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経験から学ぶ力を引き出す!部下育成に役立つ経験学習とは

部下の成長をどのようにサポートするか、日々悩むの方へ。単に知識を教えるだけでなく、実際の経験を通じて成長を促す「経験学習」を取り入れてみませんか?経験学習とは、部下が実際の業務を経験し、その経験を振り返り、学びを得て新たな行動に活かすサイクルを繰り返す方法です。

具体的には、まず部下に仕事を任せ、実際にやってみてもらう。そして、その結果や行動について一緒に振り返り、何がうまくいったのか、改善できる点は何かを内省します。さらに、得られた学びを次の仕事に応用し、再び実践を通じて成長する機会を与えるのです。

経験学習の良さは、机上の知識を「実践的な知識」に変えるところにあります。部下は自分で考え、行動し、失敗から学ぶことで自ら成長しようとする意識が芽生えます。また、経験を通じて得た学びは記憶に残りやすく、次の行動への意欲も引き出しやすくなるため、業務のパフォーマンス向上にもつながります。

育成に悩んでいる方こそ、ぜひ経験学習を取り入れてみてください。部下が自主的に学び成長する姿を見られるようになり、チームの力もさらに強化されるでしょう。


経験学習とは

経験学習とは、実際の経験から学びを得て、その経験を振り返り、考察し、新たな行動につなげるプロセスのことを指します。一般的に、デイヴィッド・コルブの「経験学習モデル」が知られており、このモデルでは、学びのプロセスを以下の4つの段階で説明しています。

1. 具体的経験(Concrete Experience)

まず実際の経験を通して学びの対象に触れる段階です。この経験は日常の出来事や特別な状況など、実際に体験したことが基になります。

・具体例

部下が新しいプロジェクトを任されたり、会議でのプレゼンテーションを担当したりすることがこれにあたります。ここでのポイントは、実際の業務や課題に主体的に関わり、その中で現実の状況を体験することです。具体的な業務や新たな挑戦に直面することで、学びのきっかけが生まれます。

2. 内省的観察(Reflective Observation)

次に、その経験を振り返り、何が起きたのか、自分がどう感じたのかを内省する段階です。このときに、具体的な事実だけでなく、感情や考えも含めて考察することが大切です。

・具体例

この段階では、経験した内容や結果を冷静に見直し、何がうまくいったか、あるいは何がうまくいかなかったかを観察します。「なぜプロジェクトの進行がスムーズにいかなかったのか?」や「プレゼンで相手の反応がいまいちだったのはどうしてか?」といった問いかけをしながら、経験の意味や自身の反応を内省します。自分の行動や感情を整理し、どうすれば改善できるかを考えることが大切です。


3. 抽象的概念化(Abstract Conceptualization)

振り返った経験から、何を学んだか、どのような原則や理論が見出せるかを考える段階です。この段階では、自分の経験をもとに知識や仮説、原理を形成します。

・具体例

具体的な経験や観察から得られた教訓や気づきを、理論や仮説としてまとめます。「スケジュール管理が不十分だと、プロジェクトが遅れる可能性が高くなる」や「聞き手の反応を意識しながら話すと、プレゼンの効果が上がる」といった形で、経験を通して得た学びを抽象化し、次に活かせる知識やルールにします。


4. 積極的実験(Active Experimentation)

学んだことを活かして新しい行動や試みを行い、さらに新しい経験を得る段階です。ここで得られた新しい経験が、次の学習サイクルのスタートとなります。

・具体例

得た教訓や知識をもとに、再び新たな経験に挑戦します。「次のプロジェクトではスケジュールを見直し、進行状況を細かくチェックしよう」や「次のプレゼンでは、相手の反応を見ながら話すように工夫しよう」といった具体的な行動計画を立て、実践します。この新たな行動が次の「具体的経験」となり、経験学習のサイクルが続いていきます。

この4つの段階を循環的に進むことで、単なる体験ではなく、深い学びや成長が促進されます。経験学習は、仕事や日常生活、スポーツ、教育の場など、さまざまな場面で実践されており、実体験から得られる知識やスキルを強化するのに効果的です。

このサイクルを繰り返すことで、学びが深まり、経験から得た知識やスキルが実践力として定着していきます。コルブのモデルでは、単に経験するだけでなく、振り返り、学びを抽象化し、行動に移すプロセスが、学びを本質的に成長に結びつけるとされています。

経験学習を促進する方法

経験学習を効果的に促進するためには、部下に対して以下のような接し方を心がけると良いでしょう。

  1. 具体的な目標を設定する

まず、部下が取り組む仕事や課題に対して、具体的で達成可能な目標を設定しましょう。目標がはっきりしていると、経験の中で何を学ぶべきかが明確になり、振り返りの際にも効果的な内省が行えます。

