![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41013279/rectangle_large_type_2_0c497bbab9d44e99a67ef8368a4744ff.jpg?width=1200)
とある選手との馴れ初め。
2020年
舞台は6年越しに平和島に戻された。
賞金王決定戦
かく言う、グランプリ
強い若手のレースを見続け、気づいたらそれをふと負かす一人のいぶし銀レーサーと僕の出会いの物語。
あの日会ったあの時から
この人の背中を追い続けてきた。
もう何年も前になる。
ふと、立ち寄った、とある鉄板焼きの店がある。
ひとりでカウンターに座り、焼き物一つにレモンサワーを頼んだ。
たまたまその日に買った舟券の結果が気になってボートレースをみていた。
その結果を元に、翌日の予想をたてていると
「お客さん、ボート好きなの?」
と声がかかる。
ふと顔を上げると、焼き物を焼きながらカウンター越しに僕の顔と画面を交互に見てくる店主の姿があった。
「ええ、まぁ。」
愛想なく答える僕に店主も愛想なくこういった。
「俺も昔舟の仕事してたんだよ。」
びっくりした僕はとっさに
「えっ?ボートレーサーの方ですか?」と聞いてしまった。
「いやいや、違うよ、昔ちょっと仕事しててね。あー、もう客足あがったからちょっと入り口閉めちゃうわ」
と、外の電気が落とされた。
戻って来るなり店主は続けた。
「こう見えて昔ね、宮島競艇で予想屋やってたんだよ。もう何年も前だけど。それから東京きて店を開けた。」
へぇ、この人良くしゃべる。
いつも口なんかきかないのに。
驚きの方が大きかった。
テレビのチャンネルかえる店主
ボートレース好きなら誰もが知る
JLCの無限競艇こと、有料チャンネルが流れ出した。
「ほら。」
その一言で察した。
その方面の人だって。
店主「まだ若いんでしょ?ボート乗ったら。乗ったことあんの?」
僕「ペアボートですか?まだないんですよね」
店主「はー。一回くらい乗ったらいいよ、選手に文句言えなくなるからw」
僕「乗りたいんですけど抽選いつも外れるんですよね」
店主「宮島来たら乗せてやんだけどな~誰か好きな選手いるの?」
僕「そうですね、東京支部ならアワカツ、広島やったら前本選手です。女子なら海野選手もよく買いますよ」
店主「前~本ぉ~?なーんだ前本かぁ、、俺がまだ宮島居たときに会ったなぁ、まだ前本が新鋭乗ってた頃だよ。海野は嫌いだ。買えねぇ」
僕「あっ、すみません」
店主「なんだ~前本なら広島きたらいくらでもペアボート乗せてやんのになぁ。」
僕「アマチュアやりたいんです、ボート、ちょっと乗ってみたくて」
店主「アマチュアじゃなくて、舟やれよ。まだ若いんだから。試験受けてプロになったらいーんじゃない」
僕「将来決めて大学入っちゃったんで」
店主「んなの関係ねぇよ、ボートレーサーなんて期限付きでしかなれねぇんだから、なれるうちになったが花ってもん」
僕「そうですか、僕でもなれますかね」
そんなこんなで話が弾み、
・昔の競艇は進入から駆け引き。待機行動でベテランが若手の選手の舟を手で押しやるとかよくあった
・2連単しかないからなんでも1-2。
1-2でしか買わせられんよ
・予想屋ってのは来るのを狙っちゃいけない。なんでこないか。なんで着に入らないか、サラリーマンレーサーだから、しょうりつがあるから、出走稼がなきゃいけないから
・準優に乗りたくない人がいる
等々、裏話諸々舟券予想から当時の話ってものを色々聞いた。
店主「毎年宮島に、いって顔出してきてさぁ、みんな会うとそのうち行きます~なんていうけど、来てくれた試しなんかねぇな」
その日はそれで終わった。
ある日、応援してる選手が平和島でレースがあった。
大好きだったから、差し入れと手紙を入れた。
