AI時代に起業する意義~日本をイノベーションする~
皆さん、こんにちは。本日は「AI時代における日本のイノベーション」というテーマでお話しさせていただきます。
私たちは今、大きな転換点に立っています。しかし、その転換点に立っているという実感を、皆さんはどれくらい持っているでしょうか?
私は、日常生活のちょっとしたことから、日本の現状を痛感しています。子供の頃から食べているカントリーマームが年々小さくなっていく。サイゼリアのミラノ風ドリアの器の底が、いつの間にか浅くなっている。こういった些細な変化の積み重ねが、私たちの生活の質を少しずつ、しかし確実に低下させているのです。
日本は「課題先進国」と呼ばれます。超高齢化社会、資源不足、都市の過密化と地方の過疎化—これらは世界が数十年後に直面するであろう問題です。しかし、私たちはすでにその真っ只中にいるのです。
私自身、20歳の若手起業家として、「失われた30年」しか知らない世代です。経済成長を実感したことがありません。最初は、大企業に就職してたくさん稼げば、この閉塞感から抜け出せるのではないかと考えていました。しかし、今は違います。
日本を変えられるのは、私たち若い世代しかいないのです。それも、単に若いだけではありません。生成AIを活用できる若い人材こそが、日本の未来を切り開く鍵を握っています。
しかし、現状はどうでしょうか。生成AIを本当の意味で活用できている若者は、まだまだ少数派です。多くの人は、レポート作成にちょっとだけChatGPTを使う程度に留まっています。これでは不十分なのです。
だからこそ、私たちがやるしかないのです。AIという強力なツールを手に、日本の課題に正面から向き合い、解決策を見出していく。それが私たちの世代に課せられた使命だと信じています。
AIは、単なる効率化のためのものではありません。私たちの創造力を増幅し、これまで解決できなかった課題に新たなアプローチを提供してくれるのです。日本は今、AI時代に突入し、世界のトップランナーになれるポテンシャルを秘めています。
これから、AIがどのように日本をイノベーションし、私たち若い世代がどのようにそれを牽引していけるのか、具体的にお話ししていきたいと思います。皆さん、一緒に日本の未来を創造していきましょう。
日本がAI時代にイノベーションを起こせる理由は、実はたくさんあります。それを3つの観点からお話しします。
1. AIに対する積極的な姿勢
皆さんご存知の通り、日本人はテクノロジーに対して非常にオープンです。実際、ChatGPTの利用者数は世界第3位。これは単なる数字ではありません。日本全体がAIを受け入れ、活用しようとしている証なのです。
他国では失業の懸念からAI導入に慎重な面がありますが、日本では高齢化による労働力不足が深刻です。AIは我々にとって脅威ではなく、むしろ救世主となる可能性を秘めているのです。
2. 人材と環境の優位性
円安の影響もあり、現在日本はG7の中で人件費が比較的安い国となっています。これは一見デメリットに思えるかもしれません。しかし、AIの時代においては強みになり得るのです。
なぜなら、高度なAI人材を世界中から呼び込み、雇用しやすい環境が整っているからです。さらに、日本には世界的な売上を誇る大企業が多数存在し、その多くが豊富な内部留保を持っています。AIやDXへの投資余地が十分にあるのです。
3. 政府の積極的な取り組み
日本政府はAI時代に向けて着々と準備を進めています。例えば:
GPU増強のための予算増額(前年比44%増)
AIセーフティーインスティテュートの設立
広島AIプロセスの提唱
国内LLM開発プロジェクト「GENIAC」の推進
これらの取り組みは、日本がAI分野でグローバルリーダーシップを発揮しようとしている証左です。
実際、OpenAIがアジア初の拠点を日本に設置するなど、世界のAI企業が日本市場に注目し始めています。これは、日本のAIポテンシャルが世界に認められてきた証でもあるのです。
しかし、これらの要素だけでは不十分です。真の革新は、これらの強みを最大限に活かし、日本独自の方法でAIを活用することから生まれるのです。そして、その鍵を握っているのが、私たち若い世代なのです。
ここからは、日本人特有の強みとAI活用の可能性についてお話しします。私たちには、AIの時代に輝く独自の才能があるのです。
応用力と活用力:日本の真の強み
日本人は「応用力」に優れていると言われます。これは、AI時代において極めて重要な能力です。
尊敬する元木大介さんは、世界のAI開発の流れをこう表現しています:
米国が革新的なLLMを開発
日本のAI専門家がそれを試し、発信
海外スタートアップがアプリケーション化
日本人がそれを使いこなし、新たなユースケースを生み出す
米国が2〜4を統合した新たなLLMを開発
