い。どうしてこんなにスペースを埋められるのか。ピッチが狭く感じる。あ、ピッチが狭い。だから余裕が感じられる瞬間が訪れないのだった。

 相手の出足が速い為サイドで深くえぐることができると間髪入れずクロスを入れる。が、どういう訳かボールが浮いてしまう。もっと速いライナー性のボールが欲しい。そこにヤキモキしながらも人工芝のせいかもしれない。ただそれらを差し引いてもやはりレギュラー組とはプレーの精度が違うのは認めざるを得ないことだった。

 それでも一応はシュートチャンスまでは漕ぎ着けた。あとは決めるだけ。この決めるだけがどうしてもできない。ゴール前にボールが出ると中央を固められ打っても枠にいけない。そんなもたついた攻撃をいいことにカヤはスローインを縦に放り込んできた。それにより感じられる完全にフリーでサイドを駆け上がる。そして深く抉るとクロス。低い弾道のボールがゴール前を横切る。これに飛び込んだカヤの選手。GK田中もコースを切りにいった身のの逆に転がされるとそのままゴールに入ってしまった。失点。なんてこった。何でもないようなプレーで簡単にやられてしまったことに暗澹たるものを感じるのだった。

 さすがにこれではマズイと判断されたか、ハーフタイムを挟んでメンバー交代がある。新井、中野、松本泰志。主力を3人も入れてしまった。できる限り避けたかった事態だった。だがこの後、更に最悪の事態になる。その交代で入った新井がピッチで倒れ立ち上がれない。タンカで運ばれ柏と交代したもののほんのちょっとの出場で怪我をしてしまったのは不運としか言いようがない。大事なリーグ戦も控えてるだけにこれは大きな痛手だった。

 そんなハプニングがあったもののわずか3選手の入れ替えでチームは前を向けるようになった。左サイドからのクロスが逆サイドに飛ぶと満田がゴール前に放り込む。クリアからのセカンドボールが溢れる。そこに喰らい付いた愛簾。素早くクリアする相手DF。が、これが愛簾に当たりリフレクションがごーるに向かう。GK届かず。そしてゴール隅に転がって行ったのだった。

 おおおおっ、愛簾!プロ初ゴール。間違いなく狙ったものではないだろう。だけどそんなことは関係ない。そもそもがあの位置にいたことにより生まれたゴール。立派なものだった

 同点に気をよくしたチームは前線に雪崩を打つように出て行く。満田がミドルシュートを放つ。枠に行かない。それならばと前線でフリックを入れ泰志の飛び出しを使う。これはオフサイド。あと一歩。あと一歩が届かない。結局最後が決めきれないといういつものパターンが繰り返されもどかしさが積もる。レギュラー組を入れてもゴールが奪えないことに愕然としてしまうのだった。

 その時だった。左サイドサイドで泰志が抜けると早いタイミングでクロス。逆サイドに流れると満田が折り返し。マルコスが詰めるもヒットせずDFのクリア。が、そこに詰めていた愛簾に当たりリフレクションのボールがグラウンダーで走る。一直線の球はそのままゴールへと突き刺さったのだった。

 同点。

 思わぬ形でのゴールであったがゴールはゴールである。だが結局のところカヤのゴールもゴールに向かって行ったが為に起こった。そして愛簾のゴールも同様である。ゴールに向かえば何かしらの偶発性が起こる可能性がある。愛簾のプロ初ゴールにはそんなことを啓発させるものがあった。

 試合はこのまま1-1のドロー。少なくとも負けなくてよかった。そして若き戦力となるべき愛簾が結果を残したのも希望を生んだ。そういう意味では価値ある一戦だったろう。この後すぐに日本に向けて飛び立つチームにとってこれがリーグ戦にいい循環をもたらせることを願うのだった。

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