Intermission(ほんじつはおやすみ)~かぜのとおりみちがみえる~

夕方までの人通りがあらかたの積雪を溶かした鋪道の真夜中は、覚悟はしていたけれどつるつるに凍った小川かーそういえは山の中腹に彫るように通されたその道は、港を間に置いて数キロ向こうの山とで囲挟み込む空気の湖のようなものの岸辺で、まあ、今日は止めどなく大しけだった、と……検証しながらも、いつになく足元の状態に注意を払いつつゆくと、ふと、普段並みに易々と足を運べる区間に差し掛かるーそういえばふわりとなにか軽いーみるとそこは、どういった都合かはわからないけれど、風防か、あるいは防音のためか、数メートルにわたって塀がしつらえられていて、ぶっつけの風を受けにくくなっているー時々、未来都市のように、空中にチューブ状の歩道が渡る街を想像することがあるけれど、そこにはかぜは吹かないな…あぶなくないし便利だし、何より安心して歩けそうだけれど、自分で空気のなかを漕ぐ楽しさはそこにはないかな……などなど、手前かってな夢想は再開した悪路の善き伴だった、なにしろ帰る朝の同じ路面にはつるつるもザクザクもなくてお可笑しいくらいに歩きよい、どんどん進む、そうなればなったで、昨晩の難所の記憶を分けあうのはその伴しかないものーやがて曇天の途切れから投げ掛けられた陽射しが労いのように道ごとわたしも一瞬で温め返すーそれはなんて大技なことか……朝のレモンいろの挿した空をみて風もまた安堵したように一休みを許されている。