EM試作公演②『マリオネット』終演挨拶
こんにちは。
先日生配信でお届けしたEM試作公演第2弾『マリオネット』にて作・演出を務めたそらです。
ご観劇いただいた皆様、応援してくださった皆様に改めて御礼申し上げます。
本当にありがとうございます。
さて、今回の劇を上演するまでにあたってのことは、1ステ始まる直前に怒涛の勢いでまとめたこちらのnoteに書かせていただいたのですが、今一度、試作公演第1弾上演時と比較することで、変化していった私の心情とオンライン演劇界の流れについてまとめられればと思います。
前回公演の『(ある・非・日常)の出来事』を上演したのは4/29。緊急事態宣言が出て皆が先の見えない不安に押しつぶされそうになっていました。もちろん私もそのうちの一人で、特に大学の舞台系サークルに所属する者として、登校禁止となった中でどのように活動、ひいては新歓活動ができるのかに大変頭を悩ませていました。1代抜ければそれはもう団体の存続不可を表す中で、なんとか活動をしてサークルの存在意義を守らねばと言う気持ち。世の中の娯楽という娯楽が自粛される中で、残念ながら元々そこまでメジャーではないかつ、三密の権化すぎていつ再開できるのか全く目処の立っていない演劇界隈を守らねばという気持ち。それだけの勢いで創作したのが前回の公演でした。総製作時間は5日ほど。(学生初のオンライン演劇というのを守るためにも)とにかく早く上演にこぎつけなければとかなり無理をしましたが、なんとか無事打つことができました。その際アンケートでは”面白かった””勇気をもらった”などというありがたいお言葉をいただいて、
ああ、演劇(含めエンタメ)って社会に守ってもらうものじゃなくて社会(の人々)を守るものだった
と再認識したのを思い出します。
その公演後すぐに今回の試作第2弾は動き出しました。あの時の私は、まだ目新しいオンライン演劇に先駆者として参戦できたことを偉く自負していて、なんとかしてまた新しいことをやりたいと息巻いていました。そこで役者同士のテレビ通話を観客が覗き込むスタイルで固まっていた”Zoom演劇”というものからの脱出を目指すことにしました。何度でも言いますが、その際にテクニカル班の2人の存在は特になくてはならないものだったので改めて本当に良い仲間に恵まれたと感謝をしています(本当にすごいのでぜひこちらのnoteたちも読んでください。)
ちなみにその間世間では、日々様々なオンライン演劇が生まれ、Twitterで大いにバズった団体ができたりと、日に日に増える情報を追いきれなくなることに嬉しい悲鳴を上げていたことをよく覚えています。
そして、こちらも先日のnoteに書きましたが、
“Zoom演劇からの脱出”が”演劇からの脱出”にならないように演出効果を考えるのは意外と大変でした。
劇場での演劇で行われる演出方法を思いつく限り上げていって、その演出方法の本質的な部分を洗い出しどのようにオンラインで表現していくかという作業だったような気がします。
結果私の小さい脳味噌で考えついたのは”ノンボイス演技(パントマイム)”と”ストップモーション”で舞台面(配信の画面上)に複数の時空間を同時に生み出すことでした。もっと演劇を劇場で見ておけば良かったとこの時ほど後悔したことはありません。
ところで今オンライン演劇を作っている多くの人はやはり映像畑出身の方だと思います。
上記の私が考えついた演出って、映像の人たちからすればカメラワークの切り替えひとつで行っちゃえるものだと思うんですよね。劇場では舞台の上のもの全てを隠すことができない中でなんとか観客の注目の先を誘導するために役者の動きやスタッフ効果を使った演出を考えるのです。しかし映像なら製作者が簡単に見て欲しいところだけを見せるようにできる。そう考えるとやはり演劇って究極の身体表現ですよね、という感動はおいておいても、私はこの演劇らしい演出を捨てないことで、なんとかオンライン上の表現でも演劇人としてのプライドが保たれるような気がしていました。前回公演の時にも演劇とは何かを考えましたが、演劇らしさの追及は演劇人として永遠に向き合い続けなければいけない課題だと考えています。もしこれに向き合うのをやめてしまえば、社会情勢など関係なく演劇という文化は滅びてしまうのではないかとまで思います。
また今回はミュージカルサークルらしく、ダンスを劇中に取り入れることができました。同期が自作アプリによるパソコンからの照明と遠隔でも時差なくダンスができる環境を生み出し、(実はOBで社会人の)ダンス振付プロフェッショナルな先輩にオンラインだからこそ映える振り付けを考えていただいたことで実現したものでした。第一弾では時差や音の入りの関係でうまく合唱ができないという壁にぶつかり、オンライン演劇でミュージカルは難しいのかなと諦めかけたこともあったのですが、周りの強い人たちが次々と力でその壁を打ち壊しにいってくれてもはや呆然としていました笑
このように様々な人の強い力を結集しつつ、自分なりの演劇らしさを追い求めることも並行し続けた今回の公演が終わりはや二日。流石に大学の授業と並行しての舞台作りはなかなか大変で前回ほどすぐに第三弾!という気は起きていない(というより諸々の課題や卒論がヤバイ)のですが、確かに言えることは一つあります。
私はこれから演劇を上演する際に、その場オンラインであっても劇場であっても、”演劇とは何か”を考え、まだ見ぬ面白い演出方法を考えることをやめません。
そして同期と話していて思っていることとして。
私たちは学生です。学生の本業は(実は演劇ではなく)学問です。
学問的な観点から演劇を考える、上演する
ということができるのも私たちの強みだと思います。(ちなみに私はオンライン演劇を卒論の題材にしようと思っています。)
というわけで、おそらくまた遠くない未来に3作目の演劇の告知をしに来るのではないかと思いますが、とりあえず目の前にある溜まりに溜まった課題を大学生らしく粛々と片付けたいと思います笑
P.S
一度締めておいてなんですが、実は本公演の本番中に起きたことでどうしても感動したことだけお伝えしたいので追記します。楽ステで役者が一人ちょこっとセリフをとちったのですが、そのあとの役者達がこぞってそれをフォローしに行ったことがありました。舞台上でこのようなことが行われることはたまにあって、演劇の”生である故のよさ”というものを感じさせてくれるのですが、まさか遠隔での演技でもスムーズにフォローが行えるだなんて思いませんでした。役者の瞬発力の良さと、遠い距離を物ともしない強い信頼関係にじんわりきました。ああ、私も次回作は役者がやりたい笑