この循環の中で、日本は「活用する」という重要な役割を担っているのです。私たちは、新しい技術を受け入れ、それを日常生活や業務に溶け込ませる能力に長けています。
テーラリング能力:AIを自分たちのものにする
さらに、日本人には優れた「テーラリング能力」があります。これは、AIツールを自分たちのニーズに合わせてカスタマイズし、最適化する能力のことです。
実際、日本人のAI活用方法は、米国のLLMベンダーがプロダクト開発の参考にするほど洗練されているという指摘もあります。私たちは単にAIを使うのではなく、AIと共創しているのです。
イノベーションの新しい形
従来、イノベーションというと「発明(インベンション)」を思い浮かべがちでした。しかし、AIの時代では、既存の技術を新しい方法で組み合わせたり、異なる文脈で活用したりする「イノベーション」も同様に重要です。
日本は、このタイプのイノベーションに秀でています。私たちは、AIを使って日本固有の問題を解決するだけでなく、その解決策を世界に発信することができるのです。
集団的知恵の力
日本の強みの一つに、新しい知識や技術を社会全体で急速に共有し、改善していく能力があります。AIの活用においても、この「集団的知恵」が大きな役割を果たすでしょう。
個人のAI活用事例が瞬く間に広まり、それぞれが改良を加え、さらに優れた使い方が生み出されていく。このプロセスこそが、日本型のAIイノベーションなのです。
私たち若い世代には、この日本の強みを最大限に活かし、AIと共に新しい価値を創造していく使命があります。次世代の起業家として、私たちがこの流れを加速させる存在になれると信じています。
ここまで、日本のAI時代における可能性と強みについてお話ししてきました。では、私たち若手起業家は、この状況をどのように活かし、日本をイノベーションしていけるのでしょうか。ここで、私のビジョンを共有させていただきます。
1. 「課題解決先進国」としての日本
日本は「課題先進国」と呼ばれています。これは、世界が将来直面する問題を、我々が先に経験しているということです。しかし、私はこれを「課題解決先進国」に変えていきたいと考えています。
AIを活用することで、高齢化、資源不足、都市の過密化といった問題に革新的な解決策を見出すことができるはずです。そして、その解決策を世界に発信することで、日本は再び世界をリードする国になれるのです。
2. AIとの共創社会の実現
私が目指すのは、人間とAIが協調して新しい価値を生み出す「共創社会」です。これは、単にAIを道具として使うのではありません。AIをパートナーとして捉え、人間の創造性とAIの処理能力を掛け合わせることで、これまで想像もできなかったイノベーションを生み出すのです。
例えば、AIを活用して日本の伝統工芸に新しい息吹を吹き込むことができるかもしれません。または、AIと連携した新しい教育システムを構築し、個々人の能力を最大限に引き出す社会を作ることもできるでしょう。
3. グローバルとローカルの融合
AIは、グローバルな知識とローカルな知恵を融合させる力を持っています。私たちは、世界中の最新の知見を瞬時に取り入れつつ、日本固有の文化や価値観を活かしたソリューションを生み出すことができます。
これは、単なる「グローカル」戦略ではありません。AIを介して、日本の地方の知恵を世界に発信し、逆に世界の知恵を日本の隅々にまで届けることができるのです。
4. 持続可能な経済成長モデルの創出
AIを活用することで、経済成長と持続可能性の両立を図ることができます。例えば、AIによる効率化で生まれた時間を、人間ならではの創造的な活動に充てることができます。また、AIを活用した精密な資源管理により、環境負荷を抑えつつ生産性を向上させることも可能です。
私たちの世代は、GDPの成長だけでなく、幸福度や生活の質の向上を含めた新しい「豊かさ」の指標を作り出し、それを世界に提案していくべきだと考えています。
5. 次世代の人材育成
最後に、私たちには次の世代を育てる責任があります。AIリテラシーを高めるだけでなく、AIと共存しながら自分の創造性を発揮できる人材を育成することが重要です。
学校教育にAIを積極的に取り入れ、AIを使いこなす力と同時に、AIにはない人間特有の能力を伸ばすカリキュラムを開発していきたいと考えています。
これらのビジョンは、一朝一夕には実現できません。しかし、私たち若い世代が主体的に行動を起こし、AIという強力なツールを味方につけることで、必ず実現できると信じています。日本の未来は、私たちの手の中にあるのです。
6. 日本のAI情報ハブになる
私たちが直面している大きな課題の一つは、言語の壁です。海外で開発される最新のAI技術やツールが、日本に伝わるのに時間がかかっています。しかし、この課題は同時に大きなチャンスでもあるのです。
私のビジョンの一つは、日本をAI情報のハブにすることです。具体的には:
