前略。──そちらの世界は如何ですか?
………マクレディ。元気かな。
俺? ……俺は君と共に、というより、君の行動を通して、レグナスの生末を見守っていた奴だよ。君の背後霊、に近いかな。
え? 怖いって?? 大丈夫。少なくとも今の俺に君を見(視)る力は失ってしまったから。どうして? って、それは俺と君を繋ぐ道が絶たれてしまったから。
だからこの手紙だって、君の目を通る筈はないってわかってる。分かっていても、どうしても最後に言いたいことがあって書かせてもらう事にしたんだ。
初めて惑星レグナスに降り立った時の事を覚えてるかな。
マクレディは非力で、小さな小柄で赤髪の少女フェステを助けるのに精いっぱいだったね。助けた後君は力尽きて倒れちゃった。
ああそんな事で大丈夫かな、って思ってたら、君は記憶を失っていた。だから俺の事も覚えてない。
でも俺は君が何処から来て、レグナスに降り立ったことを知っているよ。
かつてコモンウェルスと呼ばれ、人と群れる事を嫌う余所者たちが集まっていつしか作った集落、グッドネイバーと呼ばれる町から君は突然飛ばされたことも。
記憶がないながらも君は頑張った。少なくとも俺が知ってるマクレディでみたいに口が悪くて粗野な性格ではなく、フェステや、いつしか自分を取り巻く運命の奔流に頑張ってたのを俺は知ってる。
君は小さい子供、名前はダンカンという子供を残してコモンウェルスにやってきてたものね。自分の子供とフェステをダブらせてたのかもしれないな。
いつしかその奔流は大きな渦となって、君や、エーリンゼ、ティリスといった千年後の未来からやってきた女性たち、冒険の先で出会った師匠と君を呼ぶカーヴェイン──君が師匠、って呼ばれるのをネイトが聞いたらどう思うかな?(笑)──彼を慕うシャルロット、神託の巫女アインレインといった仲間と共に立ち向かっていく姿、俺はハラハラしながらも君なら出来るって思っていたよ。だって君はそのためにその世界に呼ばれたんだから。
君の前に立ちはだかったヴォルディゲン、ユーゴの事もちゃんと見てきた。ティリスがアバリティアシェルに取り込まれ、シェルから彼女を奪還するのにすごい大変な思いをしてきたね。途中アインレインとカーヴェインが王位簒奪を狙ったなんて幽閉された時は見てて「な訳ねーだろ」ってツッコミ入れてたよ。君には聞こえかっただろうけど。
その後、ヨルクがアバリティアとなって対峙した時はつらかったな。俺、ヨルクの事気に入ってたんだよね。ひたむきな性格っていうか、謹厳実直な所とか。父親譲りだったんだろうな。だから彼があんな姿になったのを見たのはつらかった。その後の父親の自決シーンは胸を痛めたよ。
過去に行ったり、未来に行ったり、それによっていろんなイベントを通して見て成長をしていく君を実感するのは楽しかった。だけど君はどこかこの世界の住人とは一歩隔ててる感覚がいつもついて回ってた。それは君がそう思っていたのか、そういう意図があってそう動いてたのかは分からないけど。
だからどちらかというと、君は一歩引いたところで世界を見てるって感じが強かったから、ヴォルディゲン達竜族との戦いでグランヴィル氷界に行ったときの君はなんかいきなり主人公ぽい立ち位置になっててよく喋ってたし、そこは驚いたな。
最後なだけあってちゃんと大活躍してた君を見れたのは本当に嬉しかったよ。ああやっぱり君は選ばれてその世界に行ったんだって。
その後もたくさんの人たちと交流して、高難易度ミッションを軒並みクリアしていくのを見てるのは気持ちよかった。成長してるってすごい実感あったし、それをずっと見届けて居られると思っていた。
だけどそれは叶わなくなった。さっきも言ったように君と俺を繋ぐ道が閉ざされてしまったからね。
だから残念だけど、俺はティリスを救えた後の君の姿を見ることは出来ない。エーリンゼの理想が実現するかも分からない。君が記憶を取り戻せるかもわからないし、君と共に歩んできた主フェステの記憶も取り戻せるか分からないまま。俺は道を閉ざされてしまった。
でも。君はきっと大丈夫って思う。
だって、いつの間にか君の周りは沢山の人で溢れていたから。
フェステ達だけじゃなく、他の冒険者さん達も。
君を呼んでいろんな所へ連れて行ってくれた師匠の事も。
もう一人じゃないんだって思ってる。君にはちゃんとその世界で生きてきた証がある。
だから俺がいなくても。
君はきっと大丈夫。
今も惑星レグナスのどこかで、フェステや他の仲間たちと一緒にいろんな所へ出向く君の姿を想像しつつ、筆をおくことにするよ。
マクレディ。……本名はロバート・ジョセフ・マクレディだったね。
これからの君たちの冒険に幸運があらんことを。