ほんとにふと、封筒に自分の名前、住所、電話番号を書いた。当たり前の自分の所在である。
手紙の内容は簡単に書くと
・こんなレースするあなたがかっこいい
・応援してます
・宮島にいた予想屋の方が東京でお店やってます。よかったら顔出してあげてください。店主待ってますよ。
と、ちょっとお節介もかいた。
なんとなくだけど。
こないかなぁ、と思って最終日終わりに店に電話をかけて
「ちょっと、待ちたい人がいるんですが、長居しても良いですか?」
と言うたらokの一つ返事。
その日は17時くらいから23時過ぎまで店内でチビチビ酒を飲んだけど待ち人は来るわけ無かった。
当たり前さ。
店主「誰待ってんの?」
僕「応援してる人です」
店主「はっはっは、そんな暇じゃねぇよ、SG出てんだぜ。しかも知らん人に誘われてくるわけねー。」
僕「ですよねー。」
その日は何事もなく、出してもらった焼き物で晩飯を済ませた。
寝ておきて翌日。
学校に行き、帰る。
何の変哲もない1日
ふとケータイを見ていたとき電話がなかった。
んー、誰だ?知らん番号
僕「もしもし」
店「もしもし、こちら焼き物の店です。」
僕「あー、昨日はどうも」
店「よねおさん、でいいのかな合ってます?」
僕「ええ。忘れ物ですか?」
店「前本選手、来店されてます。いかがされますか?」
僕「…」
一瞬。時が止まった気がした。
え?なんて?前本選手がきてる?
僕「いいい今からいきまます。急いで、5分以内には。到着します」
店「わかりました」
店に着いて入る
店主「いらっしゃい」
前本さん「ちわす。」
僕「あっ、あっ、えっ、こんにちは。あの、よねおと申します。あの、あの、 …」
店主「隣座ったら。」
前本さん「ここ座ったらええです」
僕「ししししつれいします。」
店の方「なににされます?」
僕「あ、じじじゃあ、前本さんと同じものを。あと、烏龍茶で。」
しばらくの沈黙の後、口を開いたのは店主だった。
店主「手紙書いたんだろ?なんて書いたの?」
僕「あ、や、その、応援してますー、てのと、店主さんがお店やられてるので、近ければ良ければ。という。」
店主「へー、そんなんできたの」
前本さん「こっちで店やってるの知らんかったですから。せっかくなんで。」
店主「へぇ、忙しいんじゃねぇのか。会うのなんて15年だか20年ぶりよ。」
前本さん「まだ、番号変わってないです?前にもらった気がしたんですけど」
店主「あー、前本の番号これだろ?」
前本さん「あーそうですそうです。店主さんの番号これですか?090…」
店主「俺のはこれ」
前本さん「あー、あったあった。登録してましたわ。また来るときはかけないと。」
店主「おい、なんかほら、サインとか、話聞くとか」
僕「あっ、あっ、あの、えっ、、お疲れ様でした。」
前本さん「おー、おつかれ。なんか、パッとしんかったね~エンジン出てなかったわ~」
僕「あっ、あっ、そうですか。かっこよかったです。」
前本さん「はは、ありがとう。今なにしとるんですか、学生?ってかいてたけど」
僕「あっそうです、どこどこにある大学に行ってて…」
前本さん「へぇ、そういうのあれなんすか、試験とかキツいんですか」
僕「まぁ、そうですね、色々あります」
前本さん「そーですか。なんか聞きたいことある?何でも聞いたらええですよ。」
他愛もない話から
最近のレースの話までいろいろきいた。
サインもらうところがなくて、たまたまひっさげてたヘルメットに描いてもらった。
そんなこんなでお開きに。
前本さん「じゃあ、またきます。」
僕「あ、ありがとうございました。」
店主「毎度~」
そんなこんなで1時間ほど話したろうか。
駅まで前本さん送っていきました。
前本さん「じゃあまた。気をつけて」
僕「あっはい、前本さんも気をつけて。今日はありがとうございます。」
前本さん「じゃ。」
そんなこんなで激動の1日は終わる。
1週間くらい地に足が着かなかった。
現実?夢?
