#11 時給〇〇
ある雑貨屋にて、こんな会話を聞きました。
ある商品を見ている女性が隣の友人に、
「えー!これ可愛い!(値札を見て)3000円か。私の3時間だね(笑)」
東京都の最低賃金は 1,013円。
これは、1時間の労働に対して最低限支払われるべき対価として定められている金額。
おそらく、雑貨屋にいた女性は
約 1000円(彼女の時給) × 3 時間 = 3000円(雑貨屋の商品の値段)
と考えたと予想できます。
何か欲しいものがあるとき、
小学生なら、お小遣いを貯める・お手伝いをしてお駄賃をもらう。
中学生も同じでしょう。
高校生や大学生になると、自ら働いてお金を稼ぐという手段を得られます。
このように、
「自分の時間と労力を犠牲にしてお金を稼ぐ」ということは全くもって間違いではなく、資本主義社会の中では至極当然のことです。
逆の視点から述べると、
「他人の時間と労力に対しては対価を支払うべきである」と説明できます。
さて、私が参加したサービス・ラーニング。
朝8時から夕方5時頃まで様々な仕事をこなしました。
しかし、サービスラーニングはサービス活動(ボランティア活動)であるので、無償で行われます。時給などはありません。
そうであれば、無償よりもバイト代の出る環境で一定期間働いた方が良い。この考え方はロジックに反しているとは言い難いです。
では、なぜ無償で行われるサービス活動やボランティアが成り立つのか?
1. 価値ある経験ができる
私の場合、インドネシア東部のとある村でホームステイをしながらのサービス活動でした。初めて訪れる国でのホームステイ。旅行ガイドなどには到底載っていないような、本当のローカルスタイルの暮らしを体験しました。
早朝の鶏の鳴き声と、さらにはコーランの放送とで目を覚まし、朝からサンバルと言われるチリソースをふんだんに使用した朝ごはんをいただき、バクソと言われるつみれ汁のようなものをおやつに様々なサービス活動をしました。サービス活動の内容は、英語の先生をしたり、土木作業をしたり、染め物をしたりなど実に多岐にわたる内容です。また、活動の道中で見つけたカカオの実を食べたり、コーヒーチェリーを食べたりなどもしました。
2. 人とのつながり
サービス活動はビジネスの世界ではありません。共にサービス活動を行った仲間はもちろん、ホームステイ先の家庭の方などとも密接に関わることができます。実際に私は、インドネシアでのサービス活動を通じて知り合った香港の大学生に会いに香港に訪れました。そのほかにも WhatsApp や LINE などを通して一年以上経過した今でもつながっている仲間がたくさんいます。
この写真はホストファミリーに向けて書いたものです。このように、人とのつながりを作れるという大きな特徴があります。
3. プロフェッショナルでなくてもOK
仕事や職の場合は、その事柄に対してプロフェッショナルであることが求められます。サッカー選手はサッカーのプロであり、先生は教えるプロです。しかし、サービス活動の場合は必ずしもプロフェッショナルである必要はありません。私のような学生が初めて触る生コンクリートを使ってウェルカムゲートの基礎を作る。私の専攻は言語学であり、建築などの知識は全くと言っていいほどありません。しかし村の方や、職として建築に携わっている方に助けと助言をいただきながら進めました。
ある日、どうしてもコンクリートとレンガの接着がうまくいきませんでした。対価をもらって仕事としてその作業に関わっている場合、どうにかしてでも責任を持って完成させなければいけません。しかし私の場合はあくまでもサービス活動であるので、他のプロの方に頼んで代わりに完成させてもらうという手段をとることができました。プロフェッショナルではなく、サービス活動として従事している大きな特徴ではないでしょうか。
このように誰でも、何にでも、チャレンジができます。今までに触れたことのない世界に手を出せるという良さがあることは間違いありません。
4. 自信
サービス活動やボランティア活動を通して自信がつきます。
一様にそうであるとは言いませんが、コンクリートを練り基礎を作るという工程を未経験者ながら完遂できたことは自信と誇りにつながっています。
5. 学び
実際に現地にいくことで机上でしか知ることのなかった現実を自分の目で見ることができます。例えば、教科書などによく掲載されるゴミ問題に関する写真。あくまでも写真は写真であり、現実を見てその場の空気に触れて、臭いを感じて音を聞いて、こうすることで実際の状況がどういったものかを五感を用いて学ことができます。ゴミの問題のみならず、貧困や過疎化などの現実を現地で体感することで学べることがあると信じています。
さらには、例えば語学なども学びに含まれます。インドネシアの村で英語の通じない環境でホームステイをする。この環境はインドネシア語習得に一番理想的であると言えます。仮にインドネシア語習得を全く不必要なものと考えていても、言葉の通じない環境でどのようにコミュニケーションをとれるのかということを学ぶことが可能です。日本国内でサービス活動を行う場合でも、アジア学院など、グローバルな環境の場所はたくさんあり、そういった場所では英語が共通語として話され、英語力の向上という学びが得られます。
これら以外にも、日々の生活や活動の中での「気付き」を元に学べることは無限にあります。
このように考えると、対価としての賃金こそは無いものの、サービス活動やボランティア活動の有意義さが自ずと感じられるはずです。
時給換算ができない豊かな経験と学びが得られるものがサービス活動(ボランティア活動)です。
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