かっこいいし、愛おしいし、怖くない@瀬戸優 CIRCULATION 感想
動物はカッコよくて、可愛くて、愛おしい。
ペットは飼った事ないけどそう思う。
動物園とか水族館いくのは好きだし、犬を飼うなら柴犬一択だなあとか考えるし、前に住んでた家の周りに住み着いてた猫を見るたびに癒された。
動物は怖い。
目は無機質で、何考えてるかわからない。
熊とか目の前に出てきたと想像すると恐ろしいし、動物園に行ってもこの檻を越えてきたらとか考えてここにいて大丈夫かと不安になる。
動物園の飼育員もたまに被害に遭うし、ライオンを飼う富豪とか意味が分からない。
愛おしいと同時に、どうしても拭い去れない動物への畏怖は人間と動物の間に埋めることのできない溝を生じさせる。
瀬戸優は自分の好きなラジオでその存在を知った。
手の跡がそのまま残った作風を、そのラジオのパーソナリティは筆のタッチの漫画と重ね合わせて、自分でも画像で見て確かにその感じでかっこいいと思った。
基本的に実物大で作られているらしいその作品たちは画像で見ても躍動感があり、魅力的で、実際に見たら迫力ありそうだなあと思っていた。
実物を見たいなあと思った。
瀬戸優の展示会に行った。
フェネックのような小さなものから、クマやライオンなどの大型肉食獣が一堂に会している。
画像で見てたように、手の跡が残った荒々しい作風はかっこよく躍動感がある。
全てを見通しているような目はとても綺麗で、どれも動物としての気高さを感じた。
そして、
怖くない。
彫刻だから当たり前だろと言われるかもしれないが、今までで1番動物に対して距離を近く感じた。
ヌーを捕食するライオンの作品があるが、本物の動物のこんな場面に遭遇したら一目散に逃げるだろう。
この作品を見た時は、何なら隣に寝そべったりしてみたいとさえ思う。
そんな愛おしさが瀬戸優の作品群にはある。
動物を模した立体製作物として剥製などがあるが、瀬戸優の作品のような親しみやすさはない。
その要因は、瀬戸優の作品がキャラクターとして生きている、からだと私は考える。
実物大であったりその躍動感からリアルだ、と混同しがちだが、作風はリアルではない。
瀬戸優が生み出した、ワシによく似たワシという名前のキャラクターとして活き活きした姿が、この愛おしさにつながっている。
彼の作品でも描写される、捕食活動であったりの刹那的な食物連鎖は現実ではグロテスクに思えるものだか、その怖さからは距離を置き、それさえも俯瞰して観れるのはその捕食活動はキャラクター世界内での出来事だからだ。
彼の生み出したキャラクターの捕食だったりの活動は、当然私達の世界に干渉せず、しかし、同じ現実空間に平行して存在する。
ARのようにそこに実在しないが、存在する世界が広がっているのだ。
そしてその世界のキャラクターは実在する動物にかなり近似していて、その重なりが瀬戸優の作品群の魅力だと考えた。
例えば漫画家もキャラクターを生み出すことはできるが、
漫画のキャラクターはメディアを住処とするものだ。
漫画のキャラクターのフィギュアなどもあるが、あくまで現実空間に無理矢理落とし込んだものであり本物ではないのだ。
そう考えると自分の好きなキャラクターをつくり、ムツゴロウのように現実空間で愛でられる彫刻家もとい彫刻という行為はとても夢があるなあ、と感じた。
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