フジフィルムスーパーカップでの勝利

2025年2月8日 フジフィルムスーパーカップ ヴィッセル神戸 vs サンフレッチェ広島 国立競技場


 開幕前哨戦。それでいて前年度Jリーグ優勝チームと天皇杯優勝チームとの対戦ということで華のある試合である。全国中継されクラブの認知度を高めることにも繋がりここでいいパフォーマンスを出すことは今シーズンを占うにおいても絶好の機会なのだった。

 ところが成績を上げたチームの業で過密日程が控えている。そことの兼ね合いでどういうメンバーを組むかというのは考え所でもある。そして発表されたスタメンでは神戸は主力を控えにしたターンオーバーにし、サンフレッチェはベストメンバーにしてきた。この辺の両者の違いは興味深くもあった。

 ただ、出し惜しみすることなく主力を出してきたサンフレッチェに分があった。神戸の選手は与えられたチャンスを生かすべく高いモチベーションで臨んだものの局面局面でのサンフレッチェのボール捌きに後手に回る。中でも目を引いたのは新加入の田中とジャーメインである。田中は抜け目のないポジショニングで相手の攻撃を詰み、ジャーメインは前線でいいターゲットマンとして機能する。ああ、これは昨シーズンの足りないピースだった。今更ながらいい補強をした。そんな光景に憧憬の念が湧き上がるのだった。

 右サイドでは中野が前を閉じられると中に預けそれにより視線をズラすことによって右サイドのポケットにボールを呼び込む。それでも神戸の寄せも速い。そこで素早くクロスを放つ。混戦のゴール前。トルガイがDFを引き剥がすとジャンピングヘッド。ゴールへ向かったライナー性のボール。ゴールバーに当たりながらもガコンと落ちたのはゴールラインの中だった。

 先制。

 早い先制点。試合の中でもトルガイの技術は光っていた。両チームの中でもその存在感は群を抜いていた。そしてここで決め切る。昨シーズン6名在籍した外国人選手がほぼ退団したもののこの選手だけは手放さなかった理由を見せつけられたかのようだった。ただ、この早い得点は神戸に反撃の狼煙を上げさせたのだった。

 ディフェンスの網を切り裂くパスでゴール前に抜け出しシュート。これはやられたと思ったがGK大迫は横っ飛びでセーブ。おお、大迫。やはり最後の最後に砦があるというのは大きい。この安定感はチームを救う。だがそれ故に第2GKとの差が大きいという問題が生じる。先日韓国人のGKチョン・ミンギの加入の発表があったがそういう背景があったのだろう。

 そんな神戸の反撃があったもののこのまま前半を終え後半を迎えると神戸は汰木を入れてきた。ここから神戸のポゼッションが高まる。どうもこの選手は苦手だ。スピードがありテクニックに優れボールを失わない。神戸の攻撃の比重が高まり守備の時間が多くなる。それでも最後はやらせない。最終ラインがギリギリの寄せで決定機を与えない。3バックの両サイド、塩谷、佐々木は30をとうにすぎているのに未だに健在だ。それ故になかなか代わりの選手を試せない。ここにジレンマを感じる。そんなことを思ってる内にボールを奪うとカウンター一閃、前線へ繰り出す。ジャーメインが駆け抜ける。あと一歩のとこでDFに阻まれるもそこに大きな可能性を感じた。それだけでも相手に対してプレッシャーを与えることができるのだった。

 そんな中神戸は交代で次々に主力を出してくる。大迫、武藤という選手が前線に並ぶのは脅威だ。それに対してサンフレッチェも新加入の菅を入れると左サイドからの展開から中央のジャーメインに入れる。チャージを受けFK。ゴール真正面からのキックは中島が蹴るのだった。このキックは壁に当たり跳ね返るもセカンドボールを回収。そこからの展開でCKを獲得。そしてこれを蹴るのが菅だった。

 これは少々意外な人選という気がしたが左足からのパワーのあるボールが飛ぶ。するとゴール前のゾーンで守る神戸の選手の頭を乗り越える高い跳躍力を見せた荒木が頭に当てる。するとGK新井の届かないスペースへと叩きつけられたのだった。

 決まった、決まった、決まった。荒木のヘッドにより追加点。これにより2点リード。ほぼ勝ったようなものだった。まだ時間は残されてるとはいえ勝敗にそれ程の重きのない試合である為浮かれまくる。そして今度は中村草太がスピードを使った個人技を魅せるともっと長い時間見ていたくなる。そんな贅沢な感覚に浸りながらこのまま0-2で試合を終えるのだった。

 チームの底上げとコンディションを重視した神戸に対してあくまでもチームの完成形を目指したサンフレッチェ。勝敗はそのコンセプトの差によって決まった。ただその中でもジャーメインはワントップとしての存在を見せ田中はセカンドボールの回収を行い菅はCKによりアシストを記録。新加入の選手が結果を残したという収穫もあったのだった。

 単なるシーズン前の前哨戦。だけどポジティブな気分になれたのは大きい。果たしてここからチームはどんなシーズンを過ごしていくのか。いよいよ来週リーグ戦が始まるのだった。

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