そんなこんなで普通の生活にもどってしばらくしたころ
半年位して
また知らない番号から電話。
誰?
僕「もしもし?」
「あー、俺俺。前本です~」
僕「え?!あ、はい、こんにちは!」
前本さん「あーそういや、アマチュアやりたいとか行ってたっけ。」
僕「あっ、そうです。ちょうどキリがよかったんで、見学と入会申し込んだところです」
前本さん「あっ、そうなん。あれや、ちょうどええから、必要なもんあったら連絡ちょうだい、送るから。」
僕「え?」
前本さん「レース場で服とかもらってもいらないんですわ。毎年カッパもらえるし。どーせ捨てるからあげる」
僕「えええええ?!マジですか?じゃあ、ありがたく。」
前本さん「試験ちかいんやろ?どう?」
僕「ぼちぼちです、頑張ります」
前本さん「あぁ、そう、がんばってな。応援しとる」
電話はそれでおしまい。
馴れ初めはそんなかんじ。
その後は東京来たときに一緒にご飯食べたりとか。
家族ぐるみの付き合いもさせていただきました。
それから何年という月日が流れただろうか。
レースをすると、やはり結構イン屋ではないけどイン取りする姿もあり、強引に行くレースも多少あるし、罵声も飛ぶ。
誰だって好きな選手は居るし、
もちろん、前本さんだってその誰かの好きな選手にキツいレースを強いることもある。
もちろん、罵声も浴びる。
それでも、第一線諦めない姿勢でレースをする、そんなおじさんが好きなんです。
ふとある日聞いた
僕「なんか目標とかありますか?」
そしたらそのおじさんはキラキラした目でこういう。
「まだまだ、走れる限り、とれるチャンスがあるなら賞金王欲しいね。」
自分が40,50になるときにそんなにがむしゃらに夢を追い続けることができるだろうか?と思ってしまった。
それが追いかけ続ける理由。
今ではすっかり虜で、
前本さんのスポンサーとして活動する日々。
応援。レースみて、応援。
こんな時だからこそ、頑張る前本さん見て、自分も励みになる。
前本さんのレースの見所や醍醐味ってなんだと思う?
僕はこう答える
【1周2マーク】
前本さんのレース感は素晴らしく、1周2マークに差し掛かるとき必ず
「行かせてから差す」が常套。
これが入るとおおう、ってなるのよ。
1、2マーク、競ってる若手はそのまま握りあって2着狙ってるかもだけど
最外に持ち出した前本さん見てごらんよ
行かせて差す、ほら、決まったでしょ、
あれは経験とレース感がないと出来なくて
僕もアマチュアやってるからわかるけど
行かせてさすって結構捨て身
だって、引き波一つ越えるからね…結構しんどいよ。
ま、そんなこんなはいいとして。
みんな好きな選手いるのよ、
なんですきなの?
僕がすきな理由は伝わったかしら。
今節は平和島ということもあり、
グランプリ、もちろん応援しております。
横断幕掲載しておりますので、よかったら見てってください。
【MYFC】前本泰和ファンクラブ
というのの頭文字とって、前本さん公認でファンクラブやってます。
ラッキーカラーの黄色に、MYFCのボックスロゴ。
興味ある方は連絡くださいね。
良かったら記事やTwitterにイイねください。
自分より10個も20個も若い人たちの中でなおも最前線で走り、輝き続ける。
「カッコイい」
その一言に尽きる。
尚も僕は応援し続ける。
僕も知らず知らずのうちに励まされている。
頑張れ、前本さん。
#前本泰和
#平和島グランプリ
#MYFC