2. サポートしつつも自律性を尊重する

経験学習では、部下が自ら考えて行動することが重要です。必要なときに助言を与えたりサポートする一方で、過度に指示や干渉をせず、自分で判断し進められるように接しましょう。失敗も含めて学びの機会として見守る姿勢が大切です。

3. 定期的なフィードバックを行う

定期的にフィードバックを提供し、部下の成長や改善点を具体的に伝えます。ここで重要なのは、フィードバックを一方的な評価にせず、部下が自分の経験を内省する助けになるような問いかけを交えることです。たとえば、「今回の経験で何を学んだか?」や「次はどう改善できると思うか?」といった質問が効果的です。


4. 振り返りの時間を確保する

忙しい中でも、部下が経験を内省できるように振り返りの時間を設けましょう。具体的には、業務後にミーティングを設定したり、簡単な振り返りシートを使うのも良い方法です。この時間があることで、経験からの学びが深まり、次に活かしやすくなります。


5. 積極的な挑戦を奨励する

新しいことに挑戦する場を積極的に提供し、部下がさまざまな経験を積めるようにしましょう。適度なチャレンジは、成長の大きな原動力となります。部下が失敗を恐れずに挑戦できるよう、「失敗も学びになる」というメッセージを伝えることが重要です。


6. 学びを共有する機会を作る

経験学習で得た知見を他のメンバーと共有する場を設けると、チーム全体の学びも促進されます。例えば、定例会で学んだことを共有する時間をとると、部下が学びをさらに深め、周囲の刺激にもなります。


7. ポジティブな姿勢で接する

部下が自己成長に前向きに取り組めるよう、ポジティブな姿勢で接することが大切です。彼らが経験を通して学んだことを承認し、小さな成果でもしっかりと認めることで、成長意欲を高めることができます。

これらの接し方を心がけることで、部下が自らの経験から学び、成長していく力を引き出しやすくなります。

経験学習を促進するコミュニケーション例

経験学習を促進するために、上司が部下とどのようにコミュニケーションをとると効果的か、以下の例で示します。

1. 具体的経験を提供する段階

上司: 「今回のプロジェクト、あなたにリードしてもらいたいと思っています。進行の管理や、チームメンバーのサポートをお願いしたいのですが、どうでしょうか?」

部下: 「はい、ぜひ挑戦してみたいです。大きな役割ですが、全力で取り組みます!」

ポイント: 上司が、部下が成長するための具体的な仕事や挑戦を提供し、経験の機会を与えています。

2. 内省的観察を促す段階

上司: 「プロジェクトの進行、ここまでよく頑張ってくれましたね。一度ここで、何がうまくいったか、課題は何だったかを振り返ってみましょうか?」

部下: 「そうですね、全体的には順調でしたが、スケジュールが少し遅れがちでした。チームとの連携がもう少し円滑だったらと思います。」

上司: 「なるほど。スケジュールの遅れや連携について、具体的にどんな場面で課題を感じましたか?」

ポイント: 上司が具体的な質問で部下の振り返りを促し、内省を深めるサポートをしています。

3. 抽象的概念化を引き出す段階

上司: 「今回の経験から、どんなことを学んだと思いますか?今後に活かせそうなポイントがあれば教えてください。」

部下: 「そうですね、進捗をもっと頻繁に確認したり、早めにメンバーと話し合うことの重要性を感じました。あと、コミュニケーションのタイミングを見極めるのも大事だと思います。」

上司: 「なるほど。進捗管理や連携の方法を、具体的なルールとして考えられそうですね。次のプロジェクトでそれをどう応用できるか、一緒に考えてみましょう。」

ポイント: 上司が学びを明確に言語化する手助けをし、部下が経験から学びを抽出しやすくしています。

4. 積極的実験を支援する段階

上司: 「それでは、今回学んだことを次のプロジェクトで試してみましょう。進捗管理とコミュニケーションを意識して、どんな方法でやってみるか計画を立ててみてください。」

部下: 「はい、定期的なミーティングを設定して、チームメンバーとのコミュニケーションも強化します。進捗もこまめに確認しようと思います!」

上司: 「それでいいと思います。進行中もサポートしますので、何か気づいたらすぐに相談してください。」

ポイント: 上司が新しい行動の計画を具体化させ、サポートを約束することで、部下が安心して積極的に試みる環境を作っています。

このようなコミュニケーションを通じて、上司は部下が実践的に学びを深められるようにサポートし、経験学習のサイクルを促進します。

おわりに

経験学習は、ただの知識やスキルを超えて、部下が自ら成長し続ける力を引き出す方法です。小さな一歩でも、実際に行動してみることで新たな発見が生まれます。さあ、今日から早速、日々の業務に経験学習のサイクルを取り入れて、共に成長を楽しむ環境を作っていきましょう!

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