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『カウンタック』
「あれは未だに謎だよな」同窓会で何十年ぶりかに会ったケンケンが言うのを、周りの連中も頷きながら聞いている。
小学生の頃、団地の空き地で野球をやるのが日課だった。
あの日は雲一つなく、気持ち悪いぐらい青が強い空だった。
水谷クンが打った黄色いゴムボールが高々と上がった。
セカンドのケンケンが「オーライ」と構える。
・・・・・
ボールはいつまでたっても落ちて来なかった。
青空の一点に張り付いたように、黄色いボールが空中で停まっていた。
余りの出来事にみんな茫然と固まっていると、
「カウンタックだ!」
遅れてきた新田クンが自転車をドリフトして停めながら叫んだ。
当時は空前の「スーパーカーブーム」。
全員が道路の方に顔を向けた。「どこどこ!?」
ぽーん
振り返ると、ボールが地面でバウンドしていた。
「あれは何だったんだろうな? 久しぶりに思い出したよ。考えるに---」
水谷クンが続きを話そうとしたその時、
「花田さんだ!」と新田クンが叫んだ。
クラスのマドンナ的存在だった、花田美知子が遅れてやってきたのだ。
みんなの目線がそちらに集まり、またしてもこの話はうやむやになった。