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文法力を身につけるには?

文法の習得は分かっていないことが多いですが、分かっていることもあります。そもそも文法力とは何か、科学的にはどうなのかをご紹介いたします。

この記事を書いている人のプロフィール

【職業】
 英語を教える仕事をしています。教歴25年。

【研究】
 1. 言語と脳の研究で博士号を取得。英語等の外国語や第二言語の習得メカニズムを解明する研究をしています。
 2. 英語教育の開発。学術的知見に基づいた英語運用力の習得、コミュニカティブアプローチ (CLIL, TBLT)、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)、テスティング理論を組み合わせた英語教育の開発。

【資格】
 英検1級、TOEIC4技能満点、Cambridge Council of Europe Level C1


文法には2種類ある

文法には2種類あります。明示的(宣言的)知識としての文法と暗示的(手続き的)知識としての文法です。

明示的知識の文法は多くの人が考えている文法の知識です。例えば、次のことを意味します。

・説明ができる。
・先生の説明を聞いて、理解できる。
・参考書を読んで理解できる。
・理屈で理解している。

明示的知識の文法は容易に身につけることができます。参考書を読んで、理解するのにそれ程多くの時間を必要としません。

しかし、ここで多くの学習者が壁にぶつかります。学んだ文法が使えないといいうことです。多くの学習者が経験していることではないでしょうか。

一方、暗示的知識の文法は「無意識に文法を処理できる」ことです。手続き的知識とも言います。例えば、自転車に乗っているときに自転車の乗り方を考えることなしに運転ができると思います。また、日本語の文法を考えることなしに、日本語を処理できると思います。これが手続き的知識です。

暗示的知識としての文法を習得するのは、年を重ねると難しいことが分かっています。移民の言語習得の研究で、年齢が若いほど文法の習得が上手くいくことが分かっています。

しかし、ここで諦めてはいけません。暗示的知識としての文法の習得は年齢の影響を受けることは事実ですが、英語の「意味にフォーカス」し、かつ「大量」に英語に触れれば暗示的な文法の知識を身につけることは可能です。

脳科学から分かっていること

脳科学の研究で、2つの学習群に自然言語の法則に従った人工言語を学ぶ実験がされました。学習群Aは伝統的な学習アプローチ、つまりその言語「について」学びました。学習群Bではイマージョン環境、つまりその言語を通して「内容やメッセージを理解する」ことを行いました。しばらく学習活動を続けた直後に両群の被験者の脳を計測しました。両群とも、文法に対する脳の反応に違いはありませんでした。その後、しばらくの間、その人工言語に触れない期間を設け、改めて両群の脳を計測をしました。その結果、学習群Aの文法に対する脳の反応が弱くなり、学習群Bの文法に対する脳の反応が、驚くことに、強くなっていることが分かりました。

ここで分かったことは、英語をツールとして使用し、英語で内容やメッセージを理解することで、暗示的知識としての文法力が習得できたことになります。これは自然なことなのかもしれません。言語の基本機能はメッセージを理解し、メッセージを伝えることです。その基本機能を使うことで無意識に処理できるようになるのだと推察されます。しかし、量が必要です。母語と英語学習の時間を比較すると雲泥の差です。計算するとすぐ分かると思います。

明示的知識としての文法学習は必要か?

結論から言うと分かりません。また、年齢や母語により、異なると思います。直感的には明示的文法の知識を身につけておくと、英語の習得のスピードが上がるのではないかと思います。明示的知識としての文法は短時間で容易に身につけることができますので、一気に復習するとよいと思います。


まとめ

明示的(宣言的)知識としての文法と暗示的(手続的)知識としての文法は異なる。前者は説明できる知識で、後者は無意識に処理できることです。前者は容易に身につくが、後者の習得には大量に意味重視のインプットをすることが重要です。

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