迅速な情報伝達: 海外の最新生成AIや革新的なツールについて、リアルタイムで日本に発信します。単なる翻訳ではなく、日本の文脈に合わせた解説や活用例を提供します。
バイリンガルコミュニティの構築: 日本語と英語(または他の言語)に堪能なAI専門家のコミュニティを作ります。このコミュニティが、海外の最新情報を素早くキャッチし、日本語で発信する役割を果たします。
日本発のAI活用事例の世界発信: 日本独自のAI活用法や事例を英語で世界に発信します。日本の「活用力」「テーラリング能力」を世界に示し、グローバルなAI開発の循環に貢献します。
クロスカルチャーAIイノベーション: 海外のAI技術と日本の文化や業務慣行を融合させた新しいソリューションを生み出します。これにより、日本独自の付加価値を持つAIイノベーションを創出します。
オンラインプラットフォームの構築: 最新のAI情報、活用事例、ディスカッションを集約するオンラインプラットフォームを作ります。このプラットフォームが、日本のAIコミュニティの中心地となり、情報交換と協働を促進します。
このビジョンを実現することで、日本は単にAI技術を輸入する国ではなく、世界のAIイノベーションに積極的に貢献する国になれるでしょう。そして、私たち若手起業家が、この変革の最前線に立つのです。
皆さん、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。最後に、私たちが今すぐにできること、そしてすべきことについてお話しします。
1. AI活用の日常化
まず何より大切なのは、AI を日常的に活用する習慣を身につけることです。どんなに小さなタスクでも、AI で効率化できないか考えてみましょう。失敗を恐れず、むしろそこから学ぶという姿勢で取り組みましょう。
2. 継続的な学習と情報収集
AI 技術は日々進化しています。定期的に最新情報をチェックし、新しいツールや活用法を学び続けることが重要です。私の X アカウント(@wasedaai_taisa)などを活用し、常に最新情報にアクセスしてください。
3. 日本の強みを活かす
日本には「応用力」「活用力」「テーラリング能力」という強みがあります。これらを意識的に磨き、活かしていきましょう。海外で生まれた新しい AI ツールを日本の文脈に合わせてカスタマイズしたり、日本の伝統的な問題解決手法と AI を組み合わせたりすることで、世界に誇れる日本発のイノベーションを生み出せるはずです。
4. 知識の共有とコミュニティへの参加
学んだことを周りの人と共有しましょう。職場の同僚、友人、家族に AI の可能性を伝え、一緒に活用方法を考えてみてください。また、AI に関する勉強会やオンラインコミュニティに積極的に参加し、知識と経験を交換しましょう。
5. 具体的な業務改善の実践
自分の仕事や日常生活の中で、AI を使って具体的に何かを改善してみましょう。例えば、定型文書の作成を AI に任せる、データ分析に AI を活用するなど、小さなことから始めてみてください。そして、その成果を周りの人と共有しましょう。
6. AI倫理への意識
AI の活用を進める一方で、その倫理的な側面にも注意を払いましょう。プライバシー、公平性、透明性など、AI 使用に伴う課題について考え、議論する機会を持ちましょう。
7. グローバルな視点と橋渡し役
可能な限り、海外の AI 動向にも注目しましょう。英語や他の言語でのリソースにチャレンジし、得た情報を日本語で共有してください。逆に、日本独自の AI 活用事例を英語で発信することも重要です。
8. AI活用の格差解消への貢献
周りに AI をまだ活用していない人がいれば、その人たちにも分かりやすく AI の可能性を伝え、使い方をサポートしてください。一人一人が「AI 伝道師」となることで、日本全体の AI リテラシーを向上させることができます。
9. 行動を起こす勇気を持つ
最後に、そして最も重要なのは、行動を起こす勇気を持つことです。アイデアを持っているだけでは何も変わりません。たとえ小さなことでも、まず一歩を踏み出すことが大切です。
新しいプロジェクトを始める、AI を使った新しいビジネスモデルを考案する、または既存の業務に AI を導入してみる。どんなことでも構いません。重要なのは、実際に動き出すことです。失敗を恐れず、チャレンジする精神を持ちましょう。
皆さん一人一人が、AI 時代における日本のイノベーションの担い手です。今こそ、その力を発揮する時です。AI と共に、より良い未来を創造していきましょう。共に、日本を「AI 活用先進国」に変えていく挑戦に立ち向かいましょう。
ご清聴ありがとうございました。
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