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『異世界でも本屋のバイトだが、アマゾネスのせいで潰れそうだ』第15回
俺のあまりにも浮世離れした肉体美を見て、ぼっちの冒険者たちが集まり出した。ワラにすがるなクソ虫ども。これだから俺は辞めたんだ、ダンジョン潜り稼業を。
「金払うから仲間に入れてくれ」どいつもこいつも使えそうもなかったが、一応は順番に自己紹介をさせてみた。
「お、オレは威嚇士のマックスだ」褐色の肌と三白眼。俺と背丈の変わらない大男が踏ん反り返って自己紹介を始めた。一見使えそうな感じだ。
「い、いかくし? 何だそりゃ?」
「敵と出会った時、お、オレは大声で相手を威嚇する」
「…で?」
「相手が委縮するから、後は、あ、アンタらの出番だ」
つまりは見掛け倒しってことか。威嚇士なんてジョブは初めて聞いたが。俺は首を振って次の奴に自己紹介を促した。
「私は、ヤカン亭の流派を受け継ぐ、催眠誘導士の」
「ちょっと待った。その、催眠誘導士ってのは職業なのか? 魔法使いの一種なのか?」
青白い顔をした横ワケ眼鏡の男は顔を真っ赤にして怒り出した。「アンタ失礼だな! 由緒ある催眠誘導士を知らないなんて! 魔法などと一緒にするな! これは伝統を重んじた話芸である!」
では一席、と眼鏡のズレを直してから、痩せた男は話し始めた。これが内容といい、抑揚のない喋り方といい、確かに強烈に睡魔を誘う。危うく眠りかけた俺はヤマダに起こされた。
「あの、絶対実践向きじゃないです、彼のジョブは」
全くヤマダの言う通りだ。言葉の通じないモンスター相手に、1ミリの役にも立たないだろうが。
「どうする、オーディション続けるか? それともこのまま2人で行くか?」
「今日は出鼻をくじかれました。出直しましょう」切り替えの早いヤマダは、さっさと俺を置いて来た道を戻り始めた。
「オレの名はジョニー。人呼んで『クソ投げのジョニー』だ!」そう叫ぶ太ったオークの腹に、俺は膝蹴りを入れた。
体をくの字に折ったオークを、腹いせにダブルアーム・スープレックスで投げといてやった。砂利道に背中から落ちたクソ野郎は悶絶。これがオーディション終了の合図だ。消え失せろ、ウジ虫ども。